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2019.5.7

「見える化」からはじまるスマートファクトリーへの道

#DX#IoT#スマートファクトリー#組織・人材・働き方改革#空間・モビリティ
凸版印刷株式会社 デジタルイノベーション本部 本部長 伊藤 隆司
スマートファクトリーが進展する背景には、日本の産業界が共通して抱える課題があります。それを解決していくには、まずは、デジタル化による「見える化」が必要です。「見える化」によって何をどう変えていくのか、トッパンで長年工場のデジタル化に取り組んできたデジタルイノベーション本部 伊藤隆司に聞きました。

少子高齢化による人材不足と技術伝承の解決のために

「スマートファクトリー」という言葉が一般にいわれるようになってきたのはここ数年ですが、実は2010年ごろから既に日本では大手メーカーを中心とした工場の建て替え、設備の更新が続いています。日本の高度経済成長を支えてきたさまざまな工場は、40〜50年前に建てられたものが多く、老朽化が進んでいるためです。2011年にドイツで提唱されたインダストリー4.0の流れを受け、日本においても、これからのものづくりのあり方を考え、工場のデジタル化を進めて「一歩先の工場」を創ろうという動きが加速しました。

少子高齢化の問題も大きく関わっています。2025年には団塊世代が75歳を超え、日本人口の3人に1人が65歳以上になる超高齢社会を迎えると予想されています。働き手である若年層がどんどん減り続けている一方で、ものづくりを支えてきた人材は高齢化しており、技術とそれに裏打ちされた品質の高さをどう伝承していくかが大きな課題です。日本が世界に誇る高品質を支えてきた基盤の一つは、熟練工による高い技術力であるため、それらが受け継がれないことには未来を描くことができません。

これまで目や耳や直感といった「職人技」に頼っていたものを、データ(数値)化していく必要があり、それが効率化、技術の高度化、品質向上にもつながります。また、働き方改革に伴い、これまでのような工場での人材の配置や確保が難しくなっているという課題もあります。

多くの企業がこうした課題を解決しようと模索する中、近年、工場内の設備のIoT化・IoA化、LPWAなどの通信規格、センシングといった技術が発展し、「職人技」をデータ化しやすくなる技術がそろってきて、工場のデジタル化が加速してきているのです。

※ Internet of Abilitiesの略。人間の能力の拡張を目的とし、人やロボットが時間や空間の制約を超えて各々の能力を活用しあえるネットワーク環境のこと。

省人化などの取り組みも「見える化」が第一歩

私どもトッパンの工場でも、品質の安定化、技術の伝承は大きな課題でした。これらを解決していくためにまず、工場のデジタル化に取り組み始めました。

工場でのデジタル化というと、まず設備の状況や生産工程に関するデータを取得し、「見える化」することが頭に浮かぶと思います。確かにそれはデジタル化の第一歩ですが、収集したデータを整理・分析し、それらを利活用することで利益につなげていくことが重要です。

トッパンでは、まずそれぞれの工程でどのような手順で作業が行われ、何を確認しているかをチェックすることから着手しました。各工程でのデータを蓄積してシステムに取り込んで作業標準書を作成しています。現場がこうした手順を確認することで、個々の作業者に依存していた技術やノウハウをデータ化していきました。

工場内の「見える化」が進むと、どういう状況で問題が起こりやすいのかなどの改善点が表面化してきます。その情報を工場にフィードバックしてトラブルを未然に防ぎ、業務フロー自体を改善して生産ロスをなくすことが、安定稼働につながります。データの連携により、工場内はもちろん、立地が離れた工場間においても改善点が共有されて、トッパン全体での生産性の向上を同時に実現しています。

特に多品種少量を製造する印刷物の現場では、品目ごとに機械の設定を変えるなど、熟練した作業者の経験に依存する場合が多くなりますが、そうした現場でも検証を繰り返し、フローを改善することにより、作業の標準化、工場の安定稼働を目指しています。将来的には、より効率的な人員配置を行い、管理体制を見直すことも視野に入れています。また、匠作業のAIへの技術伝承が実現すれば、人がやるべき仕事も作業からデータ分析へと働き方が変化すると考えます。

工場の入り口(搬入)から出口(出荷)までのデジタル化により、省人化、自動化が可能となり、人のやるべき作業が変化することで、スマートファクトリーの実現に近づきます。その先の未来には、AIを活用したロボットだけの工場、フルオートメーション化が期待されています。

積み重ねた経験を活かしてトッパンならではの応え方を

トッパンには情報系、生活・産業系、エレクトロニクス系の事業があります。そのため、日本全国に多種多様な製品を製造する自社工場を持ち、材料費削減、品質向上、効率化など、お客さまの工場と同様の課題を検討してきました。

デジタル化の取り組みに関しては、まずエレクトロニクス系の工場から対応が始まりました。納入先のお客さまのデジタル化対応が早かったためです。次に、パッケージを中心とした生活・産業系の事業では、安全性、品質の確保が優先されるため、製造プロセスの管理を重視しながら、取り組みが進められました。そして、情報系の事業は、紙媒体を多く扱うため、最も「職人技」の比重が高い分野ですが、現場によって異なる職人の持つ技術=こだわりを、現場と深くコミュニケーションすることでデジタル化して技術伝承に活用し、技術のさらなる高度化を目指しています。

これらの取り組みを進めるにあたっては、トッパンがお客さまの課題解決の中で培ってきたICTの知見やノウハウが基盤にあります。そのノウハウを自社の工場内でのICタグ導入や、ネットワーク構築に活かしています。また、情報系の事業では、DTPシステムが普及していったことに伴って、後工程にあたる印刷工場でもデータ連携をするために、システム化と基盤システムの標準化を進めてきました。自社工場で得たこれらデジタル化のノウハウを、再び営業部門や販売促進部門にもフィードバックすることで、お客さまの製造現場の改革にも活かせるのではないかと思っています。

「工場のデジタル化」は、生産性や品質の向上、その先の利益拡大に貢献するものです。このように、多様な業種の製造プロセスに関わり、自らの課題をデジタル技術で解決しているトッパンだからこそ、お客さまの課題に寄り添い、「ありたい工場の姿」をともに創っていくことができると考えています。

スマートファクトリーが目指す豊かなデジタル社会

海外製品との競争は年々激化していますが、日本製品の品質に対する信頼感は依然として厚く、製造業、特に日用品・食品各社での国内増産投資が進展しています。これを維持していくためにも、今後ますますスマートファクトリー化の流れは進んでいくと思われます。

「豊かなデジタル社会」をどう実現するか——これが今、企業の共通のビジョンになりつつあります。同時に企業としては、その中で何を実現するか、何が自分たちの強みであるかということをはっきりと打ち出し、それを追求していくことが重要だと考えます。工場と工場が効率化を求めてつながり、企業同士が市場の拡大を狙ってつながり、必要なノウハウを持った他業種と連携していくこと、強みを持っているもの同士がつながることで、さらに新しい市場を創出することができるのではないでしょうか。

トッパンでは、自社の各事業の工場で培ったデジタル化の知見と、2万社に及ぶあらゆる業種のお客さまと関わってきた経験を融合させて、複合的な提案や、より実際の現場に即したソリューションを提供し、スマートファクトリーの実現をサポートしていきます。
伊藤 隆司
凸版印刷株式会社 デジタルイノベーション本部 本部長
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