共同研究の一環として縦4メートル、横17メートルの河鍋暁斎画「新富座妖怪引幕」高精細アーカイブデータを用いたコンテンツを制作。6月29日にロンドンで初公開

  • 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
  • 凸版印刷株式会社

 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(所在地:東京都新宿区、館長:岡室美奈子、以下 演劇博物館)と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、演劇博物館が所蔵する縦4メートル、横17メートルの河鍋暁斎(かわなべきょうさい)※1画「新富座妖怪引幕(しんとみざようかいひきまく 以下、妖怪引幕)」を高精細にデジタル化し、そのデータを用いて文化財利活用の共同研究としてデジタルコンテンツを制作しました。本コンテンツは、大英博物館(所在地:英国ロンドン)のマンガ展「Manga」※2に妖怪引幕が展示されていることに連動してジャパン・ハウス ロンドン(所在地:英国ロンドン)※3で開催されるシンポジウムにて公開されます。

河鍋暁斎画「新富座妖怪引幕」(早稲田大学演劇博物館所蔵)

  妖怪引幕は、幕末から明治時代の戯作者である仮名垣魯文(かながきろぶん)※4の依頼で河鍋暁斎が五代目尾上菊五郎や9代目市川団十郎など明治期に活躍した歌舞伎役者を妖怪に見立てて描いたもので、縦4メートル、横17メートルの巨大な作品です。この妖怪引幕を凸版印刷が独自の手法により、94億画素の高精細デジタルデータを取得。このデジタルデータを用いて、アニメーションとビュワー型コンテンツを制作しました。アニメーションでは、描かれた妖怪たちが動き出し、河鍋暁斎が描いた世界を表現します。また、ビュワー型コンテンツでは、拡大・縮小しながら妖怪引幕を細部にわたって鑑賞したり、妖怪に描かれた歌舞伎役者を写真や役者絵と比較したりするなどして、妖怪引幕の魅力をお楽しみいただけます。
 演劇博物館と凸版印刷は、今後も高精細アーカイブデータを活用したイベント開催など、文化財の利活用を進めていきます。

 

「妖怪引幕」コンテンツについて

・「妖怪引幕」を419分割して撮影し、94億画素の高精細デジタルアーカイブ

 「妖怪引幕」は縦4メートル、横17メートルの大きさの作品で、全体を広げて撮影することは困難です。今回、本引幕のデジタルアーカイブを行うにあたり、スタジオ内に特別なセットを設置。高精細デジタルカメラを用いて419分割して撮影し、巨大な作品を94億画素におよぶ高精細にデジタル化を行いました。

   スタジオいっぱいに広げられた妖怪引幕                                  高所に設置した高精細カメラでの撮影                

・アニメーションによる世界観の再現

 9代目市川團十郎と5代目尾上菊五郎を先頭に左右に向き合うように描かれている妖怪たちが、対決する様子をアニメーションで表現しています。最後に新富座内部を描いた浮世絵と組み合わせることで、引幕が使用されていた当時の様子を再現するシーンがあります。

・タブレット向けビュワー型コンテンツ

 高精細にアーカイブした「妖怪引幕」のデジタルデータをタブレットで操作しながら、拡大・縮小ができるほか、妖怪に描かれている歌舞伎俳優を特定し、その俳優の写真を比較してみることが出来るなど、デジタルならではの楽しみ方ができるコンテンツです。また展示状況に合わせて、実寸大の表示をすることも可能です。

河鍋暁斎筆「新富座妖怪引幕」について

 「新富座妖怪引幕」は、幕末から明治期の戯作者 仮名垣魯文が明治時代前期に東京を代表する劇場であった「新富座」に贈った引幕。明治13年(1880)6月30日に、魯文の友人である河鍋暁斎が、酒を楽しみながら4時間で書き上げたといわれています。当時の歌舞伎界を代表する9代目市川団十郎や5代目尾上菊五郎をはじめとする人気歌舞伎役者たちをモデルとした妖怪が、葛籠(つづら)からぞろぞろと飛び出して新富座の客席へと繰り出す趣向が描かれています。個性溢れる絵師暁斎の作品として、引幕が保存された稀有な例です。

※1 河鍋暁斎について
現在の茨城県古河市生まれ、江戸にて歌川国芳と狩野派に学ぶ。幕末から明治にかけて浮世絵師、日本画家として活躍、書画会での即興的制作から内国勧業博覧会出品「枯木寒鴉図」、大作「新富座妖怪引幕」まで幅広い作風で人気を博した。

※2大英博物館マンガ展
日本の漫画の歴史を原画とともに紹介する展覧会「マンガ展」が、イギリス・ロンドンの大英博物館にて2019年5月23日(木)から8月26日(月)まで開催中です。日本国外での漫画展としては世界最大規模といわれるこの展覧会に、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館が「河鍋暁斎画 新富座妖怪引幕」を出品しています。 この縦4m、横17mという巨大な引幕は、会場の壁一面に展示されており、来場者に強い印象を与えています。

※3 ジャパン・ハウス ロンドン
外務省が設置した日本を総合的に発信する海外拠点。ロンドンの目抜き通りケンジントンストリートに誕生。ギャラリーやシアター、セレクトショップ、レストラン、ライブラリーを備えた複合的な文化・商業施設として、日本文化を身体で感じ、消費欲求を喚起させる活動を展開。空間設計はインテリアデザイナーの片山正通氏。

※4仮名垣魯文について
江戸京橋に生まれ、幕末から明治にかけて戯作者・新聞記者として活躍、明治の世相、風俗を描いた「西洋道中膝栗毛」「安愚楽鍋」で人気を博し後にジャーナリズムの路へ進み「仮名読新聞」「いろは新聞」を創刊。明治13年、挿絵依頼などで親交のあった河鍋暁斎に制作を依頼し新富座に引幕を贈る。
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以  上

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