トッパンは、気候変動がトッパングループの事業に与える影響の大きさを認識し、重要な経営課題の一つとしています。
金融安定理事会が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対し、2019年に賛同を表明。2020年から提言に基づいたシナリオ分析を開始しました。

気候変動に対する基本的な考え方

トッパンは、1992年に環境保全活動の基本理念として「凸版印刷地球環境宣言」を定め、2009年4月にはこの宣言をグループ全体の活動の基本理念「トッパングループ地球環境宣言」へと改め、より積極的に環境保全に配慮した企業活動を進めてきました。
また、2019年11月に策定した「TOPPAN SDGs STATEMENT」において、SDGsの経営への統合を宣言。その中で、凸版印刷がSDGsの取り組みを通じて実現したい社会を「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」とし、事業基盤を支える「全社活動マテリアリティ」と、事業を通じて取り組むべき「事業活動マテリアリティ」それぞれで気候変動を含めた環境課題を選定。自社の事業活動とビジネスの両面から、気候変動課題への取り組みを進めています。

TCFDへの対応

TCFDは、G20の要請を受けた金融安定理事会により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、2015年に設立されました。TCFDが2017 年6月に公表した最終報告書では、企業などに対し、気候変動関連リスクおよび機会に関して、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目での情報開示を推奨しており、特に組織戦略のレジリエンス(強靭さ)をわかりやすく示すことを求めています。
トッパンは2019年に賛同を表明し、2020年から提言に基づいたシナリオ分析を実施し、情報開示を開始しました。今後は、開示した情報を基にしたステークホルダーの皆さまからのフィードバックを気候変動に関わる経営戦略の強化につなげるサイクルを、継続的に実行していきます。

気候変動に対するガバナンス体制

トッパンは、2021年度を初年度とする中期経営計画において、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトにし行う中長期の重点施策の一つとして「ESGへの取り組み深化」を設定し、気候変動を含むESG課題に関するガバナンスを強化しています。
取締役会はサステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長、以下 委員会)に気候関連課題を担当させています。委員会は、その下部組織に複数のワーキンググループ(以下 WG)を設置し、気候関連課題の評価と対応策のとりまとめを行います。取締役会は、経営会議を通じて委員会より、気候関連課題の評価や状況、目標管理についての報告を受けるとともに、気候関連の課題を考慮し、経営戦略の策定などについて総合的な意思決定を行っています。

また特に経営に与える影響が大きいと考えられるリスクを「重大リスク」とし、リスクマネジメントWG(事務局:法務・知的財産本部コンプライアンス部)にて特定しています。気候変動についても重大リスクに定め、全社リスクマネジメント活動と連動し、本社主管部門を中心に対応計画を策定し、徹底した管理を実施しています。その対応状況についてもとりまとめを行い、取締役会で報告し、取締役の監督が適切に行われるよう体制整備を行っています。

気候変動を含むESG課題への取り組みを推進する「サステナビリティ推進体制」

シナリオ分析

トッパンは、シナリオ分析実施に際してサステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長、以下委員会)の下部にTCFDワーキンググループ(以下 本WG)を設置。本WGに本社関連部門が参画し、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、主に財務面のインパクト評価を行いました。

今回の初めてのシナリオ分析として、トッパンの主要事業地域である日本国内を中心に、研究開発・調達・生産・製品供給までのバリューチェーン全体を、2つのシナリオ(今世紀末の地球の平均気温が産業革命前と比較して2℃上昇以内に抑えられるシナリオ→ 2℃シナリオ※一部1.5℃シナリオも併用、4℃前後上昇するシナリオ→4℃シナリオ)で、2050年までの長期想定で考察しました。
2℃ /1.5℃シナリオでは、炭素税導入や購入エネルギー価格上昇に伴うコスト増のリスクがある一方、消費者選好の変化による低炭素排出製品・サービスの売り上げ増や企業価値向上の機会があることを再確認しています。
4℃シナリオでは、気温上昇による風水害増加が、トッパンの事業を支える主要工場の操業停止や化学物質流出による汚染などのリスクにつながる可能性がありますが、トッパンはBCP 策定などの対応策を進めています。

これらの分析・対応策検討および実施は、本WGより報告を受けたサステナビリティ推進委員会の議論を踏まえて行われたものです。今後も継続的にシナリオ分析を実施することでその精度を高め、経営戦略への統合をさらに推し進め、不確実な将来に向けたレジリエンス(強靭さ)を高めていきます。

気候変動に関わるリスク・機会評価と対応策
2℃(一部1.5℃)シナリオ
規制・新たな税負担などが強化される一方、人々の環境志向の高まりから生まれるニーズが新たなビジネスチャンスを生み出す
想定される状況 項目 インパクト 対応策
移行
リスク
  • 低炭素社会移行へ向けた
    政策展開の強化による
    化石燃料への炭素税導入、
    国境炭素税の導入、補助金の廃止
  • 化石燃料使用由来エネルギー使用に伴うCO2排出への炭素税の
    課税による製造コスト増加


Scope1+2における
財務インパクトを2030年度
約47億円/年と想定※1
  • 2030年度までに省エネ施策の推進とともに、再生可能エネルギー由来電力の比率を6.5%とする
    (本対応策によるScope1+2の財務インパクト軽減効果は2030年度で約2億円/年を想定 ※1)
    ▶ トッパングループ2030年度中長期環境目標
  • 2050年度までに再生可能エネルギー由来電力の比率を100%とし、他施策とともにScope1+2のCO2排出を実質ゼロとする
    ▶ トッパングループ環境ビジョン2050
  • 長期的視点の制度、再エネ技術のモニタリング
  • 製造に伴い発生する廃棄物(プラスチック)のサーマル
    リサイクルに対する炭素税の課税による製造コストの増加
  • 2030年度までに製造工程で生じる廃プラスチックのマテリアルリサイクル比率を65%とする
    ▶ トッパングループ2030年度中長期環境目標
  • 長期的視点の制度、リサイクル市場のモニタリング
  • サプライヤーの低炭素社会適応コスト価格転嫁による
    調達費用の増加
  • サプライヤーの調査/新規開拓、代替品の調査/検討
  • 長期的視点の制度、市場のモニタリング
  • 再エネ割合の増加による調整力増加等により
    電力価格が上昇
  • 購入エネルギーの価格上昇に
    伴う製造コスト増加
  • 省エネ施策の推進とともに、自家消費用の再生可能エネルギー導入を拡大
想定される状況 項目 インパクト 機会獲得
移行
機会
  • 人々の環境志向の高まりからくる
    環境配慮製品へのニーズ増、
    所有からシェアへの消費者意識変化
  • 低炭素排出の製品、サービスの提供による販売機会の拡大
  • トッパンのDXサービス「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」提供によるお客さま企業のデジタル変革、移動/作業負荷/時間の削減によるCO2排出の削減
  • リデュース/リユース/リサイクル可能なサステナブルパッケージの提供によるCO2排出の削減
  • 温室効果ガス削減に貢献することを強みとする環境に配慮した素材や仕組みの提供、省エネルギー・創エネルギーなどのソリューションの提供によるCO2排出の削減
  • 気候変動に対する取り組みの推進と情報開示
中~大
  • 「Digital & Sustainable Transformation」企業としての認知獲得
  • ESG評価による企業価値の向上
  • 印刷プロセスの環境プロセスイノベーション技術構築による利益拡大
小~中
  • 印刷事業における脱溶剤(VOC)技術開発によるコスト削減とライセンス供与

※1:炭素価格を10,500円/tと仮定した場合の影響額

4℃シナリオ
規制の影響は小さい一方、自然災害のリスクが高まる可能性がある
想定される状況 項目 インパクト 対応策
物理的リスク
  • 気温上昇により風水害の頻度増加および激甚化が進む
  • 洪水被害などによる工場の生産停止
  • 洪水に対するBCPの策定による生産停止リスクの低減やサプライチェーンの多重化、被害最小化のための施設、設備の事前措置、汚染可能性のある化学物質の代替
  • 豪雨、洪水などによる化学物質の流出汚染
  • 化学物質の流出可能性の検討と流出防止策の計画、実施
  • 被害対応のための損害保険対応
  • リスク想定のモニタリング実施
想定される状況 項目 インパクト 機会獲得
物理的
機会
  • 風水害の頻度増加、激甚化によるBCPニーズ
  • ICT技術を活用したBCP支援ビジネス
  • デジタル技術と高度なオペレーションノウハウの掛け合わせによるBCPに対応する業務DX化の支援

指標と目標

全社活動マテリアリティ(環境配慮・持続可能な生産)

気候変動を含む地球環境課題への長期的な取り組み方針を定めた「トッパングループ環境ビジョン2050」を策定。さらに、本ビジョンからバックキャストで検討した結果、SDGs達成目標年度に向けた「トッパングループ2030年度中長期環境目標」を設定しています。

  • トッパングループ環境ビジョン2050

    トッパングループは、国際社会の一員として、未来を見据えた地球環境の保全に配慮した企業活動を通じ、「脱炭素社会」「資源循環型社会」および「水の最適利用」に貢献し、「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」の実現を目指していきます。

    ① 脱炭素社会への貢献
    Scope1+2温室効果ガス排出の実質ゼロを目指します。
    ② 資源循環型社会への貢献
    廃棄物のゼロエミッションを目指します。
    ③ 水の最適利用
    水使用量の削減と、水質汚染防止による水質改善に貢献します。

  • トッパングループ2030年度中長期環境目標

    ① 脱炭素社会への貢献
    温室効果ガス排出 Scope1+2: 2017年度(1,373千t)比 32.5%削減(446千t減 再エネ比率6.5%) 
    温室効果ガス排出 Scope3: 2017年度(6,122千t)比 20%削減(1,224千t減)
    ② 資源循環型社会への貢献
    廃棄物最終埋立量: 2017年度(7,407t)比 60%削減(4,444t減)
    廃プラスチックのマテリアルリサイクル率: 2017年度(53%)比 12%増(65%)
    ③ 水の最適利用
    水使用量の削減、原単位の改善 および水質汚染リスクの回避
    (定量目標は今後設定予定)

事業活動マテリアリティ(サステナブルな地球環境)

2020年に策定した「TOPPAN Business Action for SDGs」により「サーキュラーエコノミーの実現」「脱炭素社会の実現」「エコプロダクツ・ソリューションの拡大」の3注力分野を特定し、気候変動課題に対してビジネスで貢献にチャレンジしています。