コラム

b8ta Japanとの共創事例
次世代小売店舗で変わる店舗体験

デジタルガジェットなど、イノベーティブな製品体験を提供することで顧客を呼び込み、来店客の行動データをマーケティングや製品開発に活かす仕組みを持つ「b8ta Japan」。トッパンは「b8ta US」への出資と同時に、b8ta Japanとの協業をスタートしました。共創によって生まれるものとは何か? その可能性を探ります。

※本コラムは2021年1月13日に発行したideanote vol.140の内容に基づき作成しております。


ideanote vol.140 CX 変わる、顧客体験

米国発の体験型店舗に出資~トッパンがベンチャー投資&協業を推進する訳~

トッパンは、2万社以上の取引先様との顧客基盤のほか、ベンチャー企業との共創により、新たな事業創出や新ソリューションの開発・連携をより一層進めています。現在、独自のリソースである「印刷テクノロジー」を軸に、事業の多角化を推進するとともに、健康・ライフサイエンス、都市空間・モビリティ、教育・文化交流、エネルギー・食料資源、グローバルといった成長領域への積極的な投資を実行。

直近4年間では40社以上への出資を行い、協業により支援会社を戦略的パートナーとし、企業価値を高める活動を強化しています。その取り組み例として、「b8ta US」への出資と「b8ta Japan」との共創について、ご紹介します。

「b8ta」は2015年にシリコンバレーで創業されたRaaS※1の先駆けといわれる企業です。社名は製品の「β(ベータ)版」を由来とし、米・サンフランシスコのストアオープンを手始めに、次々と全米に展開。現在は米国に23店舗、ドバイに1店舗を構え、年間300万人もの集客を誇ります。

トッパンは、b8ta USへの出資を通じて、日本法人であるb8ta Japanとの協業を開始しています。RaaSの日本市場拡大と、新事業の創出を狙いとし、多様化する顧客ニーズに対応した次世代小売り店舗ソリューションを提供するためです。また、トッパンとしては初めて、リテールの売り場を持つことで消費者の動向を把握し、知見を得ることができるようになりました。

トッパンのベンチャー投資&協業の仕組み

トッパンのベンチャー投資&協業の仕組み

共創するベンチャー企業の新たなサービスと、トッパンの持つ企画力・技術力を掛け合わせることで、新しい社会的価値、新事業の創出を目指します。


リアル店舗はイノベーティブな体験ができる「発見」と「出会い」の場

b8ta Japanは2020年8月、東京・有楽町電気ビル1階と新宿マルイ本館1階に同時オープン。メディアでも話題となり、コロナ禍にもかかわらず幅広い世代の方々が来店しています。

ここでは、来店者が店舗で実際に試作非売品や新製品に触れることで、新しい体験や発見を得ることができます。一方で、各メーカーやD2C※2ブランドは契約した区画(約60cm×40cm/1区画)に自社製品を出品することで、製品をPRする「場所」と同時に、来店客の「行動データ」を取得できます。出品料が月額30万円のみのサブスクリプション型(半年契約以上)で、売り上げマージンも一切発生しません。b8taは、来店者とメーカーやブランドの「出会いの場」を提供するリアルなプラットフォームといえます。

b8ta Japanのストアには、斬新かつ独創的な製品がところ狭しと並んでおり、来店者は“発見の連続”を味わうことになります。150前後の製品が店頭に陳列され、製品情報はタブレットを使って動画などで確認できます。ストアの内装はいたってシンプルで、製品をPRするためのPOPはありません。また、「b8taテスター」といわれる接客スタッフはいるものの、彼らは販売を主目的にしていないため、来店者は購入のプレッシャーにさらされません。来店者にゆっくりと過ごしてもらいたいというストアによる配慮であり、顧客体験を重視しているからです。

このことはb8taがストアを「発見の場」とし、コンセプトとしていることからもわかります。来店者は思う存分自由に、製品体験に集中できるのです。気に入った製品があればその場で購入、または後日、出品者のリアル店舗やECサイトでいつでも購入できます(近日、b8ta Japanオンラインストアがオープン予定です)。

※1 RaaS(Retail as a Service)サービスとしての小売りのこと
※2 D2C(Direct to Consumer)自社で企画・製造した商品を直接、消費者に販売すること


D2Cブランドが注目する、消費者との接点 ~「b8taテスター」の存在~

出品者がb8taに期待することの一つに、製品開発や全国展開前のテスト販売を目的に、試作非売品を出品し顧客の反応を見たいというケースがあります。通常、スタートアップやD2Cブランドがリアル店舗を持つことはコスト面でハードルが高く、彼らは来店者との接点(タッチポイント)を必要としています。そこで、活躍するのがb8taテスターの存在です。

b8taテスターはスタッフとして接客はしますが、販売を主目的にせず、あくまで来店者の「新たな体験」のサポートを重視します。さらに、来店者の生の声を出品者にフィードバックする重要な役割も担っています。このため、出品者から直接トレーニングを受け、製品情報のインプットはもちろん、出品者とのコミュニケーションを大切にします。
このようにして、出品者はb8taテスターから報告された定性的な情報をもとにマーケティング強化へつなげることが可能になります。

b8ta来店者が出品された商材の体験をしている様子

データマーケティングの肝は“リアル” 、来店者の行動データを取得・分析・活用

出品者は、出品セットアップから店舗でのパフォーマンス管理、在庫管理までをプラットフォーム上で行います。プラットフォームに一元管理された来店者の「行動データ」は、ダッシュボードに可視化されます。行動データとは、性別・世代といった属性データのほか、「製品の前で5秒以上立ち止まった来店者数」や「b8taテスターがデモを実施した回数」などの来店者の行動に関する数値です。日々、蓄積された定量情報で現状を把握しつつ、PR手法で改善が必要と判断した場合、別のPR動画に差し替えるなどの改良をオンライン上ですぐさま実行できます。製品のPRに最適な手法は何か、出品者にとっては実験の毎日になります。

取得データや来店者の声をいかに分析し、活用するか。蓄積された行動データは、新たな体験と価値を生み出すための源泉になるはずです。これまでオフラインの店頭マーケティングを重視してきたトッパンは、b8taでのテストマーケティングを通じた顧客理解に基づき、より精度の高いメーカー様向け商品開発やマーケティングを支援していきます。

b8ta外観
ストアの天井にはAIカメラが設置され、来店者の行動動線をデータ化しています。

b8taが提供する価値

b8taはブランド・製品と来店客をつなぐ

1.ブランド・製品と来店客をつなぐ
魅力的な出店場所を月額のサブスクリプションで提供・支援。近日、オンラインストアもオープン予定です。

プラットフォームで手軽に出品

2.プラットフォームで手軽に出品
出品者はダッシュボードへのアクセスで、出品準備からデータ分析、販売まで一元管理が可能です。

販売を主目的にしない接客

3.販売を主目的にしない接客
b8taテスターの最大のミッションは来店者の「発見」サポート。快適な店舗体験により、出品者にとって有益な声を引き出します。

来店者の行動データを可視化

4.来店者の行動データ
天井に設置されたAIカメラ等により来店者の属性や行動データを可視化。蓄積されたデータは出品者に還元され、マーケティングや製品開発に活用できます。

2023.10.11