TOPPAN DXセミナー2020
日時:2月20日(木)14:00~17:00
場所:トッパン小石川ビル 2F

ものづくりの現場では少子高齢化による人手不足や技術伝承問題が深刻化し、デジタルを活用したスマートファクトリーへの転換期を迎えています。スマートファクトリーへの第一歩は「情報の見える化」です。あらゆる情報を取得し見える化することで、現状を整理・分析し、さらに品質管理等へデータを活用できるようになります。ICタグなどのIoT機器を駆使して、ものづくりの新時代へと向かうトッパンの取り組みとその経験をベースに提供しているソリューションについてご紹介します。
PROGRAM 2
製造現場の働き方を改革する!
〜「NAVINECT」活用による生産性向上と最適化の提案〜
PROGRAM 3
わかる!つながる! IoTで製造・物流をもっとスマートに!
〜自動認識技術を活用してモノ・ヒト・環境の可視化を〜
PROGRAM 1:5Gで変わる未来!〜変わる5G時代の“コミュニケーション”〜
5G時代はスタートしたばかり
ビジネスのさまざまな場面で注目のキーワードとなっている「5G」。この新しい通信システムは、現在の約20倍の通信スピードを実現する高速大容量、リアルタイムな制御なども可能にする低遅延、膨大な数のデバイスを同時にネットワークへつなげられる多接続、といった特長を持っています。この5Gが普及することで、遠隔医療や車の自動運転、スマートファクトリーなど数多くのことが実現に近づき、現状の社会や企業が抱えるさまざまな課題を解決できるものと大いに期待されています。
これまでは言葉がもたらす期待感だけが先行していましたが、東京都が5Gインフラを活用して都市レベルでDXを目指す「TOKYO Data Highway基本戦略」を打ち出し、昨年11月から実証実験を開始するなど、5G時代の具現化に向けた取り組みが少しずつ動き出しています。
時間と空間の制約を超えていく時代に
一方、通信キャリアをはじめ多くの企業では5Gに対応する技術開発や実証実験などを積極的に行っています。もちろんトッパンもこうした取り組みを早くから進めてきました。
トッパンでは、5Gの普及で生まれる未来が、「ビジュアルコミュニケーション」により時間と空間を超えられる時代になるだろうと考えています。今後、映像は4K、8Kといった高解像度化が進み、表示媒体の進化によって実物を目の前で見ているような映像表現が可能になり、ヘッドマウントディスプレイのような没入感の高いデバイスも増えていきます。こうした変化と5Gが融合することで、テレポーテーションとも言える、距離や時間の制約を超えたリアルなビジュアル体験(IoA仮想テレポーテーション)ができるようになるでしょう。
そうした体験がどのようなものになるかを実感いただけるよう、トッパンは2年前、12Kの映像を扱えるショールーム「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI*」をオープンさせました。また、昨年12月には5G時代のビジネスを構想し、検証し、議論できる拠点としてラボも開設しています。同時に、海外の高級不動産の室内を実際に訪問しているかのように見て回れるリモート内覧会など、新たなビジネスの可能性を探る実証実験をさまざまな企業様と組んで実施しています。さらに、従来のeラーニングや教室での授業に比べ教育効果が高いといわれるVRやAR、MRなどのXR技術をベースに、MRグラスなど最新デバイスも駆使しながら、効率的に社員研修や技術者教育を行うための仕組みを開発するというお客さまの挑戦をサポートしています。
トッパンの強みを活かし お客さまをサポート
5Gに対する期待の盛り上がりは現在がピークであり、今後は落ち着いていくことになると言われていますが、今からが5G時代を見据えた本当の準備の始まりです。
トッパンでは5G時代の創成期から、お客さまと一緒になって新しい技術の開発やソリューションの提案に取り組む所存です。幸いなことに、これまでトッパンはお客様と常に密な連携を取りながらビジネスを展開してきており、お客さまの業務フローや課題も深く理解しています。その上で、トッパンの強みである編集力や可視化ノウハウを生かし、お客さまの新しいビジネスを強力にサポートしていきたいと考えています。
*NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI:歴史的文化財や自然遺産をはじめ、伝統芸能、四季、食などのさまざまな日本の魅力ある文化コンテンツのデジタルアーカイブを推進し、情報発信と価値創造を共創するための拠点。
内藤 一弘(ないとう かずひろ)
情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルデザイン事業部
ソーシャルイノベーションセンター 先端表現技術開発本部
ビジュアルコミュニケーション開発部 部長
PROGRAM 2:製造現場の働き方を改革する!
〜「NAVINECT」活用による生産性向上と最適化の提案〜
自らの工場変革体験に基づいたソリューション
トッパンは、製造現場のDXを支援するソリューション「NAVINECT(ナビネクト)」を提供しています。このプログラムではNAVINECTの概要や特徴などをご紹介します。NAVINECTをお客さまにご案内する際、「なぜトッパンが製造現場向けDXソリューションに取り組んでいるのか」といったご質問を受けることがあります。背景からお話しますと、トッパンでは、印刷テクノロジーを基盤として、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスという3分野で事業を展開しています。そのため、製造するのは商業印刷物、カード、ディスプレイ、半導体、包装材や建装材など多種多様で、3分野それぞれで自社工場が稼働しています。2000年頃から製造現場のデジタル化に着手し、自らの手で各工場の変革に長年取り組んできたことにより、製造DXのさまざまな経験やノウハウが蓄積できました。NAVINECTは、実際に各工場で機能し、確実な成果を出している取り組みをお客さまに向けたソリューションとして提供したものです。NAVINECTの活用により、お客さまは生産性向上だけでなく、製造現場のIoT化によって収集したデータをお客さまとトッパンが連携して分析することで、工場の条件最適化や仕掛最適化、納期最適化、トレーサビリティやリモート保全の実現などにつなげることが可能となります。
製造物や業界を超えて多種多様な製造DXを支援
もう少し具体的にご説明していきましょう。NAVINECTは、「システム提供」「データセキュリティ」「運用・活用コーディネート」の3つで構成されます。1つ目の「システム提供」は、いわゆるアプリケーションの提供です。3分野多数の自社工場にて製造を支えるアプリケーションを社内で開発しており、その数はペーパーレス、自動化、見える化など10カテゴリー、130種類に上ります。商材や製造パターンによってアプリの構成も変わるため、アプリ間の相性も見て、時には開発も組み合わせて、お客さまに最適なシステムを提供できます。2つ目の「データセキュリティ」に関しては、個人情報管理など高セキュリティ要件にも耐えるデータセンターの提供サービスを中核に、セキュアな環境下でのハードウェア構築からソフトウェア開発・運用までトータルに対応しています。3つ目の「運用・活用コーディネート」はNAVINECTの目玉となるソリューションです。トッパンの工場では、紙やプラスチック、金属など多様な製造資材、クリーンルームや高セキュリティエリアといった場内設備、ジョブショップ方式などの生産方式などを組み合わせてモノづくりをしています。多種多様なパターンの工場で製造デジタル化の経験を持つため、ITにマッチした工程フロー・品質フロー、現場の実体を理解した運用フローや作業者レベルに合わせたIT教育計画の策定や、これらの実施段階まで支援できるという強みがあります。
在庫管理やトレーサビリティ、品質保証などを目的にしたNAVINECT活用の実績をご紹介すると、例えば、在庫管理では棚卸し作業の負荷が、作業時間で75%削減できたケース、トレーサビリティに関しては異常製品波及範囲の特定を容易化し過剰検品を10%削減できたケースなど、確実な成果につなげているお客さまがいらっしゃいます。このほかにも多くのIoT化、デジタル化の実績がありますので、お気軽にお問い合わせください。
江縁 和史(えぶち かずふみ)
デジタルイノベーション本部 テクニカルセンター
インテグレーション部 課長
<トークセッション>
NAVINECTのプレゼンテーションに続いて、トッパンの工場での事例を紹介し、自動化(設備連動など)や省人化(管理負荷軽減、適正人員配置など)、見える化(RFIDシステム、ピボット分析など)の「工場内業務効率の最大化」と「生産ロスの最小化」を実現できるNAVINECT導入メリットについて4人の担当者が意見を交わしました。
(右から)
デジタルイノベーション本部 事業サポートセンター 情報系サポート部 部長 姉崎 秀一(あねざき しゅういち)
情報系製造事業部 技術開発本部 証券技術部 課長 田中 重明(たなか しげあき)
情報系製造事業部 技術開発本部 生産技術部 課長 江上 和樹(えがみ かずき)
デジタルイノベーション本部 テクニカルセンター インテグレーション部 課長 江縁 和史(えぶち かずふみ)
PROGRAM 3:わかる!つながる! IoTで製造・物流をもっとスマートに!
〜自動認識技術を活用してモノ・ヒト・環境の可視化を〜
無線+自動認識技術で製造・物流DXを加速
トッパンでは長年培ってきた製造・物流管理ノウハウと、ワイヤレスによる自動認識技術を活用し、ヒトやモノの動きをリアルタイムで可視化、把握することでお客さまの製造・物流現場のイノベーションをサポートしています。また、製造・物流現場の可視化を推進するため、多様な自動認識技術のシステム化とその活用したソリューションを提供しています。例えば、バーコードなどは代表的な自動認識技術といえますが、IoTと親和性の高いワイヤレス通信の分野でもトッパンは多くの提供実績を持っています。そこでこのプログラムでは、RFID(Radio Frequency Identification)とBLE(Bluetooth Low Energy)という2つの技術にフォーカスし、トッパンがお手伝いした具体的な導入事例とその成果などをご紹介します。
モノの動きを可視化する「RFID」
RFIDとは、固有のID情報を書き込んだICタグと専用のリーダー/ライター間で情報のやり取りを行う無線システムで、身近な例としては、交通系のICカードがあります。このRFIDを製造・物流現場に導入した場合、個別の資材ごとにICタグを付け、ハンディ型リーダーをかざす、もしくは読取ゲートを通過した際、固有のID情報を無線で読み取り、上位の管理システムへ伝送するという仕組みで運用されます。
RFIDには、(1)非接触型で読取距離が長い、(2)複数一括読取が可能、(3)高い耐環境性などの特長があります。製造・物流現場においては、「円滑なトレーサビリティの確保(品質保証、リコール対策、並行輸入対策など)」、「在庫管理の効率化(棚卸作業の削減、誤出荷防止など)」、「在庫管理の最適化(実棚把握、誤作業防止、回転率把握など)」、「安全性の確保(模造品対策、なりすまし防止など)」—といった導入効果が期待されます。また、無線を利用しているため、ICタグが見えていなくても認識が可能で、従来のバーコード方式と比較して、スムーズで確実な管理を実現できます。
すでにトッパンでは、このRFIDを飲料メーカーの「原材料計量・調合管理システム」、フィルムメーカーの「原材料管理システム」などへ導入したことをはじめ、各種の実証実験への参画など、豊富な実績を持ち、お客さまの活用シーンに応じた最適な運用プランのご提案が可能です。また、トッパンでは、ICタグを活用し、循環資材管理、真贋判定、製品物流管理を統合したID認証プラットフォーム「ID-NEX」をクラウドサービスとして提供していますので、あわせてご検討ください。
現場の労務管理や健康・安全管理への活用も
BLEとは、Bluetoothを活用した超低消費電力の無線規格です。トッパンでは、BLEによる位置情報とカメラ映像を連動させたクラウド型のIoT可視化サービス「ID-Watchy」を提供しています。「ID-Watchy」は、可視化対象となるヒトやモノにBLEカード(発信機)を装着し、BLEセンサ(受信機)を介して可視化対象の位置情報を取得すると同時に、NVR(Network Video Recorder)カメラを使って現場映像を取得・記録することで、位置情報と映像のデュアル監視を実現します。元来、建設現場の可視化用途に開発されたシステムですが、製造・物流現場での導入も進んでいます。監視画面にはリアルタイムな現場映像と、その場に存在する作業員や資材の固有IDが表示され、さらに指定したカメラの過去のアーカイブ映像とヒト・モノのIDの確認も可能なため、遠隔地からの動画による現場の進捗管理はもちろん、紛失物や作業ミスの発見、不正侵入者の監視などに対応します。実際の導入事例としては、住宅建材メーカーの物流現場でのトラックの動態状況(駐車時間、出荷時間など)やドライバーの労務管理、食品メーカーでの作業員の労務管理やライン単位の作業原価管理などとして活用されています。また、ウエアラブルタイプのBLE発信機にも対応しているため、作業員個々のバイタルデータの取得も可能です。その行動・データ変容からストレス値を可視化させることで、無人化が進む工場での現場作業員の健康・安全管理にも貢献できます。以上のように、トッパンではIoTによるヒトとモノの可視化により、製造・物流現場での資材調達から、製造、保管、出荷に至るまで、シームレスな管理の実現をお手伝いできます。NAVINECT、ZETAとも融合して装置の状態や現場環境なども含めた工場や倉庫全体の最適化実現を支援致します。
中川 仁克(なかがわ ひとよし)
情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルデザイン事業部
プラットフォームビジネスセンター セキュアサービス企画本部
IoTビジネス推進部 RFID販促チーム 課長
PROGRAM 4:LPWA規格「ZETA」でIoTビジネスを掘り起こす
二極化するワイヤレス通信
近年、次世代の移動通信技術として5Gが注目を集めています。5Gは高速大容量、低遅延、同時多接続を特長とする一方で、センサーや機器制御など低ビットレートのデータを扱うIoT分野では、5Gのようなハイスペック通信と対極にあるLPWA(Low Power Wide Area)の普及が加速しています。トッパンでは、低消費電力、広域カバレッジ、低コスト化に対応するLPWAの通信規格の1つである920MHz帯の「ZETA」に着目し、ZETAアライアンス*に参画。共創パートナーとともにZETAの普及とビジネスの拡大に取り組んでいます。このプログラムでは、LPWAに関する市場・技術動向と、ZETAに対するトッパンの取り組みや活用事例についてご紹介します。
LPWAにおけるZETAの優位性
LPWAは、センサーネットワークによる物流・資産管理、スマートメーター、インフラ監視、スマート農業、防災・獣害対策といった分野での活用が期待されています。その主な方式は2つあり、1つはアクセスポイントを介して複数のセンサーをスター型に接続していく「スター型」と呼ばれる方式で、代表例としてはLoRa、Sigfoxがあります。そしてトッパンが推奨するZETAは、センサーが複数の中継器を経由してメッシュ状にネットワークを構築する「メッシュ型」で、センサーに中継器の機能を持たせ柔軟で広範なネットワークを構築できるので「マルチホップ型」とも呼ばれています。ZETAには、(1)2kHzの狭帯域で利用可能で電波干渉の影響を受けにくい、(2)室内、屋外を問わず通信エリアの拡大が可能、(3)電池駆動の中継器で低消費電力・低コスト化、(4)アップリンク、ダウンリンクの双方向通信に対応などのメリットがあります。
トッパンでは、ZETA規格に対応した各種センサーや中継器など多彩なゲートウェイ製品を用意しています。また、従来比42%シュリンクの超小型ZETA無線通信モジュール「TZM901シリーズ」の量産も開始し、専用の評価ボードも開発するとともに、センサーデータの見える化ツールとして「トッパンZETAセンサーデータ閲覧システム」も提供しています。さらに、トッパンは2018年に設立したZETAアライアンスの立ち上げメンバーとして、ZETAを活用した共創と普及をリードしています。すでに、多くのパートナーとともに、トイレのドア開閉センサーと人感センサーによるプライバシーに配慮した福祉施設の見守りサービスをはじめ、各種センサーとAIを活用した錦鯉養殖池の遠隔監視から、スマート農業、鉄道IoTなどの実証実験も手掛け、ZETAの本格的実用化に向けた取り組みを進めています。
ZETAを活用し、製造・物流DXを推進
センサーや機器制御系のデータ通信に最適なZETAは、温湿度、CO2濃度、Ph濃度などの環境管理、侵入検知などのセキュリティ、機器類の故障・予防保全、メーター検知などに適応するため製造現場での活用も期待されています。トッパンでは、自社工場を使って構内や周辺環境を含めた通信評価を実施し、コストや運用面での実効性も確認済みです。そして、製造現場での普及に向けて、AIエッジ処理より画像伝送を行わずメーター検針を行う「メーター検針デバイス」、複数のセンサーを同時接続可能な環境観測ノードセット「Watcher Pro」、振動センサー・無線モジュール・MCU・バッテリー一体型で装置の故障予知に貢献する「Vibnexus」などのIoTデバイスをパートナーと共同開発を進めています。また、物流現場においては、低コスト、小型・薄型・軽量、長距離伝送に対応したフレキシブル広域センシングタグ「ZETag」の開発・実証実験も手掛け、物流プロセスの可視化や在庫管理の効率化を目指しています。このようにトッパンでは、ZETAアライアンスパートナーとのエコシステムを強化し、ZETAを活用した新しい価値の創造とビジネスの拡大を推進しています。
*ZETAアライアンス:メーカー、通信事業者、SIer、エネルギー、ソフトベンダーなど、国内:93社、中国:110社(2020年2月現在)の企業や、大学などの研究機関が参画するビジネスコンソーシアム。
諸井 眞太郎 (もろい しんたろう)
エレクトロニクス事業本部 事業戦略本部
第一企画部 課長