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開催レポート

統合報告書、ESG・SDGsセミナー2019

日時:11月14日(木)13:30~16:30
場所:トッパン小石川ビル 印刷博物館 B1F グーテンベルクルーム

統合報告書、ESG・SDGsセミナー2019|凸版印刷

日本企業の統合報告書はESG投資への関心の高まりを受け、発行企業数は2018年に400社を超え、2019年は500社を超える勢いでブームが続いており、その社数はグローバルでも高いレベルにあります。また、SDGsも2015年9月の採択からすでに4年が経過し、企業に一定レベル浸透してきた状況です。しかしながら、クオリティ面でグローバルとのギャップが顕著になりつつあります。
今回のセミナーでは、国内外の2019年発行の統合報告書、サステナビリティレポート等の優良事例を比較・分析し、今後のレポーティングやコミュニケーションの方向性を見出すとともに、SDGs×イノベーションの専門家をお招きし、日本企業におけるSDGsの活用方法について紹介しました。 

PROGRAM 1

日本企業の統合報告書のクオリティ向上にむけて

PROGRAM 2

サステナビリティレポート、SDGs最新動向 

PROGRAM 3

SDGs起点でビジネスを創出する! 

PROGRAM 1:日本企業の統合報告書のクオリティ向上にむけて

 ESG投資の拡大とその背景 
ESG投資は、2005年に国連でPRI(責任投資原則)が公表され、これに公的機関投資家が署名したことで一気に拡大しました。以後、統合レポート等を発行する企業が増えてきました。企業にとっての事業機会と投資家にとっての投資機会をマッチングするものがESG投資であるとも言われています。2019年現在、ESG投資の規模はグローバルで30.7兆ドル、日本では231億円で、この2年でも大きく拡大しています。
 グローバルなESGコミュニケーションの潮流 
世界各国の法整備の状況をみると、アメリカは義務化に至っていないものの、EUをはじめとする欧州各国は全体的に開示レベルが高くなっています。南アフリカでも早くからESG情報の開示が義務化されており、統合報告先進国となっています。日本では、2020年3月期より有価証券報告書に非財務情報を掲載する動きもあり、統合レポートやその他の任意開示において、金融機関側が求める情報開示と企業側が開示する情報のギャップを埋めていこうというものです。
 ESG時代に求められる情報開示 
2019年の3月に発表された統合報告書を比較分析した論文によると、世界各国の中における日本は、発行企業数は多いものの全体では低評価です。高評価の国は、マテリアリティ、リスクと機会、戦略と資源配分、パフォーマンス、今後の展望の5つの項目について、わかりやすく開示されていると評価されています。 国内事例に関しては、WICI※1 による統合報告書のアワード受賞企業を中心に見てみると、ESG活動の全体像について外部環境からマテリアリティを特定し、SDGsとの関わりもあわせて、機会やリスク取り組みをわかりやすく紹介した例や、「サステナビリティマネジメント」というパートを設けて、バリューチェーンに沿って関連する取り組みを一覧化した例など、参考となる事例が出てきています。

 統合報告書の効果的活用に向けて—ESG情報の質の向上 

今後、ESG情報の質の向上を目指す中では、企業価値に影響を与える情報や持続性に関する情報の開示などがより求められていく傾向にあります。統合報告書を発行するメリットとして、①競争優位性や価値創造プロセスの特定の過程で、社内のコミュニケーションの活性化が進むこと、②マネジメントフレームを明確化することでマネジメント体制の整備が進むこと、③投資家とのエンゲージメントの強化などの好循環が期待されること、が挙げられます。
これから統合レポートを作成する企業に対しては3年計画で、まずパイロット版の制作を行い必要な情報を洗い出す、2年目に本格的な統合報告書として発行、3年目でその質の向上を目指すといったステップで進めていくことをお勧めしています。 

※1 The World Intellectual Capital/Assets Initiative

藤沼 将史(ふじぬま まさし)
凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター
クリエイティブ本部 コーポレートコミュニケーション部 

凸版印刷|藤沼将史

IRとCSRのハイブリッド対応が持ち味。特にBtoB企業におけるコーポレートコミュニケーションに強く、常に最新動向をウォッチしトレンドを分析している。また、Webサイトやニューメディアを活用したコミュニケーション支援も得意とし、あらゆるステークホルダーとの戦略的なリレーション構築をトータルに支援している。

PROGRAM 2:サステナビリティレポート、SDGs最新動向

 サステナビリティコミュニケーションの全体像 
統合報告が増えてきた中でのサステナビリティコミュニケーションを探るため、環境コミュニケーション大賞を受賞した優良企業を中心に、情報特性(財務・非財務)と読者ターゲットを軸にして、冊子、ウェブ、PDFなどの発行物をマッピングして、各社の特性・傾向を紹介しました。これを行うことで、誰に、何を、どのツールで発信しているかが把握でき、各媒体の特徴を生かした使い分けや、どのような点を重視しているかが見えてきます。例えば、統合報告書では企業の全体像を示し、一般の人も来るCSRサイトはトップメッセージや方針などの重要な要素に絞ったダイジェスト版、PDFは専門家向けのデータブックなど、ターゲットごとに媒体特性を活かしたコミュニケーションがみられました。海外で幅広く事業展開を行う企業では、グループポリシーを22ヵ国語で展開したり、専門家に向けてデータをエクセルで用意したりするケースもありました。
また、SDGsや人権などのシングルイシューでターゲットを絞った報告書が増えている傾向が国内でもみられます。
 ESGコミュニケーションの優良事例 
ESGの3側面からみると、「環境」においては、TCFD※2への対応としてシナリオ分析の結果を開示する事例が出てきました。「社会」については、マネジメントの明確化やPDCAサイクルが回っていることが訴求できる開示の仕方を行うなど、企業としての説明責任を積極的に果たす姿勢を示す企業がみられました。「ガバナンス」については、コンプライアンス対応に注目が集まりましたが、責任の所在の明確化、対策の進捗状況の報告などもありました。
 SDGsを取り巻く環境 
8月にSDGsのロゴが改訂され、ライセンス契約によりロゴの商業利用も可能になりました。今では、雑誌・ファッション・eスポーツイベントなど、一般生活の中にSDGsという用語が入ってきており、これを継続的に浸透させていくことが重要です。
一方で、日本のSDGsの達成度ランキングは昨年から変わらず15位でした。2017年に経団連が企業行動憲章にSDGsの達成を盛り込むなど、改善に向けた取り組みも年々進んでいます。また、GRI※3と国連の共同による「SDGs実践ガイド」3部作の和文版も出そろい、今後企業によるSDGsコミュニケーションがより促進していくと思われます。
 SDGsコミュニケーションの優良事例 
個々の企業ではなく、業界団体がとしてSDGsレポートを発行し、業界全体でSDGsを盛り上げていこうという動きもみられます。また、従来のCSR報告書からSDGs報告書に切り替えて発行するなど、SDGsに対して本格的な取り組みを表明するケースもあります。
また積極的に自社とSDGsの関連を情報開示する動きもあり、一つのターゲットに向かった取り組みが他のターゲットにも波及していることを訴求した事例などを紹介しました。 

 ※2 The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures
 ※3 Global Reporting Initiative

小髙 悠詩(おだか ゆうし)
凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター
クリエイティブ本部 コーポレートコミュニケーション部

凸版印刷|小髙悠詩

凸版印刷入社後商品企画部にて多種多様なクライアントの商品プランニングに携わった後、コーポレートコミュニケーションの世界へ。環境情報学を専攻し、エネルギー関連に携わるほか、環境先進国ドイツで過ごした経験を活かし、CSRを中心にグローバルなコミュニケーション支援に携わる。環境省「環境コミュニケーション大賞」やWBCSD「Reporting Matters」などのアワード受賞実績も多数。 

PROGRAM 3:SDGs起点でビジネスを創出する!

 Japan Innovation Networkの活動について 
Japan Innovation Network(JIN)は、イノベーションを興す人材を増やしていこうという問題意識をもとに立ち上げられた経済産業省の研究会を母体として2013年に設立された団体で、日本企業のイノベーションの加速支援を行っています。研究会で検討を重ねた結果、イノベーション人材の必要性もさることながら、“真にイノベーションをリードする企業経営者”が必要だということ、また、イノベーションを興すには、通常から既存事業の発展と新事業創造の「2階建て経営」を行うことが重要であるという結論になりました。この提言内容を実現していくために、研究会の委員が理事となってJINを立ち上げ、現在、「イノベーション100委員会の運営」「イノベーション・マネジメントシステム・アクセラレーションプログラムの提供」「イノベーション加速支援」の3つの活動を行っています。
 SDGs Holistic Innovation Platform について 
2015年9月に193ヵ国が合意して国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成をイノベーションの機会として捉え、日本発のビジネスでSDGs達成を目指すオープンイノベーション・プラットフォームがSDGs Holistic Innovation Platform(SHIP)です。
SHIPでは、企業のSDGsへの取り組みの段階と、ビジネス化の進展度ごとに、様々なプログラムを用意し、オープンイノベーションのエコシステムを構築しながらSDGsを達成するビジネスを創出しています。SHIPのエコシステムで、政府や国際機関だけでなく、世界各国のスタートアップハブ、さらにはNGOや留学生も巻き込みながら、世界各国の真の課題を見極め、スタートアップ企業の技術とノウハウを取り込み、政府や国際機関の施策とも連携しながら、社会の課題を解決し、SDGsを達成するためのビジネスモデルの構築を、2016年から日本企業の皆さんと進めています。ビジネス創出には、かなりの時間を要する場合が多いですが、SDGsが設定した“あるべき社会の姿”をイノベーションで実現するには、試行錯誤するプロセスが重要だというマインドを日本企業の中で共有していくことが大切だと考えています。
 2019年の国連総会における民間セクターの動き 
今年9月の国連総会の期間中に世界各国から企業経営者が集まって民間セクターの果たすべき役割が議論する民間セクターウィークでは、特に、環境問題が最重要なトピックとして取り上げられました。「“持続性か利益か”の選択ではなく、持続的に利益を出す時代だ」「SDGsは人類史上最大のビジネスチャンスだ」という各国経済界のリーダーの発言もあり、SDGs達成に向けた民間企業への一層の決意が伺われました。
また、「Business Ambition for 1.5℃ “Our Only Future” ※4」という、企業による地球温暖化防止に向けた取組みも始まり、今年、これに署名した89社には日本企業も2社含まれています。さらに、SDGs達成には毎年300億ドルの資金が必要だということから、CEOだけでなく、CFOの役割も高まっており、世界中の企業のCFOが参加するネットワークも設立されました。
 日本企業の動き 
2017年、経団連は企業行動憲章に「Society 5.0の実現によってSDGsの達成をめざす」ことを明記し、これが日本企業の行動に大きな影響をあたえました。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが行った、ネットワークに加盟する日本企業を対象としたSDGsに関するアンケートでは(2019年2月発表)、約7割の企業がSDGsを「将来のビジネスチャンス」として捉えているという結果でした。2019年5月には経済産業省より「SDGs経営ガイド」も発表され、投資家も長期的な企業価値の評価する指標としてSDGsを捉えていることが挙げられています。
一方で、SDGsを既存事業に当てはめてラベリングするだけで終わってしまったり、SDGsに関する戦略と現場が乖離していたり、達成しようとするSDGsをひとつに限定してしまったりするなど、まだまだSDGsがビジネスの創出に活かされているとは言えない現状もあります。SDGsのゴールやターゲットは相互に関連しあっており、SDGsを起点にすることで、ビジネスも多方面に波及させていくことが可能になるのです。
 SDGsとイノベーションの関係 
イノベーションとは、単に新事業創出のことを指すのではなく、“本業の革新”と“新規の事業”の二本立てにより、“新しい価値を世の中に生み出していくこと”です。アメリカでは“価値のデザイン力(構想力)がイノベーションの源泉である”と言われています。
イノベーションのプロセスでは、詳細なビジネスプランを策定する前の段階で、時間をかけて試行錯誤することが非常に重要です。“創りたい未来”に対して、現実を変えていくことがイノベーションの本質ですが、SDGs は“創りたい未来”に当てはめることができます。SDGsには、17ゴールの下に169のターゲットが設定されており、さらに、各ターゲットの達成度を測る232の指標があり、ターゲットと指標までを見ると、その中に多くのビジネスの機会を見つけられるのではないでしょうか。ゴールにたどりつく“手段”を見つけ、それをどうビジネス化するかを検討していくことがイノベーションになります。
 SDGsビジネス事例 
世界各地で社会の課題を解決する“SDGsビジネス”がたくさん生み出されており、SHIPをJINと共同運営している国連開発計画(UNDP)が主導し、優れたSDGsビジネスモデルを広める取組み「Business Call to Action(ビジネス行動要請)」には、全世界から245企業(うち日本企業13社)が参画しています。
日本企業のSDGsビジネスで評価されているのは、現地コミュニティを巻き込み、現地にちゃんとノウハウを残すビジネスの進め方です。また、科学技術を活用したビジネス、モビリティ・環境・防災・保健など日本が多くのノウハウ・技術を持った分野において、日本企業の役割が期待されています。ひるがえって、日本企業に必要なのはスピードで、そのためには、「まずやってみようと」というリーンスタートアップを許容することと重要性を経営者も事業部門もきちんと認識することが大切でしょう。何よりも、SDGsを起点に考えることによって楽しみながら社会との接点や未来の姿を考え、社内の組織を横断的に巻き込みながら、SDGsビジネスの創出に取り組んでいただければと思います。

 ※4 世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃未満に抑え、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを誓約する。

小原 愛 氏(おはら あい)
一般社団法人Japan Innovation Network (JIN)
ディレクター

一般社団法人Japan Innovation Network  (JIN) 小原愛

シンクタンクで研究員・CSR推進室長を務めた後、UNDP(国連開発計画)にて民間連携に携わる。現在は、JINにて「SHIP(SDGs Holistic Innovation Platform)」の企画・構築・運営を担当。

セミナーの様子

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