トッパンらしい真摯なアプローチによる
グローバルな社会的課題への挑戦、企業成長に期待

社外取締役中林美恵子

中林美恵子

SDGs と経営信条、マテリアリティが調和するトッパンの強さ・存在意義

トッパンらしい側面といえば、やはりTOPPAN VISION 21が出発点となっていることでしょう。特に経営信条に含まれる「地球環境との調和」は、全社活動マテリアリティの「環境配慮・持続可能な生産」や事業活動マテリアリティの「サステナブルな地球環境」につながります。さらにSDGsの達成分野である「環境」とも重なっています。こうした調和に、トッパンの強さや存在意義があると思います。長期的でグローバルな社会的課題への挑戦は、経営信条に掲げる「グループの永続的な発展」を実現するためにも必須です。
また、全社活動マテリアリティの「従業員の健康・働きがい」にもトッパンらしい独自性が感じられます。例えば、2018年度に59.5%だった男性社員育児休業取得率を2030 年には80%に上げるという目標を堂々と掲げている点もトッパンならではと思いました。
さらなるオリジナリティを追求するのであれば、SDGsの「人権」をマテリアリティに昇格させるなどがあり得ると思います。ただし、それを具体化しようすると、中国やほかのアジア諸国から内政干渉という反発を受ける可能性があるため、多くの企業は及び腰になっています。堂々と掲げ実行に移せる企業は多くないので、独自性という意味では際立つことになるでしょう。問題は、それがグループの永続的な発展にどのように資するかという戦略性が必要になる点です。よく議論し練られたものでなければ、本当の意味で実行できるものにはならないと思います。

グローバルな視点が不可欠な「働きがい」と「経済成長」

SDGsの「8. 働きがいも経済成長も」に、臆することなく力を入れて取り組まれることに期待します。働きがいと経済成長については、日本国内に限らず、人権やそれに基づくサプライチェーンの見直しなどグローバルな視点を忘れないでほしいと思います。日本もコロナ禍を経験し、多くの社会的な矛盾点があぶり出され問題意識もかなり育ちました。一方、世界を見渡せば、民主主義国家でもデジタルデバイド(情報格差)や雇用形態の格差、男女格差など、いろいろな問題が噴出しています。これらが深刻化すれば、非民主主義国家の増加や台頭を許してしまうことになりかねません。2021年開催のG7サミットにおいて、主要テーマが「民主主義国家の結束」であったことも必然でしょう。こうしたグローバルな課題にトッパンが挑戦し、働きがいや経済成長を通して民主主義ひいては人々の幸福や自律の可能性を追求してくれたら素晴らしいと思います。

重要性の高まる「環境」「人権」分野で、さらなる取り組み強化を

トッパンのマテリアリティにおいて、今後重要度が増すのはSDGsが示す環境や人権の視点でしょう。
環境については、地球温暖化つまり脱炭素の問題が重要度を増し、さらなる対応と戦略が求められていくと思います。また、国際経済連携協定などの国際的な枠組みやルールも、経営戦略に組み入れていく必要がありそうです。
人権については、多くの日本人、日本企業が力を注いでこなかった部分ではないでしょうか。先に述べた通り勇気をもって人権問題に踏み込むことは、長期的およびグローバルな視点という意味で理に適っています。しかしスウェーデンの調査機関V-Dem研究所によると、地球人口の3分の2が非民主主義国家に住んでいますから、ビジネスとしては短期的にリスクになるかもしれません。慎重かつ深い議論が事前に必要となるでしょう。

変動する社会へ、トッパンらしい真摯なアプローチで貢献することに期待

米国でバイデン政権が誕生してから環境問題は大きくクローズアップされ、新たなフェーズへ移る様子が見られます。ただ欧米では「環境」という大義名分の下、今後の経済成長をいかに有利に進めるかという足の引っ張り合い、競争という影の部分も共存しています。また、高度な環境技術は安全保障にもつながり得ますので、軍事的に脅威となる国や地域に手渡さないという視点も必要になってくると考えられます。
このような世界政治において、トッパンらしい真摯な社会・環境への貢献は非常に重要です。トッパンを支える従業員も大事な役割を担っています。だからこそ、トッパンは企業として成長し続けなければなりません。基軸を見失えば、デリケートなバランスが崩れることにもなります。企業としての危機感を忘れずに、そしてトッパンが成長することによって環境問題や社会への貢献が増す、そのような企業であり続けるべきだと思います。