2022.07.29
2015年9月に国連サミットで定められた「SDGs(持続可能な開発目標)」。
現在、2030年までの目標達成に向け、世界的に持続可能な地球環境に向けた課題意識が高まってきています。SDGsのことをなんとなく理解しており、取り組みの必要性もわかるけれど、実際にどのように取り組むべきなのか、わからないという方は多いのではないでしょうか。ただ取り組むだけでなく、ゴール達成につなげるためには施策を十分、検討することが重要です。
今回は、SDGsとは何か、17の目標の詳細や企業が取り組むべき課題、実践事例をご紹介します。
SDGsとは「エス・ディー・ジーズ」と読み、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったもので、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
2001年に国連サミットにて策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として、SDGsは2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されました。
SDGsは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であり、「17のゴール」と「169のターゲット」から構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国だけでなく、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものです。
SDGsには17の目標があり、その下に169のターゲット、231の指標が決められています。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
これらのゴールのうち、1~6は貧困やジェンダーなどの「社会」をテーマとしたもので、7~12までは雇用や格差問題の「経済」をテーマとしたもの、13~15までは気候変動や海洋資源などの「環境」をテーマとしたもの、16と17は平和の実現やパートナーシップ強化といったSDGs達成のために欠かせない取り組みが設定されています。
また169のターゲットは、各ゴールの下に定められています。
ゴールごとに10個前後のターゲットが定められ、ゴールを解決するための問題点を具体化して説明されています。
企業活動の中には、CSRという活動が従来からありました。SDGsとCSR、なんだか似ていると感じている方もいるでしょう。では、企業がSDGsを推進していくにあたって、これまでのCSR活動とどのように折り合いをつければいいのでしょうか。そもそもCSRとSDGsはどのような違いがあるのか、確認しておきましょう。
CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略であり、企業の社会的責任を意味します。企業は利益を追求するための事業推進にあたって様々な活動を行いますが、その活動自体が社会に悪影響を及ぼすものであれば歓迎されません。社会への影響についても責任を持って行動しなければなりません。
CSRは基本的に、企業が消費者・従業員・株主などから信頼を得るための社会貢献活動を指しています。一方で、今企業が推進しているSDGsへの取り組みは、多くの場合、事業を通してSDGs目標を達成することを目指しています。SDGsはCSRからさらに踏み込んで、ビジネスモデルに社会、ないしは地球貢献の考え方を組み込むことが求められているといえるのです。
SDGsに取り組むことで、おのずとCSR活動にもなるような計画と取り組みを行うことはできます。このことから、SDGsはCSRを包括した一段階大きい概念であるという解釈もできるでしょう。
企業が事業を通じてSDGsのゴール達成に取り組むことで、みなさんはどのようなメリットがあるとお考えですか? もちろん、さまざまなメリットが期待できますが、ここでは主なメリットをご紹介します。
・イノベーション創出
SDGsの課題を解決するという新しい視点で商品やサービスの開発に取り組むことは、企業にとって新しいビジネスの機会創出につながります。新技術の導入や、これまでかかわってこなかったパートナーの獲得、新領域への進出などが叶うため、企業のイノベーションにもつながるでしょう。
・ステークホルダーからの信頼獲得
SDGsに関する目標や経営方針を定め、ステークホルダーに対して報告して、経済価値と社会価値の双方の実現をめざすことで、信頼感を得ることができます。
・企業・ブランドイメージの向上
SDGsという国際目標に積極的に取り組む結果、生活者をとりまく地球環境や社会における暮らしやすさに寄与することにつながるため、周囲からは好意的な目で見られることになります。より自社の顧客である消費者の生活に寄り添うほど、好感度が高まり、企業・ブランドイメージの向上につながると考えられます。
「巻頭インタビュー」では、SDGsの意義や取り組みを考えるためのヒントを、「トッパンが取り組むSDGsビジネス」では、課題解決へのアプローチを具体的な実例に触れながらご紹介します。
ここまで、SDGsと企業の取り組みについて概念的なところをお伝えしてきましたが、「具体的にどう取り組めばいいのだろうか?」と疑問に思われたかもしれません。
そこで、企業や自治体がSDGsに取り組んでいる成功事例を3つご紹介します。
ある大手日用品・消費財メーカーは、手がける日やけ止めブランドについて、SDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」、ゴール14「海の豊かさを守ろう」、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」に向けて取り組みを進めています。
ハワイやパラオなどのビーチにおいて、特定の成分を含む日やけ止めの持ち込みや販売などを制限する動きがあることを受け、世界のどのビーチでも使用できるように環境に配慮した日やけ止めシリーズを販売しました。
その日やけ止め製品の外装には、FSC認証(※1)を取得した紙を採用し、プラスチック削減に貢献しています。容器の一部にはバイオマス素材を採用しました。前年度の商品プロモーションに使用した店頭販促物から出る紙資源をアップサイクル(※2)するなど、多様な取り組みを展開しています。
その他に、これらの取り組みに賛同する企業や団体、顧客と共に海をキレイにする活動などを実施するほか、商品の売り上げの一部を環境保全活動団体に寄付することも考えています。
食品流通業界においては、食品ロス削減による飢餓撲滅への貢献のために、「RFID(※3)」という電波を用いてタグのデータを非接触で読み書きするシステムなどのソリューション活用による食品ロス削減を実施しています。
トッパンは、RFIDタグやセンシングデバイスなどのIoTを活用して、eコマースを経由した食品流通に関する情報を追跡管理する実証実験に参画しました。
この実験では、食品が産地から卸やネットスーパーなどから、消費者が消費・廃棄するまでの一連のフードチェーンでの生鮮食品情報を、個別商品ごとに追跡管理し、鮮度情報を可視化しました。小売業者はその鮮度情報を基に、需要と供給によって価格を変動させる「ダイナミックプライシング」を実現しました。
SDGsのゴール11には「住み続けられるまちづくりを」があります。ある自治体では、「誰ひとり取り残さない」の精神のもと、スーパーサイエンスシティ構想を産学官の協働で推進しています。この取り組みの一環として、住民向けスマートシティアプリとして多言語ポータルアプリを開発し、一人ひとりに寄り添った情報提供を行っています。
このアプリは、発信利用者に属性や「防災」「子育て」といった関心のあるカテゴリを登録してもらうことによって、パーソナライズした情報を必要な情報を必要とする人に向け、プッシュ発信する機能を持ちます。また、自動翻訳により日・中・英・韓の4言語での利用に対応しており、災害などの緊急時でも即時に外国人に向けて情報発信が可能です。
また、データ連携基盤を介して、バス、タクシー、移動スーパーの位置などもリアルタイムに取得・表示する仕組みも実装しています。
アプリ自体が、住民それぞれの状況に合わせて適切なサービスに誘導するゲートウェイとなる設計で、ストレスなく多様なサービスを利用できるようにしており、情報格差をなくすことを目指しています。
SDGsは、2030年までに、持続可能でよりよい社会を目指す「17のゴール」を掲げた国際目標です。企業がSDGs目標を設定して取り組む事業は、持続可能な社会を作り出すことができるだけでなく、企業やブランドイメージの向上など大きなメリットが期待できます。
SDGs達成のためには、データ連携やデジタル技術の活用が必要不可欠と言っても過言ではありません。トッパンではSDGsに取り組む企業や自治体をサポートするサービスや技術を提供、開発しています。もし、SDGsへの取り組みを進める際に、お困りのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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