2022.02.07
【後編】創造性のある一歩進んだサステナビリティを歩もう
#組織・人材・働き方改革#SDGs#非対面・非接触
2030年の達成に向けて、世界共通の目標として掲げられているSDGs。
サステナブルな社会の実現に向けて、私たちはどのように考え、行動していくべきなのか。
日本文学研究者で、日本の文化にも造詣が深い、ロバート キャンベルさんにお話を伺いました。
創造的なストーリーが行動変容につながるきっかけに
SDGsの大切なキーワードである「サステナビリティ」についても考えてみましょう。持続可能な社会は、均衡が保たれている状態にあるわけですが、持続するにしてもいろいろなかたちがあり得ます。先進国の一つである日本は、ただ単に持続するのではなく、創造的な持続性というものを率先して実現すること、模索しながらでもそれを世界に発信していく義務があるのではないでしょうか。
つまり、「生み出しながら持続する」ことがとても大切です。実は伝統工芸などの分野では、かなり成功例が出てきています。例えば織物業です。愛知県の尾張や新潟県の小千谷地方は絹織物の有名な産地ですが、伝統を守りながら、織り方を工夫したり、新たな商品を考えたりして、今の消費者に合ったものを作り続けています。日本酒もそうですね。イノベーションなど新たな技術を取り込みながら、日本の伝統的な製造手法を維持しているわけです。技術伝承のやり方など、人材育成面においても、従来の閉ざされたやり方から、大きく変わりつつあるようです。自分たちの一番大事な部分を守りながら、変えるべき部分は柔軟に変えていく。こうした姿勢は、私たち一人ひとりがSDGsに取り組むうえでも参考になると思います。
私の知人で、ワイン醸造家がいます。山梨県北杜市の歴史あるワイナリーの4代目社主の娘さんで、ボルドーで長く勉強し、帰国後、自分で新しくぶどう畑から作った方です。彼女は今年、畑で発生した微生物がぶどうの皮に付着することでできた“土着酵母”を使って新たなワインを作ることにも成功しました。酵母菌から作るのはとても手間がかかることですし、リスクが高いことなのですが、これは、非常に創造的な試みであったといえるでしょう。「サステナビリティ」というと、資源を無駄にしない、ロスがないようにする、節約するといった言葉が思い浮かびます。もちろん、それはそれで大切なことなのですが、SDGsを考えるときは、例えばこのワイナリーのように、もう一歩前進したクリエイティブな発想が、非常に大事なのではないかと思います。
ロバートさんが顧問を務められている早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)でお話を伺いました。
今後、企業のそうした視点が人々の消費行動に大きな影響を与えるのは確かで、そうした変革はすでに世界中で起きています。例えば有名な高級ファッションブランドも、自分たちは新しい技術を使い、汚染しない方法で革を染めているということを、ブランディングの中にどんどん打ち出してきています。
SDGsという言葉を使ってはいませんが、世界中の人々から「SDGsに積極的に取り組んでいるブランドだ」と認識が浸透し、「環境に配慮しながらすてきな生活をしていく」というストーリーが、ブランドの中に確立するわけです。SDGsは、なかなか自分ごと化しにくい部分がありますが、企業がそうしたストーリーを発信していくことで、一人ひとりの心に影響を与え、人々の考えや行動変容につながるのではないでしょうか。そのことが、企業がSDGs活動に積極的に関わるべき一つの理由であるかもしれません。