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2022.02.07

【前編】創造性のある一歩進んだサステナビリティを歩もう

#組織・人材・働き方改革#SDGs#非対面・非接触
2030年の達成に向けて、世界共通の目標として掲げられているSDGs。 サステナブルな社会の実現に向けて、私たちはどのように考え、行動していくべきなのか。 日本文学研究者で、日本の文化にも造詣が深い、ロバート キャンベルさんにお話を伺いました。

ニューノーマルへの対応と 日本に根ざした意識や知恵

日本のSDGsに対する意識は、住んでいる地域や職業など、人によってだいぶ違うとは思いますが、この5年間ぐらいで大きく変わってきたと感じています。身近なところで、プラスチックなどごみの分別への意識や、物を買うときもサステナブルな商品かどうかが、消費行動の一つの価値基準になってきていると思います。
 
特にこの1~2年、急激に人々の意識を高めたきっかけは、やはり新型コロナ感染症の流行でしょう。ニューノーマルにどう対応し、バランスを取りながら社会を持続していくことができるか、一人ひとりが考えざるを得なくなりました。それはSDGsという言葉のもとに考えられたわけではないのですが、社会の持続性や均衡を意識し、移動、働き方、公共スペースの使い方など、自分たちの生活を持続させていくために意識や行動が大きく変わったことは間違いありません。
 
持続可能な社会に関して言えば、日本は酵母菌の種類が世界の中でも、多様な地域だということをご存じでしょうか。南北に長い地形、黒潮などの海流、気象的な条件の影響で、渡り鳥や蝶など海を渡ってくる生き物も多く、それによりさまざまな微生物も日本にもたらされました。江戸時代以前から酵母菌や納豆菌など菌類の活用が盛んに行われており、日本の食生活にも大きな影響を及ぼしてきたわけです。例えば、江戸時代に四つの大きな飢饉がありましたが、発酵食品が発展し、保存食として人々の命を救ってきました。このように日本には、どのように自然環境を味方につけていくべきか、そのうえでどのように生き続けていくべきかという知恵や知識が、人々が普段気付かないレベルで浸透しているのではないかと、私は考えています。
 例えば、お互いが同じ空間で気持ちよく過ごし、安定した社会空間を持続させるという意味では、マスクを使うというのも、その一つではないでしょうか。日本ではほとんどの人が当たり前のようにマスクをし、感染者数を抑制する結果につながったといわれています。こういうことは、1日にしては成し得ません。何年にもわたる日本の歴史と文化の結果として、今があるわけです。100年前のスペイン風邪流行のときに、初めて世界中がマスクをしましたが、その後、習慣として定着したのは日本だけです。

しかも、皆さんさりげなく個性を表現するアイテムとしてマスクを楽しんだりしています。まるで江戸時代の人々が江戸小紋を楽しんだように。江戸小紋は、一見どんな模様が入ってるか気付かないくらいにさりげなく、でもとても素晴らしい模様です。江戸小紋にしてもマスクにしても、人々は一つの安定した社会を運用しながら、その範囲内で、自分の個性や意識を表現している。それは少なくとも、欧米の個人主義、現在の消費社会のあり方とは異なります。個人の主張を保ちながら周囲に迷惑をかけない、調和を取るというのが日本人の大きな特徴の一つではないでしょうか。

しかし、それがイノベーションや社会課題の解決につながっているかというと、一概にはいえません。実際のところ、SDGsの取り組みが思うように進んでいない項目も少なくありません。例えば、ジェンダー格差の問題では、日本は先進国の中で、組織内の管理職の女性の割合が圧倒的に少ないことを、皆さんはよくご存じでしょう。女性に限らず性的マイノリティに関しても同じことがいえます。差別により、さまざまな手当を受けられない、税制上の権利を行使できないということが、働き手としての職場へのコミットを妨げ、離職率を上げているというのは、もうはっきりしていることです。これらのことは、日本の社会の大きな損失といえるでしょう。こうした課題を解消するためには、配偶者控除の撤廃など、社会の仕組みについて議論を深め、着実に改革していく必要があります。

公平なコミュニケーションが 課題解決の一歩につながる

 SDGsの目標達成のためには、コミュニケーションのあり方を考え直してみる必要もあると、私は思っています。社会課題の解決は人々が共通認識を持つことから始まるからです。人種やジェンダーなどの違いを超えた公平で平等な風通しの良いコミュニケーションが、解決への第一歩になるのではないでしょうか。
 
一例として、体験談をご紹介しましょう。私が所属していた組織でも「日本流の会議」が行われていました。広い会議室の奥にある「お誕生日席」に上席の人間が座り、その左右に近いところから役職順に並びます。顔もはっきり見えないくらいの遠い席に、現場の人たちが座っていました。つまり、現場にいて「問題は何か」「どうすれば問題を解決できるのか」をよく知る人たちが、遠くに座っていたわけです。そして、離れるほどに年齢が若くなり、女性が多い傾向にありました。
 
しかし、私たちはコロナ禍をきっかけに、まったく異なる方法を採用せざるを得なくなりました。Web会議ツールなどを使ってリモート会議をすることになったのです。慣れるまではいろいろと大変でしたが、やってみたらいくつもの感動的な発見がありました。リモート会議では、誰もが画面上に同じ大きさ、名前付きで表示され、発言するたびに表示も入れ替わります。全員が等距離になって、年功序列の席の形式が消滅したのです。すごく面白い現象だなと感じました。
 
その結果、会議中に「〇〇さん、あの件についてはどうすればよいと思いますか」と、誰もが互いに声を掛け合えるようになりました。以前はその人たちの直属の上司を通さないと、直接語りかけることさえできませんでした。質問を投げかけても、上司の顔色をうかがって答えを言うのをためらったり……。それが、リモート会議になったことで直接話せるようになり、声が拾いやすくなりました。それを1カ月ぐらい続けていたら、職場の問題点の共通認識が深まり、改善方法や目指すべき方向性が隅々にまで届くようになりました。場所や空間、格差、差別に束縛されない新しいコミュニケーション方法は、効率よく人々の相互認知を高めていくことにつながる気がしています。このような従来のやり方にとらわれない新しい技術の活用は、SDGsの問題解決につながる一つの手段になるのではないでしょうか。
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ロバート キャンベルさん
日本文学研修者 早稲田大学特命教授
早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)顧問
国文学研究資料館前館長。近世・近代日本文学が専門で、特に19世紀(江戸後期~明治前半)の漢文学と、漢文学と関連の深い文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せている。テレビでMCやニュース・コメンテーター等を務める一方、新聞雑誌連載、書評、ラジオ番組企画・出演など、さまざまなメディアで活躍中。
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