【ソリューションが創る可能性 VOL.3】 5Gビジネスの起爆剤となるか?IoA仮想テレポーテーション®

2020.03.31

IoA仮想テレポーテーション®

第5世代移動通信システム(5G)導入で遠隔ビジネスの動向が注視されるなか、IoA (Internet of Abilities)概念を根幹に据えたトッパン発の遠隔ビジネス「IoA仮想テレポーテーション®」に注目が集まっている。どのような技術が使われていて、誰がどのように活用できるのか。その事例解析から可能性を探ってみたい。

IoAで実現する遠隔ビジネスや遠隔教育の可能性とは?

IoAの概念を誰もが使えるツールに落とし込む

【人が創るソリューション Vol.4】コラム「“IoA存在の拡張”が実現する遠隔ビジネス IoA対談・暦本純一では、IoA (Internet of Abilities)の提唱者である東京大学大学院情報学環教授 暦本純一氏と、「IoA仮想テレポーテーション®を推進する凸版印刷情報コミュニケーション本部事業創発本部課長 名塚一郎、同SIC先端表現技術開発本部係長 荻野孝士の両名を加え、IoAについて、そして暦本教授とトッパンの共創について語っていただいた。

本コラムではその共創の成果として実地投入されつつあるトッパンソリューション「IoA仮想テレポーテーション®について、より深く探っていきたいと思う。

【人が創るソリューション Vol.4】コラム

ジャックイン

®」とは、高速大容量・低遅延化が進んだ5G通信と様々なデバイスを使うことで、離れた場所にあたかも居るかのように感じることのできる遠隔体験を提供するもの。暦本教授の提唱するIoA人間拡張の“存在の拡張”という分野を応用した技術である。
接続先からは自律稼働式分身ロボットやIoANeckTMなどのウェアラブルアタッチメントといったテレポートデバイス(下記左)を使用。

IoAネック™

伝送先ではVRディスプレイやVRヘッドマウント、VRルーム「Experience Wall IoA」など没入感を高めることのできるデバイスで受信することで“そこに存在している”感覚を「拡張」することができる技術となる。

※VRルーム「Experience Wall IoA」(下記画像)はトッパンが持つ「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」内のフューチャーギャラリーに設置されているもの。

TOPICSNIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI
「フューチャーギャラリー」

フューチャーギャラリー

「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」は日本の新たな価値を生み出す共創・発信スペースとして、東京・丸の内に、観光立国・地方創生の実現を推進、支援するためのスペースとして誕生しました。産官学の人々が集い、つながり、日本の文化・伝統を継承し、新しい観光コンテンツの価値を共に築きあげていくための空間です。
NIPPON GALLERY内「フューチャー ギャラリー」ではVRルーム「Experience Wall IoA」(上記画像)などを使った「未来の観光」をテーマとした企画展示を行っています。

ここまでが基本的な設計となるが、ここで大事なポイントと言えるのが、この技術をトッパンが現実化したことで“誰もが使える可能性のあるツール”に落とし込むことが可能となった点だ。

【人が創るソリューション Vol.4】コラム「“IoA存在の拡張”が実現する遠隔ビジネス IoA対談・暦本純一でも暦本教授はトッパンとの共創の意義について「トッパンというビジネス展開が可能な企業をパートナーとすることで研究成果をどう社会に役立てることができるかをより具体的に考えられると思ったのです。」と語っている。

実際にこの技術は広い意味での社会基盤に成り得る可能性を秘めている。とはいえそれは少し未来のお話。現時点で、そして直近のフェーズでこれを誰がどのようなシーンで活用することができるか?をここでは考えてみたい。

トッパンではすでにいくつかの実地投入を済ませ、そのデータを次の研究に反映させる動きを進めている。ここではそれら実証例、導入事例を改めて解析しつつ、実際に考えうるその先の想定需要を改めて見直してみたい。 

CASE①遠隔教育:避難先から「バーチャルふるさと遠足」(福島復興支援)

遠隔教育ふるさと遠足

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故により、帰宅困難区域に指定されている福島県双葉町の小学校高学年生に、現在の風景や復興に向けて働く人々とのコミュニケーションなど、故郷である双葉町の現状を知ってもらうために実施した事例。
ドコモ東北支社との共創で実現した事例で、ほとんど故郷の思い出のない小学生にふるさとである双葉町を教えてあげられないか、という相談があった中で実現したものだ。

実施内容は、ドローンでのふるさと空撮や復旧の進む双葉駅の見学、重機を使った除染作業体験、帰宅困難区域の現状を役場や作業者の方とのコミュニケーションなど。2018年度に実施した際、非常に高評価を受け、教育的観点からもとても意義があったとのことで2019年度も続けて実施。
2019年にはより存在の拡張面を深く掘り下げたハイタッチデバイスでの触感コミュニケーションも実施。遠隔校外学習の有用性やこの遠隔ビジネスの取り組みを広くアピールできるものとなった。

この事例により、校外学習という分野での遠隔技術の一つの可能性が明確になった。
折しも新型コロナウイルスにより長期の休校が実施されている現在(2020年3月執筆時)、教育現場への遠隔技術の応用の有用性は更に上がっていると言えよう。

この方向性でのさらなる想定需要としては、博物館や企業ミュージアムなどの遠隔社会見学や遠方の教育スペシャリストによる遠隔授業などが考えられる。
具体的には、企業ミュージアムや製造工場等のアセットを持つ企業では、自社プロモーションや社員教育への活用に、人口減少に悩む地方自治体では、地域人財確保と育成に役立つ。また、複数のアセットやスペシャリストが相互接続されることにより、新たなビジネスが生まれる可能性も考えられる。

CASE②遠隔観光:熊本みかん狩り体験(熊本県・福田農場)

遠隔観光みかん狩り体験

熊本県の「福田農場」(熊本県水俣市)とトッパンの地方創生・観光立国の共創拠点「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」を繋ぎ、東京・丸の内にいる観光客が遠隔で、福田農場のみかん狩り観光体験を実施した事例。

デジタルを応用した観光体験の想定需要を掘り起こす目的で着手。みかん狩りという遠隔体験と実際に農場で収穫されたみかんジュースの試飲といったリアル体験を組み合わせたことで、実際にそこを訪れたくなるような意欲の喚起や地域産品の商品購入動機の向上、身体的・時間的制約により遠方へ行くことが難しい人への擬似的な観光体験提供の効果検証を目的に実施した。

実際に収穫しながら農場のいる現地の方々にみかんの食べごろや食べ方などを質問しながらの遠隔体験は、そこに行きたくなるような観光への訴求に加え、みかんの知識を学習することによる商品購買にも繋がった。

この実例結果から今後の可能性を紐解くと、食だけではなく、日本の文化や自然の遠隔観光にも大きな可能性が見出せることとなった。例えば伝統工芸職人にその精緻な技や工夫を遠隔コミュニケーションの中でレクチャーしてもらい工芸品の購入まで含めた観光プランや、海岸沿いの絶景など、なかなか人が立ち入れないような場所のドローンでの遠隔観光体験など、様々なビジネス需要を掘り起こす結果となった。

CASE③ショッピング:サテライト店舗での遠隔購買

遠隔ショッピングにも想定需要があると仮定して実地投入した実証事例もいくつかある。

昨今、国家規模での大きな課題にもなっている地方の人口減少に伴い、そういった地域の百貨店や流通店舗が撤退しつつあることで生活基盤が脅かされている。地域生活者にとっては日常の買い物などでの移動距離が増え、特に高齢者は移動や重たい買い物袋を抱えて戻ってくることが負担になる。

店舗にとっても上客の割合が大きい高齢者とのパイプが細くなってしまうため、外商や移動店舗で繋がりと維持する必要があるのだが、これまでのやり方ではコストがかかりすぎて費用対効果が悪い。通信販売ではこれまでの来店と同様な要望には応えられない。ではどうするべきか、その回答の一つとしてこの遠隔ショッピングを導入した例を紹介する。

この事例の場合、実際の商品が陳列されている売り場には定点カメラやウェアラブルアタッチメントを装備した販売員を置き、実際に顧客が来店するサテライト店舗にサイネージやビジョンを使って投影し、それらを見ながら顧客はショッピングを楽しむという形が基本設計となる。

この商品が見たい、といった要望にも答えられるし、何か質問があれば実店舗の店員に語りかけてコミュニケーションを取ることできる。リアルな双方向コミュニケーションが可能な「IoA仮想テレポーテーション®ならではの特色が活かされる結果となった。

この他にも、通常の外商への活用法として顧客宅と売り場とを繋ぎ、よりリアルで具体的な販売方法への活用も検討されている。近い将来、徒歩で数分の町内に有名百貨店のサテライト店舗ができるかもしれない、それこそがIoAの考えるインフラ基盤の一端なのであろう。


人手不足や働き方改革の中、さらなる潜在的需要はどこにあるのか?

ここまで教育/観光/ショッピングと3つのカテゴリーでの事例を見て頂いたわけだが、これらはまだ実験レベルでの実証事例だ。もちろん実地で実際に使えるサービスとして構築されているものではあるが、まだ生まれたばかりの赤ん坊のようなもの。今後は技術改良からのサービスとしての使い勝手の改善はもちろん、さらなる想定需要の掘り起こしが必須となってくる。

今後どのような使い方が想定できるか、将来どんな使われ方がされるのか。現時点で「IoA仮想テレポーテーション®」が有しているであろう潜在的ニーズを名塚、荻野の両名に伺ってみた。

名塚・荻野

名塚「IoA仮想テレポーテーション®を使った遠隔ビジネスが潜在的に持ってる可能性でいうと、具体的に言えば「教育・育成」の分野で大きな需要が作り出せるのではないかと考えています。
例えば建設現場や工場などで熟練の技術者が遠隔で若手の技術者を指導・訓練する。特に保守・メンテナンスなどの技術や経験値は育成するのに時間とマンパワーが必要になります。その辺りを遠隔操作を使うことで作業レベルを下げることなく効率化に繋げることができます。

それに離島や過疎集落など、市街地から切り離された地域のインフラとしても活用が可能だと考えています。例えば医療分野での遠隔診療。このたびの新型コロナウイルスの時もオンライン診療を活用していた病院がいくつかありましたが、それらより視覚的にもコミュニケーション的にも多くの情報をやり取りでき、院内感染の不安もない遠隔診療は非常に「IoA仮想テレポーテーション®と相性が良いのではないか、と思っています。

荻野:そのほかにも、昨今の人手不足による働き方改革や、テレワーク・リモートワークにも大いに活用できると思っています。
また、これはショッピングの事例になるのですが、全国に散らばる直営店の販売員への商材ブリーフィングなどをはじめとした社員教育にも活用できるのではないかと考えています。さらには多くの自社店舗やECインフラなどを持つ企業にとっては、それらを相互接続することによるアセット利用ビジネスの創出なども考えられます。

それにやはり過疎化が叫ばれる地方自治体に対しては、買い物だけではなく様々な場面での活用を今後もご提案していければと思っていますね。名塚も言及している医療ももちろんですし、そういったことを全て包括した生活インフラの大きな柱になれるのではないかと思っています。必ず有用な使い道が創出できるはずです。

IoA仮想テレポーテーション®とは共創により発展する“インフラ”

IoA概念図

距離の壁を無くす「IoA仮想テレポーテーション®が現在の時点でどのように社会に役立てられるのか、を解析してきた。そして今後はどのように発展していくか、のヒントもうっすらとではあるが見えてきた。

IoAが社会的基盤を支えるインフラとなるには、一部の研究者や一企業だけで何かを成し得ることは非常に困難であろう。であれば企業同士が結びつくことで生まれる共創、さらには社会との共創が必須であるはずだ。
そうした動きこそが「IoA仮想テレポーテーション®という概念および技術体系が潜在的に有している需要を多方面で引き出し、かつ技術を広く発展させることに繋がるのではないだろうか。

現状、IoAの概念及び技術をサービス化した企業はトッパンをはじめとして数は少ない。
特に”存在の拡張”=「IoA仮想テレポーテーション®」はインフラとしての大きな可能性を秘めている。トッパンとの共創で新しい社会基盤を生み出すことを目指してみてはいかがだろうか。

暦本 純一(れきもと じゅんいち)

東京大学大学院情報学環
教授
理学博士

1961年東京都生まれ。1986年に東京工業大学大学院理工学研究科 情報科学科 修士課程を修了し、日本電気(NEC)に入社。現在は東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピューターサイエンス研究所副所長を務める。
インタラクション/ヒューマンオーグメンテーション研究の第一人者にしてIoAの提唱者。

 


 

 

名塚 一郎(なづか いちろう)

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部 事業創発本部
課長

凸版印刷山本

1999年凸版印刷株式会社入社。金融系WEBサイト、通販システム、ビッグデータ分析基盤など幅広いシステム開発のプロジェクトマネージャを経て、ICT戦略部門でAI・IoT・ブロックチェーンなどを活用したビジネス開発リーダーを担当。現在は、IoA/人間拡張やデジタルツイン、ゲノム編集などの最先端テクノロジーと地域活性化や観光などの社会課題解決を組み合わせた次世代事業の創出に取り組む。


 

 

荻野 孝士(おぎの たかし)

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 
先端表現技術開発本部 ビジネス開発部
係長

凸版印刷山本

2001年凸版印刷株式会社入社。ICT部門で得意先の業務システムの受託開発や凸版社内の製造ならびにセキュリティ系ネットワークインフラの構築および運用を担当。その後、IoAを用いた研究開発に従事。「IoA仮想テレポーテーション®」の研究開発、社会実装、事業化を担当。5Gに向けた遠隔体験を支援するウェラブルデバイス「IoANeckTM」や遠隔地と学校をつなぐIoA遠隔校外学習サービス「IoA学園TM」を2019年度リリースに携わる。


 

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