凸版印刷トッパンソリューション

    •  
    • お問合わせ凸版印刷
    •  

統合レポート徹底解剖!国内企業編

統合報告書の内容

では、基本構造から一段掘り下げると何が入っているのか、を見ていきます。

(1)イントロダクション

絶対に必要とするブロックではありませんが、読者に自社の魅力を伝える意味では非常に重要なパートで、各社工夫を凝らして作っています。B社(商社)のカバーストーリーはほとんどを写真で構成、デザインされています。写真を見て興味を持ってもらうことが目的で、1分もかからないうちに全体像が掴め、もっと読み進もうという気になります。パッと見て理解できる程度の情報量が大事かと思います。

(2)会社紹介

自社の中身をわかりやすく伝えるためのパートです。一番下のビジネスモデルについては、これからはインプットとアウトプットとアウトカムが重要になってくるので、インプット、アウトプット、アウトカムというところはしっかり作っていく必要があるかと思います。C社(保険会社)の例では、価値創造モデルとビジネスモデルを2つに分けて、絵などを使ってわかりやすく表現しています。

(3)経営戦略

経営陣の意思を伝えることが重要で、特に優良15社の報告書ではCEOのメッセージが充実しています。具体的な中身としては目指す企業像、中期経営計画の方向性や前期の振り返りなどがあります。D社(商社)の例では、CEOメッセージをQ&A形式にして、非常に読みやすくまとめられています。また、CFOメッセージもほとんどの企業が掲載しています。
中期経営計画は対比できるように表現してあるものが評価が高く、マテリアリティについてはプロセスとセットになっていることが大事です。

(4)価値創造

事業活動についてただ報告をするだけではなく、自社内でしっかり分析をすることが大切です。各事業活動の紹介は、できればフォーマットを統一したほうが良いです。E社(精密機器メーカー)の例では、各事業の紹介がほぼ統一フォーマットで紹介され、現状と将来の見通しが読み取れるつくりになっており、非常に読み進めやすくなっています。
特集についてはここで展開するのか、あるいは巻頭で展開するのかは、内容と全体の冊子構成によります。

(5)経営基盤

基本的にはガバナンス中心の情報になります。各パートで基本的な流れを申し上げますと、まずどのような考え方で運営をし、その実現のために具体的に何をするのか、どのような効果があったかをガバナンス、リスク、コンプライアンスで、それぞれ同じような流れで表現・開示をしていくことが高く評価されています。F社(飲料メーカー)の例では、コーポレートガバナンスコードへの対応もなされていました。

(6)データ

こちらはデータをそのまま紹介すれば良いのですが、中長期の財務サマリーが重要です。できればその変動についてコメントがあればなおよいと思います。財務分析はほとんどの会社が載せています。G社(電気機器メーカー)の例では、TSRとボラティリティの数値を掲載しており、専門家から非常に高く評価されています。

(7)補足等

必要に応じて、業界特有の事情や専門用語・業界用語など、読者の理解を助ける情報を掲載しています。H社(運輸業)の場合は業界のデータが載っており、読者にとって非常に便利な内容になっています。
ご紹介した構造とコンテンツについては、掲載の順序、各情報の必要・不必要あるいは情報の密度については各社の事情に合わせてカスタマイズをしてください。これらの情報を読みやすく掲載することで、一定の評価は得られると考えています。

現場の投資家が重視するESG情報とは

ここまで見てきたのは、あくまでWICIジャパンの評価基準に沿ったものです。では、実際の現場の投資家が、統合報告書やESG情報をどう見ているのかを調査しました。忙しい方ばかりなので、それほど多くの取材ができたわけではありませんが、貴重なご意見をお聞きすることができました。
その中で「重要視しているESG情報は何ですか?」という質問については、以下のような結果になりました。

環境関連

・環境データ(CO2排出量、水使用量等)
・環境リスクと機会(気候変動、水)
・スコープ3の開示
・(生物多様性への対応)

環境に対しての取り組みの効果と業績の関連、なぜそれをやっているのかなどを知りたいという意見がありました。生物多様性については、近い将来に重要な情報になるとのことでした。

社会関連

・従業員関連の基礎データ(平均給与・年齢・勤続年数、新入社員数等)
・労働環境関連のデータ(残業時間、有給休暇取得率、満足度調査等)
・ダイバーシティ関連のデータ(女性比率、障がい者雇用比率等)
・人材育成関連の情報(制度の充実度、1人当たりの教育時間・コスト)
・サプライチェーンCSR関連の情報(取引先監査、現地調達比率等)
・人権関連の情報(デューデリジェンスの実施、社員啓発等)

特に、従業員関連のデータに注目しています。「従業員満足度」が高い企業はパフォーマンスが高いと考えられ、最重要視されています。企業の大きな資産である人材をどのように活かしていくのかが見られているようです。

ガバナンス関連

・ガバナンスコードへの対応状況
・取締役会の実効性に関する情報(議題の開示、社外役員の有効性等)
・役員報酬
・役員のダイバーシティ(女性、外国人)
・企業理念/行動規範等の内容と浸透度に関する情報

中でも企業理念を重視しているようです。企業理念をどれだけ大事にし、どのように従業員に浸透させ実現させるか、そのために具体的に手を打っているのかまでを見られています。

また「ESG情報の入手先」については、統合報告書をはじめアニュアルレポートやCSRレポート、株主通信などあらゆるツールに目を通していました。トップメッセージが動画で自社HP上に載っているとすごくありがたいという投資家もおり、動画のニーズは意外にあるという印象です。インデックスについては実はあまり参考にしていないという意見でした。

最後に

現場の投資家の方と対話をして感じたことをまとめました。

今回は、評価される統合報告書のフレームづくりをテーマに調査・分析を行いました。ご紹介したフレームおよびコンテンツと、現場の投資家のご意見をうまくミックスさせて、来年度の統合報告書づくりにお役立ていただければ幸いです。

加藤 公明(かとう きみあき)

凸版印刷株式会社 トッパンアイデアセンター マーケティング本部 マーケティング企画部 コーポレートコミュニケーション企画チーム IR・統合報告担当 加藤 公明(かとう きみあき)
10年以上にわたり、IRビジネスに関わる。株主通信、IR Webサイトなどの個人投資家とのコミュニケーション施策、株主総会の企画・運営、アニュアルレポートの発行など数多くの案件を手がける。また金融機関向け施策の実績が豊富で、特にディスクロージャー誌については毎年分析資料を発行し、最新動向の把握に努めている。最近では企業価値を伝えるツールとして統合レポートに注目しており、グローバルな視点で今後の展開を注意深く探っている。

ページトップへ

TOP

Copyright (c) 2018 TOPPAN PRINTING CO., LTD.

凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部による、公式HPです。