コラム

オフライン環境を巻き込んだ体験イベントを提供|BAUM(バウム) 株式会社 資生堂様

「樹木がくれる、美しい世界のはじまり」をブランドスローガンに掲げるスキン&マインドケアブランド「BAUM(バウム)」。 従来のオンラインイベントとは一線を画する、オフライン環境を巻き込んだ体験イベントを提供した意図について、BAUMマネジャーの桑原晋さんとカレメルアズサさんのお2人に話を伺いました。

※本コラムは2021年1月13日に発行したideanote vol.140の内容に基づき作成しております。


ideanote vol.140 CX 変わる、顧客体験

(左)株式会社 資生堂 BAUM マネジャー 桑原 晋さん (右)株式会社 資生堂 BAUM マネジャー カレメル アズサさん
(左)株式会社 資生堂 BAUM マネジャー 桑原 晋さん (右)株式会社 資生堂 BAUM マネジャー カレメル アズサさん


「樹木との共生」をテーマにした新ブランド「BAUM」

ーまずは、新ブランド「BAUM」について、ご紹介ください。

カレメル ここ数年、“サスティナブルビューティー”や“クリーン”を追求したブランドが伸びを見せる中、これまで資生堂のプレステージ領域にそうしたものがなかったことから、約3年をかけて立ち上げた、スキン&マインドケアブランドです。テーマは「樹木との共生」。樹木の恵みにより肌をきれいにするだけでなく、例えば、商品パッケージの一部にカリモク家具さんの家具製造工程で発生した端材を再利用するなど、循環性を重視しています。

桑原 ターゲットは20〜30代の男女で、ジェンダーニュートラルなスキンケア商品が中心です。何かを購入する際、ただ消費するだけが目的ではないという考え方は、今、世界的潮流となっています。BAUMも「スキン&マインドケア」を哲学とし、主に、都市で働いている方々で、日々の行動や活動に意味合いを見出し、新しい豊かさを求めている方々を想定して、ブランドを展開しています。

BAUM
樹木は、厳しい環境の変化にもしなやかに調和しながら何百年も生き続ける。BAUMは、「貯水」「成長」「環境防御」の3つのはたらきに着目。

感性に訴えかける体験を通じてブランドのファンになっていただく

ー2020年に実施されたイベント「TREEDAY 2020」の開催背景をお聞かせください。

桑原 発売開始が6月17日で、コロナ禍により、通常のPR発表会やイベントなどが何もできず、代わりに何かできないかと考えたのがきっかけでした。ただし、商品機能を伝えるというより、豊かな時間を届ける、樹木をより身近に感じていただける形を考えていました。そんな折、カリモク家具さんの秋田工場を見学させていただく機会があり、背景に森が見える資材置き場の風景を拝見して、この場所からピアノ演奏を配信できないだろうかと思いつき、企画を組み立てていきました。

ーイベントの概要をお聞かせください。

桑原 オンライン配信はフリーアクセスで、「木の日」である10月8日(木)の20時スタートとしました。カリモク家具さんの秋田工場からチェリスト徳澤青弦さん、ピアニスト阿部海太郎さんによる、それぞれのオリジナル曲のソロ演奏、および、都内スタジオからBAUMのプロダクトデザインも務めたデザイナー熊野亘さんとアーティストの諏訪綾子さんによる樹木をテーマとしたトークライブを組み合わせた、約1時間の内容です。豊かな時間を過ごしていただきたかったので、ハイクオリティで、ゆとりあるプログラムを目指しました。

カレメル 配信を楽しみながら、樹をもっと身近に感じていただくために、「BAUM BOX」を作り、1,000名様限定で事前に送付しました。これは、商品サンプルとブランドのエコバッグ、カリモク家具さんの家具製造工程で発生する数種類の木の端材、粗さの異なる2種類の紙ヤスリなどの詰め合わせです。

桑原 端材は、視聴者の方々に、実際に木の感触や香りを感じていただくためにセットしました。ヤスリをかけると、木の香りがたち、手触りも変化します。とても良いメディテーションの時間になるのではないかと考えました。

「BAUM BOX」とカリモク秋田工場の資材置き場
オンラインでは体験できないことも参加者に提供したい、という想いのもと「BAUM BOX」を製作。BAUMの香りと、テクスチャーを感じられるサンプル、商品パッケージに使われているカリモクの木材に直接触れることができる端材、紙やすりなどが入ったBOXを事前に送付し、申込者の期待感を高めます。写真(右)はカリモク秋田工場の資材置き場。


ー「BAUM BOX」送付対象者様と、そのご招待方法をお聞かせください。

カレメル まず、「BAUM」のインスタグラムアカウント<@baum_global>のフォロワーの方の中から、共感性の高い投稿をされている300名様ほどを選ばせていただき、ダイレクトメッセージをお送りして、ご参加を募りました。それから、以前タイアップ記事を掲載いただいた雑誌「Casa BRUTUS」さんの会員の方にも、イベント告知のメールをお送りし、参加者を募集しました。おかげさまで、わずか2、3時間で規定数に達しました。


自宅でくつろぎながら、樹木を身近に感じていただく

ー今回の企画を通しての手応え、今後トッパンに期待することなどをお聞かせください。

桑原 オンラインとオフラインのバランスが非常に良く、ご自宅でくつろぎながら、樹木を身近に感じていただくという、豊かな顧客体験をご提供できたのではないかと感じています。体験者の方々からも、非常に好意的なご感想を多数いただきました。インスタグラムに関連画像を上げてくださった方も多かったです。

カレメル これからも、BAUMに興味をお持ちくださった方々とは、コミュニティのメンバー同士のような、あまり一方通行ではないコミュニケーションを続けていけたらと考えています。そうすることで、いわゆる顧客データのように数値化したときには出てこない、質の高い関係性が生まれ、それがブランドの財産になるのではないかと感じています。

桑原 今回、私たちが企画を立て、トッパンさんには、動画制作配信と、BAUM BOXの製作から送付までをお願いしました。私が改めて感じたのは、モノがつくれるというのは、トッパンさんの大きな強みだということです。私たちとしては企画に思い入れが強いだけに、ちゃんとモノをつくった経験がある方々とアイデアをすり合わせながら、密に組んで動画や制作物をつくっていけるのは、非常にありがたいことでした。今後、物事はどんどんバーチャルになりがちだと思いますが、だからこそ、手触り感が求められてくると感じています。ですから、私たちはこれからも、全方位的な新しいブランド体験をつくっていかなければいけないと思っています。

2023.10.11