オフィス室内の天井や壁の装飾に使用できる意匠性付与が可能
電波の干渉や漏洩を低減し、5G/6G時代の安全安心な高速通信環境を実現

 凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、周波数28~300GHzのミリ波帯において、複数の電波を選択的に吸収する、軽量・薄膜のマルチバンド対応ミリ波吸収体(以下 本開発品)を開発しました。
 本開発品はメタサーフェス構造(※1)からなる軽量・薄膜のフレキシブル性のあるシートで、オフィス室内や工場建屋内の天井や壁の装飾に使用できる意匠性付与が可能です。第5世代移動通信システム(以下 5G)で使用する高周波数のミリ波帯において、選択的に複数を吸収することができ、無線通信機器からの電波の干渉や漏洩を低減し、高速・低遅延・多数同時接続を可能にします。5Gだけでなく、将来の第6世代移動通信システム(以下 6G)においても、安全安心な高速通信環境を実現します。
 なお、本開発品は2022年12月7日(水)から9日(金)に開催される「第13回フィルムテック ジャパン(高機能フィルム展)」(会場:幕張メッセ)の凸版印刷ブース(4ホール 30-60)に展示します。

ミリ波吸収体  © TOPPAN INC.
ミリ波吸収体
© TOPPAN INC.

開発の背景

 5Gではミリ波帯と呼ばれる28GHz帯や、追加割当候補周波数39GHz帯などの高周波数の電波を使用するため、大容量データの高速通信が可能となり、高精細な動画の配信など様々なデジタルサービスが拡大しています。しかし、ミリ波帯では、電波の干渉や漏洩、損失などが起きやすく、通信速度の低下や遅延などの通信品質の問題が顕在化してきています。現在、電波の干渉や漏洩を低減するために、複数の材料を用いる多層のものや磁性体などを原料にした電波吸収体が用いられています。しかし、室内空間との調和が取りづらい、厚みや重量により室内設置が難しいなどの課題があり、軽量・薄膜で意匠性のある電波吸収体の開発が期待されています。
 このような課題に対し、凸版印刷はこれまで培ってきた電波吸収体の設計技術と高精細なエッチング技術、コンバーティング技術を活用し、軽量・薄膜のマルチバンド対応ミリ波吸収体を開発しました。本開発品は、メタサーフェス構造を有するフレキシブル性のあるシートで、波長1~10mmのミリ波において、吸収する電波の周波数/帯域幅を自由に制御でき、一つの吸収体で複数の周波数帯を選択的に吸収することができます。また、表面加工が可能なため、木目調や大理石調など様々な意匠性を付与することができ、オフィス室内や工場建屋内の天井や壁を装飾することもできます。
 軽量・薄膜でフレキシブル性のある形状のため、様々な用途展開が可能となります。また将来的には、本開発品をテラヘルツ波向けの電波吸収体へ応用するための開発を進めていきます。電波の干渉や漏洩が低減され、5Gだけでなく、次世代の6Gにおいても、データ通信の超高速・超低遅延・多数同時接続を可能にし、安全安心な通信環境を実現します。

本開発品の特長

(1)メタサーフェス構造により、1枚のシートで複数の電波を、選択的に吸収可能
 メタサーフェス構造により、1枚のシートで複数の電波を、選択的に吸収することが可能となります。パターン形状により吸収する電波の「周波数」と「周波数帯域」を制御するため、メタサーフェス構造の微細化により、6Gで用いられるテラヘルツ波向けの電波吸収体にも応用できます。

ミリ波吸収体の構成イメージ図
ミリ波吸収性能のグラフ

ミリ波吸収体の構成イメージ図(左)とミリ波吸収性能のグラフ(右)
© TOPPAN INC.

(2)従来品と比べ、軽量・薄膜で、フレキシブル性が高い
開発品は従来品比べ約96%の軽量化を実現し、薄膜かつ、フレキシブル性を有します。

(3)木目調や大理石調などの意匠性を付与することが可能
ミリ波吸収体の表面に、木目や大理石などの意匠性を付与することができ、ミリ波を吸収する室内用壁紙として用いることができます。

意匠性を付与したミリ波吸収体を壁紙として使用した活用例 © TOPPAN INC.
意匠性を付与したミリ波吸収体を壁紙として使用した活用例
© TOPPAN INC.
一般的な壁紙を使用した室内(左)と意匠性を付与したミリ波吸収体を壁紙として使用した室内(右)での電波イメージ図 © TOPPAN INC.
一般的な壁紙を使用した室内(左)と意匠性を付与したミリ波吸収体を壁紙として使用した室内(右)での電波イメージ図
© TOPPAN INC.

(4)電波吸収率90%以上で、通信の高速化に寄与
 波長1~10mmで、周波数30~300GHzのミリ波において、反射電波の90%以上を吸収し、通信速度や遅延への影響を小さくできます。

今後の目標

 凸版印刷は今後、軽量・薄膜で意匠性のあるミリ波吸収体開発を推進し、反射板などの電波環境改善部材の開発とともに、電波環境に関する各種実証実験を通じて効果検証を行い、空間設計技術の開発を進めていきます。

「第13回フィルムテック ジャパン(高機能フィルム展)」について

名称: 第13回 フィルムテック ジャパン(高機能フィルム展)
会期: 12月7日(水)~9日(金) 10:00~18:00(最終日のみ17:00終了)
会場: 幕張メッセ (凸版印刷ブース:4ホール 30-60)
主催: RX Japan株式会社 (旧社名: リード エグジビション ジャパン)
展示会URL:www.material-expo.jp/film/

※1メタサーフェスとは、波長より小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種で、構造体の周期を二次元配置した人工表面

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以 上

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