*所属部署、掲載内容は取材当時のものです

BEYOND 01

DX デジタルトランスフォーメーション

今回のテーマは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。DXとは、企業がデータとデジタル技術を活用して、ビジネス全体に大きく変革をもたらすことです。デジタル技術の活用により、新サービスの創造や生産性向上、コスト削減、働き方改革の実現などが可能になります。現代の企業が競争力を維持・強化していくために、不可欠な変革だと言えるでしょう。凸版印刷の強みを活かした、DX推進の在り方とは。戦略立案担当の3名に話を聞きました。

情報コミュニケーション事業本部
デジタル戦略本部 ビジネス戦略部 部長
名和 正道
1983年入社
情報コミュニケーション事業本部
デジタル戦略本部 開発戦略部 部長
柳田 賢祐
1997年入社
生活・産業事業本部
事業戦略本部 事業企画部 部長
渡部 智行
1995年入社

デジタル変革実現のための戦略の立案

社内外でのDX推進に関わる皆さんに集まっていただきました。それぞれの役割について教えてください。

私たちが所属する情報コミュニケーション事業本部では、お客様のデジタル化を支援するサービスを提供しています。その中で事業戦略部門は、企業がデジタルを活用したビジネスをするための戦略立案が仕事です。

DXを推進するために、どんなサービスを提供するか考えるアイデア部分が名和さんの担当、それをシステムとして形にする部分が私の担当ですね。

そうですね。ただ、実際に何をつくるかというアイデア自体は、事業部の中でデジタルビジネスに関わっている約700人の社員から上がってきます。そのアイデアを実現するために、設備や人財などの環境を整えるのが、戦略部隊にいる私たちの仕事です。

私は、お二人とは違う、生活・産業事業本部に所属し、主にパッケージ関連のDXについて事業戦略を考えています。パッケージは、中に食品などを入れて消費者まで届く包装にも使われているので、ICタグやQRコードなどを付けると、製造から消費までの一連の流れの中での動きを追うこともできます。その結果、消費者のニーズを捉えて新サービスを生み出したり、無駄のない在庫管理などが可能になります。工場向けでは、製造工程のデジタル化を促進する「NAVINECT®(※1)」等のソリューションもあります。

渡部さんがやっていることと私達がやっていることは、完全に分断されているわけではないですよね。我々が提供する「ID-NEX(※2)」というシリアルIDによる認証サービスも、パッケージに取り付けて流通させることで機能します。

そうですね。凸版印刷は多岐に渡る事業を手掛けているので、各部署がやっていることを組み合わせると、必要なソリューションを全て揃えられるという強みがあります。その強みを生かすには、社内の連携をより強化していかなければいけませんね。

※1:NAVINECT®
製造工程のデジタル化により、生産性・品質向上、作業効率化を実現するソリューション
https://navinect.jp/

※2:ID-NEX
消費者がスマートフォンでIDを読み取り、正規品か否かを判定できるサービス

ビジネスモデルそのものをDXにより変革

DXを推進することで、どのような未来になると思いますか?

名和:お客様の業界や取扱商品によって変わってくるので、一概にこうなるとは言えないと思います。DXの目的は、企業が未来に生き残るための、新しい価値を創ること。私たちは各企業に合わせてその価値を創ろうとしているので、画一的な答えはないですね。例えば自動車メーカーと飲料メーカーの未来は当然違うわけです。
ただ、変革のステップとしては大きく3つあると言われています。1つ目が個々の業務をデジタル化すること。2つ目が、デジタル化された業務やデータを統合すること。そして3つ目が、デジタル化した企業同士が連携して、世の中が変わることです。

その3つ目のステップに移行するには、一部をデジタル化するだけではなく、ビジネスモデルそのものを変革していく必要がありますよね。例えば、今までのパッケージの製造・供給に加えて、お客様の商品をパッケージに詰める装置も納品する。その装置納入後は、その装置がきちんと動いているかの稼働状況をチェックしたり、部品交換が必要なときに、アラームで知らせる。そうすると、パッケージ単体を提供するという価値だけではなく、お客様の工場の品質向上や作業効率化にも貢献できます。

確かに、今仰ったようなさまざまな変革の形が考えられますね。将来的に、お客様の販促資材管理システムと、凸版印刷の生産管理システムが連携して、資材が減ると自動で発注が来るという仕組みもできるかもしれません。ただ、変革を実行するにはまだまだ壁がありますよね。業務のやり方を見直したり、仕事の減少による雇用問題などにも向き合う必要があり、場合によっては企業の意識そのものも変えていかなければいけません。

変革の1つ目のステップでは、不便なことを解決するような、ネガティブをポジティブにするサービスが多いですよね。だけどこれからは、例えばスポーツ観戦をするときに、VRのゴーグルで情報が見られるなど、楽しいことがもっと楽しくなる世界ができるのではないでしょうか。

確かにそうですよね。それに環境問題など、社会課題の解決にも貢献できると思いますよ。製品や廃棄物などを追跡できる仕組みを実現すれば、使用済み製品の回収・リサイクル率が上がります。ゴミの削減だけでなく、ゴミそのものが出ないような仕組みも提供できるかもしれません。

ほとんどの企業がSDGs(※3)への意識を持っているので、デジタル変革を目指すなら、環境などの持続可能な経営という視点を入れた設計は必須ですね。

※3:SDGs
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年国連サミットで採択された、国際社会の目標。

時代に応じて変化を生む凸版印刷のDNAを、デジタル領域へ

凸版印刷だからこそ実現できることを教えてください。

物づくりをベースにしつつ、システムやマーケティングなど、満遍なく対応できる力があるので、仕組みの構築はもちろん、成果が出るまで運用面でお客様に伴走します。またDXにおいては、お客様も「何をすればいいか分からない」というケースが多いですよね。そんなときでも、設計部分から一緒に知恵を出し、未知のチャレンジを成功に導けるのが強みだと思います。

そうですね。新しい取り組みに不安があるお客様は多いです。しかし、凸版印刷のこれまでの実績を見て、お願いしようと言ってもらえることがありますね。今までの信頼から案件を任され、それをやり切ることによって、また新たな信頼が生まれる。良いサイクルの中で仕事ができているのかなと思います。

それに、凸版印刷のノウハウを活かしたソリューションもありますよ。例えば、パッケージというリアルなモノとデータを組み合わせたサービスです。あらゆる業界のパッケージを扱っていて、製造から消費に至るまでの動きを追うことができるので、幅広いソリューションが提案できるのです。

凸版印刷は、これまでも変化する時代の中で、日本中の企業の課題に寄り添い続けてきました。現在のお客様だけでも数万社以上あり、そこで相談される様々な課題が我々の経験値を高めています。変化に柔軟に対応できる凸版のDNAを、DXソリューションの提供でも活かせればと思います。

今後DXを推進していくにあたり、強化していきたいポイントを教えてください。

一番は人財力ですね。DXには、調査・研究、試作・検証、設計・構築、運用・改善のプロセスがありますが、実行するのはすべて人間。つまり、「人間の質と数=ビジネスの成果」になるのです。従来は、営業、企画、製造といった職種ごとに一定のスキルが求められましたが、デジタルの分野では新たな専門性が必要となり、異なる能力を持つ専門家がチームを組んで課題解決に臨むことが必要です。社内の人財育成と外部採用を強化していかなければいけません。

私も人財が重要だと思っています。理想は、色んなことに興味がある人ですね。興味を持てば、課題に直面したときに自分の引き出しが増えます。新しいサービスを利用するときにも、どういう仕組みで、なぜ生まれたサービスなのか、問題の本質を考えることが大切です。

そうですね。製品単体だけでは差別化が難しい時代なので、お客さまの要求に応えるだけではなく、お客様の期待値の、さらに上を行く提案を求められると思います。それに応えるには、一つの情報を他の情報と繋げて、いかに広げられるかが重要。常に視点を広げて、新しい発想を持つ必要があります。すぐに実現するのは難しいですが、それができる人財を育てていきたいですね。

情熱を持ってやりきる人こそ、輝ける会社

凸版印刷ではどのような人が活躍しているか教えてください。

凸版印刷が力を発揮するには、「リーダー」「参謀」「職人」の3つのタイプがバランスよく必要です。新しい発想で問題解決を牽引するのがリーダー、現状分析して変革を設計するのが参謀、その設計図を形にして世の中にアウトプットするのが職人です。だからこそ、自分の得意分野を知り、何がしたいのか考えている人が活躍していると思います。デジタルの世界では、従来の職種に新たな専門性をプラスした、マルチスキルが求められます。キャリアを積みながら、自分が何者になりたいかという課題感を常に持ってもらえればと思います。

そうですね。周りに自分のことを見てくれる人がたくさんいるので、必ずしも、キャリア形成は自分一人で考えなくてもいいと思います。私自身は、もともとシステム部門でプログラミングをメインにやっていましたが、上司からサーバーやネットワークの仕事をする機会を与えてもらい、スキルを伸ばすことができました。

凸版印刷には社内外で様々な情報が点在しているので、多様性の中から新しいものを生み出せる環境がありますよね。

確かに。例えばデザインを勉強してきた人が、凸版印刷でシステムの仕事を覚えれば、ゆくゆくはアーティストのライブ演出もできるかもしれませんね。自分のやりたいことに対して、情熱を持って取り組める人は、うちの会社で輝けると思います。

もしかしたら学生の方は、凸版印刷という社名と、やっていることのギャップがあるかもしれません。会社のイベントなどに参加して、実際にやっていることを知って欲しいですね。印刷事業から始まった会社ではありますが、デジタル領域にも積極的に取り組んでいますし、どんどん新しいビジネスを生み出そうとしています。

印刷というと、ルネサンス期ヨーロッパの印刷革命が有名です。15世紀にグーテンベルクが印刷技術により世界で初めて聖書を大量生産し、社会に広く流通させることで、大衆に知が広まりました。そんな風に世の中が大きく変わるような変革を、今度は凸版印刷から生み出していきたいですね。