*所属部署、掲載内容は取材当時のものです

BEYOND 03

グローバル

今回のテーマは「グローバル」。国内市場が飽和状態になりつつある中、さらなる市場拡大を目指し、グローバル展開を推進する企業が増えています。凸版印刷も、海外に159拠点(2019年3月末時点)を持ち、これまでに培ったさまざまな事業での強みを活かして、海外市場への進出に力を入れています。凸版印刷が考える、グローバル展開の在り方とは。同分野に携わる4名に話を聞きました。

情報コミュニケーション事業本部
ソーシャルデザイン事業部
プラットフォームビジネスセンター
機器・デバイス開発本部
海外事業開発プロジェクト 課長
大貫 卓也
1998年入社
環境デザイン事業部
海外オペレーション準備室 課長
今道 香織
1996年入社
人事労政本部 人事部
グローバル人事チーム 主任
荒川 慧太
2008年入社
エレクトロニクス事業本部
調光デバイス事業推進本部
販促・営業部 営業2T
小林 佑里子
2013年入社

各分野で海外事業に携わる皆さんにお集まりいただきました。まずはそれぞれの担当業務を教えて下さい。

私はICカードやICタグなどセキュア関連の新規事業開発を担当しています。海外のカードメーカーに対してICカードの中間資材を提供したり、ブランド企業に対してRFID(ICタグと無線通信による自動認識システム)関連のサービスを提供したりしています。

私は建装材を扱う部署にいます。当社は2019年にドイツの建装材印刷メーカーINTERPRINT社を買収したのですが、それに伴う海外生産拠点のオペレーション管理・調整を担当しています。現在は現地工場の生産体制や仕組みの調査を行っています。

私はエレクトロニクス分野の新商材である、調光フィルム「LC MAGIC(※1)」の営業をしていて、主に海外メーカーへの拡販が担当です。アメリカやドイツの現地法人の窓口として、普段は国内にいますが、年に数回現地へ出張して顧客訪問を行っています。

私はグローバル人事チームに所属し、日本人駐在員や海外子会社に対する人事業務全般を担当しています。そのほか、海外企業のM&A時の企業調査や、海外子会社共通の人事制度ガイドライン策定などに取り組んでいます。

※1:LC MAGIC
電気のON/OFFで、透明/不透明を切り替えられる、超薄型液晶調光フィルム

コア技術をベースにしたサービス提供と、地産地消体制の確立

それぞれの立場から、グローバル展開の考え方について教えて下さい。

私が関わっているセキュア事業においては、コア技術の活用や組み合わせがポイントになってきます。当社の持つICカードや半導体製品の設計・製造の技術をベースに、世の中の流れにあわせたサービスを生み出していく。例えば今注力している事業の一つはIoT関連のサービスで、一般消費材にICタグやQRコードなどを付与することでインターネットに繋げていくというもの。特にパッケージ分野では、当社はラベル等の製造も行っていますから、そこと組み合わせていくと、単にモノを作って販売するだけでなく付加価値のあるサービスとしてIoTのプラットフォームを提供することができるわけです。

ワインの真贋判定のサービスもその一つですよね。

そうですね。ワインの偽造や詰め替え防止のためにICタグを活用し、スマホをかざすだけで検知することができるというものです。実際にフランスの高級ワインに採用されています。ワインに限らず、ブランド商品を扱う様々な海外企業にとって偽造防止は一つの課題であり、今後は化粧品などにも展開していきたいと考えています。従来の印刷技術やセキュア技術など、我々の持っているコア技術を組み合わせることで新しい価値を提供していく、という考え方はグローバル展開においても重要ですね。
一方でICカード分野の場合は、製造コストの問題や秘匿性の高い情報を扱うため最終製品(カード)を日本から輸出販売するのが難しいという現状があります。そのため我々は、海外市場向けには、カード製造に必要なキーデバイスの供給事業に注力しています。この事業では、凸版印刷は製品のカード内に搭載される肝となるデバイスの設計を自社で行い、実際のデバイスに使用される部材の製造や最終製品の加工は、全て海外の製造パートナーに委託しています。凸版印刷が持つ海外ネットワークの中から最適なパートナーを選定し、最適なサプライチェーンを構築し、そこで創り上げた製品を海外カードメーカーに販売しています。

グローバルな繋がりを活かしつつ、コアの設計を自社で行うことができるのがトッパンの強みですね。小林さん、エレクトロニクス分野ではどうでしょうか。

はい。従来の日本の製造業では、まずは国内でのマーケットを確立してから次に世界へ、という流れが多かったですが、私が販売を担当している調光フィルム「LC MAGIC」は、開発当初から世界を意識しており、海外の主要顧客にも一斉にアプローチをかけています。それくらい技術的に優位性のある商品であると捉えています。
例えば新しい技術を積極的に取り入れたい最終製品メーカーに対して我々の技術力を直接アプローチし「お墨付き」を得ながら、実際に我々が製品を納める部品メーカーと製品化に向けて具体的な商談を重ねていく。そのような営業活動を行っています。

今道さん、建装材分野はどうでしょうか。最近のトピックの一つとしては、先ほど話されていたINTERPRINT社の買収があると思いますが。

そうですね、当社は2017年にもスペインのDECOTEC PRINTING社を買収しており、近年ヨーロッパにおけるマーケット拡充に積極的です。インテリアをはじめ、建装材分野においてヨーロッパのデザインというのは世界的に注目されており、市場も大きいです。その中で当社の製品は、技術面やデザイン面で海外のお客様から高い評価を受けてはいたものの、輸出する上でどうしても「距離」の問題がありました。これまでヨーロッパに拠点がなかったため、大きな機会損失があったわけです。一連の買収により「地産地消」を進めることで、より広い地域に商品を届けられる。ヨーロッパはもちろん、そこからアフリカへのルートを開拓するなど、距離的なメリットを得て競争力を持つことができたのは大きいです。

建装材の分野もマーケット自体はすでに海外に存在していると思いますので、新たな拠点で日本ならではのデザインとかコアな技術といった強みを発揮し、シェアを拡大していこうというアプローチでしょうか。

そうですね。さらには互いの技術やノウハウを結合させることで、1+1が2以上のものになっていく可能性を秘めています。互いのよいところを吸収することでシナジー効果が生まれてより魅力的なビジネスを展開できると期待しています。実際、INTERPRINT社側も、同じ業態、同じマインドを持った事業会社と一緒になったことはポジティブに捉えてくれていると感じています。買収がゴールではないですし、一緒になってからどのように互いの事業計画をすりあわせていくかが重要ですね。

市場の広がりはどうですか?ここからさらに成長する余地はあるのでしょうか?

はい、発展途上国の文化水準が上がるにつれて、それまでインテリアにこだわりを持っていなかった人たちがそこにお金をかけるようになってきています。海外市場自体もこれからどんどん成長していく可能性があると考えています。だからこそ、「地産地消」体制の確立というのが喫緊の課題になると思います。

私が関わっているLC MAGICの場合、新商材であるためまだ「地産」までは至りませんが、現地法人の営業社員を通じて現地顧客とやりとりをする中で、ニーズは確かにあると感じています。調光フィルムは、オフィスや商業施設、乗り物などはもちろん、スマートハウスの内装・外装など、日常生活の中でも様々な活用シーンを想定しています。文化水準が上がり、よりよい生活をしたいという人たちが世界中で増えていくところに、我々の商品が価値を提供できるチャンスがあると考えています。

マネジメントのローカライズ

組織や人事という視点からはいかがでしょうか?

最近、「終身雇用の終焉」とか「ジョブ型雇用への切り替え」などよく話題になりますが、日本の人事制度というのは世界からすると決してスタンダードではない。我々グローバル人事チームとしては、海外子会社の立ち上げやM&Aの際には、グローバルスタンダードを踏まえて人事制度や組織を作っていくことを意識しています。また、その管理・運用についても、日本人駐在員が中心となるのではなく、あくまで現地の社員に任せていく。まさに、「人の地産地消」、「マネジメントの現地化」が大切です。
わかりやすい事例として、ある海外子会社において、自社理念を現地の社員たちに策定してもらうという取り組みがありました。もともと凸版印刷の企業理念は各社に配信されているのですが、これを基にした自分たちの「ビジョン・ミッション・バリュー」を構築してもらい、より組織としての結束を強化するというプロジェクトです。本社も支援しましたが、あくまで主体は現地社員です。自分たちで作り上げた理念を自分たちの言葉で社内に浸透させるために、トレーナーを任命して教育活動に取り組むなど、良い形になってきました。このように単純に日本本社の考え方を押し付けるのではなく、自律的に考えてもらう、ということが大事ですね。

たしかに、日本から何かをやってもらう、押し付けるという姿勢ではなく、互いに良い面を学び合うという関係性が大事ですね。生産現場でも同じことが言えます。

会社がグローバル化する過程を、肌で感じられる

「海外に関わりたい」という学生に何かメッセージはありますか。

すべての事業部においてグローバル化が急速に進められています。そういう意味で、海外に触れるチャンスというのはますます増えていくでしょうね。

そうですね。会社としてもグローバル人財の育成には力を入れており、若年層からマネジメント層まで、各階層に非常に豊富なメニューが用意されています。通信教育や選抜型研修はもちろん、入社3年目くらいからは「トレーニー制度」といって、1年間海外子会社で業務を担当しながら経験を積むという仕組みもあります。小林さんはまさにこれを経験したんですよね。

はい。入社まで英語が堪能だったわけではないのですが、実は就職活動の段階からトレーニー制度の存在は知っていて、入社した後も配属された部署に経験者がたくさんいたこともあり、ずっと興味を持っていました。若いうちに絶対に経験しておきたいという思いがあり、入社4年目のときに手を挙げて、1年間ドイツで研修を行いました。現地社員や駐在員に帯同してお客様との商談に同席するなどリアルな体験をさせていただきました。実際に現地に行ってみると日本から発信されていることがどのように捉えられているか肌で感じることできましたし、単純に海外の人と多く会話をする機会があって、かなり度胸もついたと思います。

私も学生時代に留学などの経験は特にありませんでしたが、凸版印刷に入社したことで世界中の人と接する機会に恵まれ、幸運だったなと感じています。キャリアを考える上で、別にグローバルであることが優先事項でなくとも、技術やサービスを国内に縛られず世界に発信していきたいと考える人にとっては魅力的な会社なのではないかと思います。

「今まさにグローバル化を進めている」という点は、これから入社する方にとってはチャンスだと思うんです。凸版印刷は、まだ伸びしろがある状態。これから入社する方は、会社がグローバル化していくのを肌で感じ、そんな会社を一緒に作っていくことができると思います。成長期の企業ならではのチャレンジや苦労も経験できるのではないでしょうか。