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アイデアノートでは、課題解決に役立つ当社の受注事例やソリューションを織り交ぜ、独自の視点で編集した注目コンテンツをピックアップしてまとめています。

2020.11.16

大阪・関西万博プロデューサー・石川勝さんと語る 【後編】石川勝さんが語る大阪・関西万博の意義

#イベント
石川 勝(いしかわ まさる)様(左)
2025年日本国際博覧会 会場運営プロデューサー 株式会社シンク・コミュニケーションズ 代表取締役 大阪市立大学 客員教授
ロボット分野、コンテンツ技術分野の専門性を持ち、博覧会や展示会の事業プロデュースに数多くの実績を誇る。2005年愛知万博ではチーフプロデューサー補佐としてマスタープラン策定に従事し、ロボットプロジェクト、愛・地球広場、極小IC入場券をプロデュース。ほかにも東京大学の産学連携事業、経済産業省のデジタルコンテンツEXPO等、多彩な官民事業を手がける。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では会場運営プロデューサーを務める。
松本 洋伸(まつもと ひろのぶ)(右)
凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部 エクスペリエンスデザイン本部 イベントプロデュース部
2006年凸版印刷株式会社に入社。国や自治体のプロモーションイベント等を多く手がける。2007年より10年間『デジタルコンテンツEXPO』の企画から運営・広報業務までを担当し最先端のコンテンツ技術を広く世間に発信。現在はTOKYO2020関連のパートナーアクティベーションや気運醸成事業、パラスポーツの体験プログラムや運営支援を担当している。
2025年開催の日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場運営プロデューサーを務める石川勝さんとトッパンとのご縁は実に10年以上にわたります。愛知万博、デジタルコンテンツEXPOでの共創を振り返りつつ、来る大阪・関西万博はどのようなものとなるのか、万博の意義とともにお話を伺いました。
過去を通して見えてくる「大阪・関西万博」の意義とは?

愛知万博(2005)|歩く恐竜ロボットが出現

松本 これまでいろいろなイベントを通じて、石川さんとは長くご一緒させていただいてきました。

石川 最初にトッパンさんと深く関わったのは2005年の愛知万博でしたでしょうか。これ以降、さまざまな博覧会などで一緒に制作に取り組んできましたね。

松本 愛知万博といえば、石川さんが携わられた、万博初の試みの「小型ICチップ」を埋め込んだ入場券の導入や、たくさんのロボットが登場して注目を集めていたのを思い出します。本物のような歩く恐竜のロボットは迫力がありました。

石川 産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)による「HRP-2」というヒューマノイドロボットの技術を応用し、二足歩行の恐竜ロボットを作ったのです。歩くエンターテインメントロボットとして大きなインパクトを与えたと思います。

松本 はい。2005年の愛知万博は「愛・地球博」という愛称も印象的でしたね。

石川 万博は、1994年のBIE総会決議によって、大きな変化を遂げました。かつては先進国による国威発揚が主な目的でしたが、条約改正により、万博の目的は「地球的課題の解決」へと変わりました。愛知万博はそうした変わり目に開催されたわけですが、「自然の叡智」をテーマに掲げて、国家や企業だけでなくNGO・NPOや市民も加え、地球的課題の解決へと取り組む万博として大成功を収めました。

デジタルコンテンツEXPO|技術はコンテンツを載せてこそ活きる

松本 2008年から始まったデジタルコンテンツEXPO(以下、DCEXPO)は立ち上げからご一緒させていただきました。石川さんはエグゼクティブ・プロデューサーとして、私たちトッパンは2017年まで制作・運営を担う立場として携わらせていただきました。
石川 DCEXPOは「デジタルイノベーションの架け橋」というコンセプトのもと、最先端の技術にコンテンツの魅力をプラスした、エンターテインメントとしても楽しめる作品を発表する場です。マーケティング主体ではなく、技術研究者・開発者ベースで一般に開かれたイベントはあまり類を見ない、だからこそ面白いイベントだと思います。

DCEXPO 2010:先端ロボット技術をコンテンツの力でエンターテインメントに昇華

松本 毎年たくさんのコンテンツや施策が話題を集めましたが、2010年はUstreamによる生配信が画期的でした。

石川 Ustreamは間違いなく流行るだろうと思って、いち早く取り入れ、会場に来られない人にもリアルタイムで体験してもらえるようにライブ中継を行いました。今でこそ生配信は一般的になりましたけれども、当時はまだめずらしかったので話題性も大きかったですね。

松本 そして同年の目玉は人型ロボットが人間のダンサーと踊る「ダンスロボットプロジェクト」。ダンサーのSAMさん監修による振り付けで、一瞬、ロボットと人間の区別がつかなくなるような見事なダンスに、観る人みんなが驚きましたし、とても惹きつけられました。

石川 そうですね。ハードウエアのベースは、愛知万博の恐竜ロボットに応用された産総研のヒューマノイドロボット「HRP-2」を基に、もう少し人間の顔かたちに近づけたサイバネティックヒューマン「HRP-4C」です。二足歩行できるロボットの技術がとても素晴らしいものでした。でも、それはあくまでハードウエアとしての価値です。そこに、ダンスという誰もが分かる「楽しさ」を加えることで、その価値がさらに高まります。この差分こそが「コンテンツ」なのです。

松本 単なる技術披露の場にとどめず、魅力あるコンテンツに昇華させたということですね。

石川 例えば、テレビの「受像機」を見て楽しさを感じるわけではないですよね。なぜテレビを見るかというと、そこに映る「番組」が面白いから。テレビを開発する側は、いかに自然に、きれいに映るかという部分に対して技術の粋をつぎ込みます。その一方で、楽しさの要素は番組、つまり、コンテンツの力です。技術の結晶としてのハードウエアにコンテンツの力を載せることで、さらに魅力を感じさせる存在になるというわけです。

※Ustream(ユーストリーム):ライブ動画配信サービスの先駆け。2007年に米国で誕生。日本でも2010年頃から利用が広がる。2017年にサービス終了。

「技術」と「コンテンツ」を合わせることで「価値」が向上し、誰もが感じる「魅力」を発揮するものとなる

DCEXPO 2011:VRのキャラクターがステージでダンサーと踊って歌う?!

松本 2011年には、VRの「VOCALOID™(ボーカロイド)」のキャラクターと人間のダンサーとのステージがありました。

石川 こちらもSAMさんに協力いただきましたが、ローソンの広報用キャラクター「あきこロイドちゃん」をメインに、3DCGを現実空間とシンクロさせ、人間のダンサーと共演するというものでした。プロのダンサーが動作を作ることで魅力が高まり、そして人間のダンサーと組み合わせることでステージパフォーマンスとしての価値も高まり、非常にエンターテインメント性の高い作品になりました。この手法は後に、初音ミクやPerfumeのライブ演出などにも応用されていましたね。

松本 最先端の試みということもあって、会期前の準備期間はほぼ、会場である日本科学未来館に入り浸りで、ほとんど帰っていなかったかもしれません(笑)。

伝える相手の「興味の目線」より「やや高め」に設定する

松本 先端技術とコンテンツをつなぎ、多くの人々へと届ける。まさに「架け橋」といえるイベントだったとあらためて感じます。

石川 こだわったのは、伝える相手への目線の高さをどう設定するか。こういった先端技術をテーマに何かを創ろうとするとき、「分かりにくいだろうから」と目線を低めにするケースがよくあります。しかし私はそうではなく、ある程度の情報や知識を持っている人たちが楽しめるように、興味の目線を「やや高め」にする方が、価値が高まると思っています。見る人にとってだけではなく、出展する側にとっても張り合いが出ますから。

でも、あまりレベルを高くしすぎると、現場でうまくいかなかったり、突然トラブルが発生したり——展示業界ではこれをリスクと呼んで避けますが、プロデューサーはリスクに挑むことが許される職種ですので(笑)、そういう立場のときには積極的に挑んでいきます。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)へ向けて

松本 こうしてお話を伺ってくると、やはり気になるのは、2025年の大阪・関西万博です。どんなことに取り組んでいかれるのでしょうか。

石川 その前に、愛知万博の話でも少し触れましたが、あらためて万博について、おさらいを兼ねて説明しておきましょう。

万博の意義とは? 150以上の国等が関わる唯一無二の国際イベント

石川 万博は「国際博覧会条約」に基づいて開催される、国家が主体となって行う国際イベントです。半年間という長期にわたって150以上の国家や国際機関が参加して行われる国際事業は他に類を見ません。さらに民間の企業・団体も加わって行うのですから、唯一無二のイベントといえます。

松本 その条約により、地球的課題の解決を大きな目的として愛知万博では環境問題に向き合い、民・官・NGO・NPOを問わず参加して成功を収めたということですね。

石川 その後、2010年の上海万博では「都市」、2015年のミラノ万博では「食」をテーマに掲げ、いずれも成功を収めています。本来なら今年2020年にはドバイ万博が開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により開催が1年延期されました。ドバイ万博では「心をつなぎ、未来を創る」をテーマに掲げています。2025年の大阪・関西万博は、こうした流れを受け継いで開催されることになります。

大阪・関西万博は行動の場——「未来社会の実験場」になる

松本 大阪・関西万博のテーマについてお聞かせください。

石川 テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。国連が掲げるSDGsと歩調を合わせ、いのちを守り、輝かせ、力を合わせる未来社会を描き出すことを目指しています。通常はテーマ・サブテーマを中心に据えて、その実現に向けて世界の国や国際機関、企業、NGO・NPO・市民などがそれぞれの活動や未来像を示すことで博覧会を構成するのが一般的ですが、大阪・関西万博では“People’s Living Lab”——「未来社会の実験場」という、もうひとつの切り口を設けています。

これにより、ややもすると映像や演出による表現に偏りがちな万博のスタイルを、より実践的な「行動の場」へと進化させることをねらっています。さまざまな立場の人々が取り組みを持ち寄り、万博会場で実証や社会実装を行うことで、未来をただ考えるだけでなく、行動によってリアルに描き出そうとしている。これが大阪・関西万博の最大の特徴です。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会のWebサイトの情報を基に作成
https://www.expo2025.or.jp/overview/
松本 石川さんは会場運営プロデューサーとしてどのようなことに取り組まれるのでしょうか。

石川 責務としては、観客サービスや会場管理といったいわゆるイベント運営に加え、海外の国や国際機関の参加や企業のパビリオン出展、催事や会場施設の協賛などの参加計画、入場券の価格や販売方法などの入場制度、情報通信のためのシステム構築やインターネットを活用した取り組み、集客や入場券の販売促進など多岐にわたります。一人で幅広い分野を受け持つことは大変ですが、その一方で、統一的な計画づくりを行えるという利点もあります。

松本 今回の目玉コンテンツとしてどんなものが生まれてくるのか……それも楽しみです。

石川 現在は基本計画をまとめる段階にあり、公開できる情報に限りがありますが、2020年秋以降、順次発表されることになると思います。大阪・関西万博の招致に携わってこられた方々の想いを受け継ぎ、愛知万博で得た経験と、その後の各万博での取り組み実績を参考にしながら、現代にふさわしい新たな万博を創っていきたいと考えています。

松本 これまでご一緒させていただいてきた10余年を糧に、トッパンも大阪・関西万博に積極的に参加し、世界に向けていかに発信していくか。挑戦していきたいと私も思います。

石川 実はDCEXPOで一緒に取り組んだことと“People’s Living Lab”の考え方には、とても重なる部分があります。

最先端の技術の中には、陽の目を見ないまま消えていってしまうものがたくさんあります。そうした技術が世の中に浸透していくためには、プロトタイプ(試作品)を制作し、実際に動かし、多くの人に見てもらい、「こんなことができるんだ」と興味を持ってもらうことが必要です。

そして、「こんなことができたらいいな、こんなものができたら面白いな」という期待や想いが社会に広がっていく……それが実用化を後押しするわけです。こうした「ムーブメント」を、イベント参加者であるユーザーサイドも巻き込んで、一緒に創り出すことがねらいなのです。

最先端の技術を活かして新しい何かを実現しようと挑戦するとき、当然、失敗もあるでしょう。でも、取り組むこと自体に、そうした体験をすること自体に、価値があります。今度の万博は会場全体が「実験場」です。会場のあちこちで試作や取り組みをたくさん行うことで、この万博から世界へ、新しいムーブメントを創り出し、広げていけたらと思っています。

そして、万博にはさまざまな立場から大勢の人たちが参加しますが、できるだけ若い世代に活躍の場を与えていきたいと私は考えています。こうしたことを通じて、イベント産業全体も活気づき、新たな人材が育ってくれることを強く願っています。
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