【人が創るソリューション VOL.8】 次世代小売り店舗 b8ta(ベータ)がつくるオフラインの価値

2021.01.25

b8taジャパン北川卓司

ベータ・ジャパン合同会社 CEO 北川 卓司 様 

2015年にシリコンバレーで創業し、現在、日本2店舗を含め世界で約20店舗を展開するスタートアップ企業「b8ta(ベータ)」。今後、デジタル化が一層進んでいく中で、オフラインの価値はどう変わっていくのか。b8ta日本法人代表の北川卓司氏にお話を伺いました。

「発見と体験」をお客さまに提供する、リテールの新しいかたち

企業が月々の出品料を支払う、サブスクリプション型の店舗

ー b8ta Japanと一般的な小売業の違いからお聞かせください。

弊社のミッションは、「リテールを通じて人々に新たな発見をもたらす」です。企業様から商品1点につき、1区画の出品料(月額30万円)をお支払いいただくことで、在庫管理から販売までを、すべて我々がお引き受けします。

企業様には、商品のご提供のほか、各商品の横に配置するタブレット用に商品説明データや画像などをアップロードいただき、弊社のスタッフ・トレーニング用に商品の詳細をまとめた資料をご用意いただくだけです。売上に対するマージンも発生しません。

弊社から企業様へは、店内のAIカメラで収集した、来店したお客さまのおおよその年代と性別、商品の前で5秒以上立ち止まったお客さまの数などの行動データ、スタッフがお客さまから直接伺った声などを、フィードバックさせていただいています。

ご来店いただいたお客さまに対しては、新しい商品との出会いと体験を提供し、代わりに、商品に対する反応や感想などを、データとして取得させていただいています。

お客さまに商品を体験いただくのが我々の一番の目的であり、販売を主目的にしていないという点で、一般的な小売店とは大きく異なります。

ー どのような商品が出品されていますか?

アメリカの店舗ではガジェットが多いのですが、日本では家電等は約半数で、ライフスタイルグッズやD2Cのコスメなど、さまざまな商品が並んでいます。

日本出店に際して、我々としては、お客さまに幅広い商品を体験していただきたかったので、商品の間口を広げることを意識しました。

というのも、例えばガジェットを見に来たお客さまが、偶然、そのとなりに置いてあった化粧品と出会って、むしろそちらに興味をひかれるなど、オフライン店舗ならではの“偶然の創出”こそが面白いと思ったからです。

2020年11月に大幅に商品が入れ替わりましたが、オープン時以上に、商品の幅は広がっています。公序良俗に反しない限り、どのような商品もウェルカムですが、一番親和性が高いのは、細やかな説明が必要な商品ではないかと感じています。

オンラインの場合、説明が書いてあっても、実際に商品を手にしながら試してみることはできません。b8taであれば、「b8taテスター」と呼ばれる店内スタッフが目の前でデモを行うこともでき、より具体的な説明を聞きながら、商品の良さを実感いただけます。

ー 出品企業様に特に好評な点は?

多くの企業様に好評いただいているのは、定性的なデータです。弊社が企業様に提供しているダッシュボードにチャット機能があり、b8taテスターは、お客さまから集めた声を随時チャットで企業様にお届けしています。例えば、商品を購入する理由・しない理由など伺っています。

あるアクセサリー商品の場合、なかなか購入に至らない理由を、企業様は「色」と「大きさ」と予想されていましたが、b8taテスターがお客さまに伺ったところ「重さ」がネックになっていたことがわかりました。

オンラインの場合、カートに入れたものの離脱した理由は、普通わかりません。アンケート欄を設けていたとしても、わざわざ自分で入力する方は少ないでしょう。

オフラインでも、普通の小売店であったら、購入する理由やしない理由はちょっと伺いづらいと思います。その点、最初から販売を主目的としていないb8taの場合、お客さまも、スタッフの問いかけに対して本音を話しやすいのではないかと感じています。

ー 出品企業様の成功事例にはどんなものがありますか?

我々のミッションは出品商品の売上を上げることではないので、何をもって成功とするかは、出品企業様によって異なります。

例えば、日本に初進出された、カロリー摂取量が測れる時計の場合、b8taに出品いただいた結果、商品ウェブサイトへのアクセスが20~30倍に上がったそうです。

また、抹茶を扱うD2Cブランドの場合は、20代の女性客が購入者の9割を占めていたのが、b8taに出店いただいたことで40代の男性客が増えたと伺っています。おそらく、ガジェットなどを見に来られた男性の方が、たまたま抹茶の商品と出会い、興味を持たれたのだと考えられます。

あるいは、アメリカから出品された、クラウドファンディングで資金を集めている発売前のある商品の場合、日本からの出資が全体の7割以上に達した例もありました。

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変わる、顧客体験


デジタル化が加速する社会において、「顧客体験」はどのように変わっていくのでしょうか?トッパンではリアルとデジタルを融合し、買い物体験や店頭ソリューションなどの新たなサービス展開のため、日々挑戦中です。これらの取り組み例とともに、変わりゆく顧客体験の今をご紹介します。

お客さまに、気軽に楽しく、幅広い商品を体験いただくために

ー オープンから約5カ月が経ちました。お客さまの傾向を教えてください。

コロナ禍でのオープンでしたが、予想以上に多くの方々にご来店いただいています。
私たちは有楽町店・新宿店ともに、ターゲット層を決めていませんが、予想として新宿は20代前半から30代半ばの女性層、有楽町は30代前半から40代後半の男性層が一番多いと考えていました。

ところが、実際には、両店舗とも、週末にカップルやファミリー層に多くご来店いただいています。そこはいい意味での誤算でしたね。メディアに多く取り上げていただいたおかげでもあると思います。店内にお客さまがいると、より入りやすくなるため、週末は人が人を呼ぶ形になっていると感じています。

ー 特に手応えを感じられた事例は?

たくさんありますが、例えばある飲料メーカー様が2020年1月に発売されたエスプレッソマシンのご出品ですね。
従来の機種とはテクノロジーがまったく異なる画期的な商品だったのですが、コロナが始まって百貨店などでお客さまに試していただく機会が激減してしまったそうです。

8月からb8taに出品いただき、ガジェットなどを見にいらしたお客さまに、1杯試飲いただきながらマシンのコンセプトをお話しさせていただいたところ、飲料メーカー様が今までリーチしづらかった、百貨店の顧客とまったく異なる層の方々にリーチできました。

弊社としても、お客さまに店舗内を回遊いただく時間が長くなり、得られるデータが増えました。

ー 発見と体験のために、特に大事にされていることをお聞かせください。

まずは、商品のラインアップですね。実は1店舗150点ほどの出品商品のうち、4割ほどは、私たちからぜひ出品していただきたいとオファーさせていただいた商品です。

b8ta Japanの全22名のスタッフが、興味を持った商品をいつでも投稿できる社内Slack(スラック)があり、そこに上がった商品に対しては、セールス担当が必ず声をかけさせていただいているのです。

そうすることで、普通の店舗にあまり並んでいない、オンラインだけで販売している面白い商品なども増え、来店者様に“発見”いただく機会がより増えると考えています。

また、商品の並べ方も、マーチャンダイズ専門のマネージャーが、お客さまがもっとも楽しく店内を回遊していただける並びを考えて、配置させていただいています。

ー あくまでも、お客さまに気軽に楽しく、幅広い商品を体験いただくため、ですね。

そうです。そのためにも我々は、販売が主目的ではないということを、広く公言し続け、スタッフにもその点をしっかり理解してもらうように努めてきました。実際、弊社のスタッフの評価基準の中に、商品を何個売ったという項目はないんです。

商品が売れるのは素晴らしいことですが、それよりも、お客さまにより多くの商品に興味を持っていただくこと、一人でも多くのお客さまに少しでも長く店内を回遊していただくことのほうが、より大切だからです。

そうすれば、実際に商品の前に立ち止まった方の数や、b8taテスターのデモを体験いただいた方の数など、お客さまから得られるデータは増えます。弊社にとっても、出品企業様にとっても、メリットが高まります。

オンライン販売が増えても、小売店は形を変えて残っていく

ー 出資企業の1つであるトッパンとは、今後どのような展開をお考えでしょうか。

トッパンさんには、ストアのオープンの際に、出品企業を募るオフラインイベントのサポートからご協力いただいています。

直接b8ta US に出資いただいていることもあり、将来的な方向性や新しい試みなどについて、相談させていただくことが多いですね。

例えば、店内の天井に設置しているAIカメラはトッパンさんにご協力いただいたものですが、今後、マスクをしていても年齢が正確にわかるカメラの実証実験を、他のスタートアップ企業さんとも協力して、開始する予定です。

ー 今年のご予定や、今後の展望などをお聞かせください。

日本への参入を決めたのはコロナの前で、その時点では大々的に店舗数を増やしていく予定でした。

現在、そこはなかなか難しい状況にあるので、まずは2店舗をしっかり運営していきたいと考えています。また、今年は、東京に限らずいろいろな場所でポップアップストアを開催し、テストマーケティング的な試みを行う予定です。

また、個人的には、地域の地場産業の商品や伝統工芸品などを扱えないかと考えています。

例えば、自治体にも入っていただき、今月は秋田県、翌月は千葉県とか……。
そうした展開ができたら、来場者の皆さんにさらに面白い発見と体験をしていただけるのではないかと考えています。

そして、現在、アメリカから日本に出品いただいている例はいろいろあるのですが、日本からアメリカというのは、まだありません。システムは国内と一緒なので、海外店舗にも出品しやすいですし、両方に出品して反応を比較いただくこともできます。

今後はそんな利用のされ方が増えていくのではないかと予想しています。

むしろ、オフラインでの体験価値が上がっていく

ー 世の中的にオンライン販売が増えていく中で、今後の小売業のあり方をどのように考えていらっしゃいますか?

今後、オンラインでの購買がますます増えていくのは間違いないと思っています。しかし、小売店がまったくなくなることはなく、形を変えて残っていくはずです。

例えばアパレルの場合、 駅の近くに試着ができてサイズを確認できるようなスペースがあり、 購入はいつでもオンラインでできるとか。そういった“体験”ができるスペースが少しずつ増えていくのではないでしょうか。

また、これだけオンラインのストアやブランドが増えてくると、誰かが明日ブランドを立ち上げて、例えば「いい香りのするおいしい水」の販売を始めたとしても、そのサイトを人々に見てもらえる確率は限りなく低いでしょう。

まして、商品に直接触れて、香りをかいでいただける機会を作るのはとても大変です。その点、弊社のようなオフラインの店舗に出店いただけば、手にとっていただける機会は確実に増えます。

オンライン販売が増えていく時代だからこそ、オフラインでの“体験”というものは、今後も減ることはなく、むしろ価値は上がっていくのではないかと考えています。

北川 卓司 様 (きたがわ たくじ)

ベータ・ジャパン合同会社 CEO
 
2004年に独立系PR会社に入社し、外資系のIRコンサルティング会社に転職。その後、学生時代から愛用していたカメラと写真のコミュニティーが縁で、ウェブマーケティング担当としてロモグラフィー入社。ロモジャパンCEO(最高経営責任者)を経て、仏EMLYON経営大学院でMBAを取得。15年、ダイソンにリテールマネージャーとして入社し、ダイソン世界初の旗艦店「Dyson Demo表参道」をオープンさせた。19年11月より現職。

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