聴覚・嗅覚など感覚への刺激をVR鑑賞と組み合わせ、没入感や臨場感を高めた
「右脳で感じる」企業向けオンライン研修プログラムを販売開始

 凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、ビジネスパーソン向けに文化財をテーマにしたVR鑑賞と寺社の住職や工芸師など「文化の継承者」と交流を行う、文化を深く学ぶリベラルアーツ(※1)研修プログラムを2021年1月より販売しています。このたび、オンライン研修用に、嗅覚などの感覚を刺激する要素を組合せた研修プログラムを開発しました。文化財の魅力を伝えるVRコンテンツに、嗅覚をはじめ、聴覚・視覚などの感覚を刺激する演出を加え、通常のオンライン視聴に比べ高い没入感・臨場感を得られるプログラムとなっています。早稲田大学河合隆史研究室との共同研究の結果、「没入感」や「臨場感」などの指標で有意な効果を示す結果が得られています。通常では論理性主導になりがちな研修において、伝統文化に対し深い理解と共感を醸成することにより、論理を越えた想像力・直観力・倫理観など、現代のビジネスに必要とされるスキルの獲得が可能です。2021年6月2日(水)よりコロナ禍の時代に合わせた企業向け研修として販売を開始します。

文化を深く学ぶオンライン・リベラルアーツ研修のイメージ ©Toppan Printing Co., Ltd.
文化を深く学ぶオンライン・リベラルアーツ研修のイメージ
©Toppan Printing Co., Ltd.

背景

 凸版印刷はこれまで、文化財の価値を精度高く伝えるVRシアターでのデジタル文化財コンテンツ上演と、現地での深い文化体験を組み合わせることによって、特別な観光や学びのあるオンラインでの文化研修を企業向けに提供してきました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、これまでは現地を訪れることで得ることができた文化体験が難しい状況になり、オンラインを活用した体験が多く取り入れられています。しかしオンライン研修には、パソコン等のモニターを通じて視聴するため、日常のビジネス空間や家庭空間との隔絶が難しく、実感や記憶に残る体験を感じにくいといった課題がありました。
 今回、早稲田大学河合隆史研究室と共同で行った研究結果をもとに、オンラインでありながら、嗅覚に加え聴覚・視覚などのさらなる感覚を刺激することで、まるで現地を訪れているかのように、コンテンツの世界に没入する体験を可能にするオンライン研修プログラムを開発しました。

サービスの特長

 今回開発したオンライン研修プログラムは、現代のビジネスに必要な想像力・直観力・倫理観について日本文化を通して体感し、内省することによって、ビジネスパーソンが学べるものとなっています。

① リアルとバーチャルを組み合わせた視覚の刺激で、現地の様子を深く伝える
 現地中継(リアル)とVR作品(バーチャル)を活用し、文化財の現在の姿と文化財創建当時の過去の様子を重ねて鑑賞することができます。これにより、通常では得られない情報で視覚を刺激し、さらに文化を守り伝える継承者との対話・交流を行う体感型のプログラムです。

② 嗅覚・聴覚を刺激し、没入感・臨場感を高める仕掛けの導入
 VRコンテンツの鑑賞において、参加者一人ひとりに事前送付した文化財現地ゆかりの香料などを使用し、嗅覚への刺激を取り入れます。また、ASMR(※2)を意図し、現場の環境音を活用した聴覚への刺激もあわせて、その場にいるかのような没入の感覚を高めます。

③ ビジネスと文化双方に精通したファシリテーターによる研修進行
 オンライン文化体験を通じた日常からの隔絶により、参加者自らが内省し、自分自身や周囲の環境を客観視する機会を提供します。また、ビジネス・文化双方に精通したファシリテーターの導きにより、発見や共感をオンライン上で共有し、組織全体の力にフィードバックします。

上記①、②の実証として、デジタルメディアにおける人間工学を専門とする早稲田大学河合隆史研究室と共同で「五感を刺激するオンラインVR演出手法の評価」(※3)と題した研究を行いました。VRを活用したコンテンツをオンラインで鑑賞し、並行して嗅覚や聴覚などの刺激を提示した参加者の心理反応・生体反応を分析することにより、「没入感」、「臨場感」などの指標で効果を示す有意な結果が得られています。

具体的な研修例

 2021年4月、トッパングループの定期大卒新入社員研修において、464名の新入社員を対象にこのプログラムを活用した「文化教養VR研修:VRで奈良・唐招提寺に学ぶ」を実施しました。豊かな日本文化に真摯に向き合い、そこから学ぶ姿勢を身に付けると共に、長きに渡り継承されている組織における「理念」について理解する研修を行いました。VR鑑賞のコーナーでは、事前に配布された唐招提寺ゆかりのお香(塗香)を活用するなど、感覚を刺激する様々な取り組みが活用されました。 

①企業理念の事前学習
①企業理念の事前学習
②お香(塗香)活用
②お香(塗香)活用
③境内の様子をライブ中継
③境内の様子をライブ中継
④VR作品の鑑賞
④VR作品の鑑賞
⑤僧侶によるライブ解説 (唐招提寺・石田執事長)
⑤僧侶によるライブ解説
(唐招提寺・石田執事長)
⑥参加者による発表と講評
⑥参加者による発表と講評

 実施後、全参加者を対象として行ったアンケート結果では、99.1%の参加者が研修内容に対して満足であったと回答し、98.2%が(主旨・内容について)理解できたと回答、また、98.0%が今後の業務に役立てられそうと回答しました。参加者の自由感想からは、

「1200年前の偉人や組織が抱いていた理念を、令和のこの時代に、それを受け継ぐ方々から直に聞くことができ、むしろリモートでしか成しえない経験だった」
「塗香を使って、呼吸に集中すると本当にお寺にいるかのように心が浄化されたような気持ちになりました」
「「社会に貢献するモノ・サービスを作りたい」という気持ちを改めて再確認する機会となった」
「文化を後世へ受け継ごうとする人々の信念を感じ取ることができた。人間の感情や自然の「調和」を大切にしつつ、日頃の活動に励まれている姿に感銘を受けた」

などの意見が見られました。

参考価格

 一式価格85万円~

今後の展開

 凸版印刷は今後、組織・人材開発事業を展開する株式会社セルム(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:加島 禎二)と連携し、両社で販売をおこないます。また、凸版印刷は、今後様々な寺社や文化遺産、美術品などの文化芸術をテーマにおき、聴覚・嗅覚などの五感にアクセスすることにより、VRを使用した疑似体験効果を強化した文化研修コンテンツのラインアップを強化するとともに、文化・教養の学びを提供する教育プログラムや、非日常の体験を提供する特別な観光プログラムの開発にも活用します。

株式会社セルムについて

 株式会社セルムは、1995年12月設立した各社固有の企業変革の実行を支援する組織・人材開発プロフェッショナルファームです。経営的な視点で本質的な課題を設定し、「人材・組織基盤の強化」と「優れたリーダーの輩出」の支援を行っています。
 セルム公式ホームページ:https://www.celm.co.jp/

※1 リベラルアーツ
 人文科学・社会科学・自然科学にまたがる現代の一般教養のことを指す。自由に、自分の考えや判断で自律的に生きていきながら、周囲の人たちとも前向きな関係を構築するために身に付けるべき必要な技術。幅広く学ぶことで、多角的な視点を養い、思考力・分析力・実行力を身につける学問領域。

※2 ASMRとは
 Autonomous Sensory Meridian Responseの略称で、五感に働きかけるような、心地の良い音に対する反応を指します。

※3 早稲田大学河合隆史研究室との共同研究「五感を刺激するオンラインVR演出手法の評価」
 凸版印刷と早稲田大学基幹理工学部河合隆史研究室は、2021年1月、自宅や職場からオンラインで参加した30例の鑑賞者の体験環境を想定し、心理的・生理的反応をリモートで測定する実験を実施しました。オンライン環境下において文化財VRの演出を、没入感のあるVR映像から得られる視覚からの刺激と、現地を感じさせる嗅覚の刺激や、リアルな環境音による聴覚の刺激、さらに現地いる説明者とのVRを活用した交流を組合せて提供し、鑑賞者の生理・心理的変化を取得し測定しました。その結果、「没入感」や「臨場感」の増進と同時に、コンテンツの演出に対応した心拍数反応の変化が認められました。この実験によって、オンライン環境下においても、VR鑑賞によって通常の日常から隔絶される体験となる可能性が示唆されました。研修効果の増進に寄与する可能性を鑑み、本研修で採用し、実施しています。


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以  上

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