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統合レポート徹底解剖!海外企業編

(4)大型車輌メーカーD社(スウェーデン)Annual and Sustainability Report

【冊子構成】

【特長】

  • 前半(A Global Group)は非財務(ESG)情報主体、後半(Group Performance)は、財務情報主体の構成。
  • 前半の非財務情報のタイトルがStrategy、Business Model、Value Chainなど、IR的なワーディングで、経営とESGの強いConnectivityを感じる。
  • 前半のBusiness Modelは、メーカーらしく詳細なサプライチェーンの報告となっており、さらに同パートの最後に「企業の責任」というタイトルで、一般的なCSR情報が網羅的に記載されている。
  • 後半の財務情報の本文タイトルが「取締役会(BOARD OF DIRECTOR'S)報告」となっており、取締役会の読者に対するコミットメントを表現している(通常は「経営陣(management)報告」)。
  • 後半パートはMD&A的な記載方法をとっているが、財務諸表が直接埋め込まれており、こちらもFSに対する経営陣のコミットメントを表現している(逆に通常の財務諸表セクションには、財務注記しか掲載されていない)。

前半74ページがES情報中心で、戦略的な言葉使いで掲載されています。後半は34ページにわたるMD&Aのような構成ですが、そのタイトルが「取締役会報告」となっており、取締役会が責任を持って株主に報告するという、投資家に対するコミットメントが非常に強い冊子といえます。
フレームワーク的な価値創造に対しては淡泊な印象がありますが、逆に日本の会社でもよく取り上げられているメガトレンド、地球規模で人類に何が起きているかということを強くアピールしています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)をレポート中に取り入れ、それに対するソリューションを提供する会社であるという立場でストーリーを作っています。

(5)電気通信事業者E社(イギリス)Strategic Report

【冊子構成】

【特長】

  • イギリスのレギュレーションにより「統合報告」ではなく「戦略レポート」。E社の場合、アニュアルレポート中に、前半パートのメインコンテンツとして、「戦略レポート」を位置づけている。
  • ビジネスモデルとして、大きくオクトパスチャートを活用。フレームワークと同じ6つの資本をインプットとしながら、アウトプット、アウトカムについては、独自のコンセプトを採用。
  • インプット 、アウトプット 、アウトカムの概念についてアイコンを作成。これらのテーマが各ページでどのように表現されているのか、読者に伝えるべくアイコンをフル活用。
  • 他国の報告書よりも、「リスク情報」が充実している。

E社の場合はアニュアルレポートの一部が戦略レポートになっています。会長メッセージやビジュアル特集は戦略レポートの外に置いてありますが、CEOメッセージやCFOメッセージは戦略レポート中に入っています。やはりES的な情報が戦略の部分にあり、IR的な情報は事業概況の中で結果報告、もしくは全社的なパフォーマンス分析の形で書かれた構成になっています。どちらかというと会社が持っている有形無形の資産を、ステークホルダーとの関係の中で今後どう拡大させていくのかというストーリーになっており、投資家にはエキサイティングな内容だと思います。
一方でビジネスモデルチャートにおいては、フレームワークの6つの資本がどのようにインプット、アウトプットされているかということが非常に忠実に組み入れられています。イギリスの戦略レポートはリスク情報の充実が重要視されており、日本の会社にとっても極めて参考になる内容です。
ガバナンスページも非常に充実。報酬委員会や指名委員会など、年間の委員会報告が詳細に記述されています。日本でもさまざまな委員会を作っている会社はありますが、今後はそうした委員会に社外役員をどんどん入れて、統合報告の中で委員会報告をする例が増えてくると思われ、非常に参考になります。

終わりに~IR活動を「プロ野球選手の移籍」に例えると…

最後に、統合報告は従来のアニュアルレポートと何が違うのか、プロ野球選手の移籍に例えてみました。
これまでのIR活動は「打率が高い」「肩が強い」あるいは「選手としてリーダーシップがある」など、一所懸命に目に見える長所をアピールしてきました。
ところが“海千山千”のスカウトマンたちは、その選手が短命なんじゃないかということを最大のリスクと考えており、怪我や病気を持っていないか、練習が嫌いなんじゃないか、性格に問題がありコーチのいうことを聞かないんじゃないか…このようなリスクを心配しているのがESGの投資家なのではないかと思います。
こうした人たちに、「私は大丈夫です」と答えるには日常生活の裏づけをしっかりやらないといけません。「トレーニングの手法はこうです」「まっすぐ家に帰って酒は飲みません」「健康診断の結果もご覧ください」「メンタルセラピーも受けています」「奥さんは栄養学の資格を持っています」「1日のスケジュールは厳しく管理されています」…このようなことが統合報告のコンテンツではないのかと考えています。例えば「趣味はガーデニングです」といったコンテンツは、「良き選手」というより、どちらかというと「良き人」のコンテンツであり、サスティナビリティーレポートの内容ですね。
このように考えると、統合報告のコンテンツについても、いろいろと思いつくのではないでしょうか。

クロスインサイト株式会社 代表取締役 鈴木 浩(すずき ひろし) 氏

ノンバンクの米国駐在員などの経験により、海外の金融・会計に詳しい。1999年からアニュアルレポートの制作と、コーポレートストーリーづくりに関するコンサルティングに従事し、現在は、クロスインサイト社を設立して代表取締役を務める。

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