~本田技術研究所の協力の下、自動車ドアのクレイモデルで実証、CADへの適用にも耐え得る高精度計測を実現~

 凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、デジタルカメラで撮影した画像から三次元形状モデルを自動生成できる画像処理技術を開発しています。
 このたび、本技術の有効性を検証するため、株式会社本田技術研究所(本社:埼玉県和光市、代表取締役社長:松本宜之、以下 本田技術研究所)の協力のもと、自動車デザインの製作プロセスにおける性能評価実験を実施。その結果、CADへの適用にも耐え得る高精度なモデル生成に成功しました。

 本性能評価実験は2016年6月から実施したもので、具体的には、本田技術研究所が製作したドアのクレイモデルに対し、凸版印刷が本技術を適用して三次元形状モデルを作成。本田技術研究所にてその三次元形状モデルの表面平滑化処理を行った上で工業用三次元測定機の測定結果との比較評価を行ったところ、A4サイズにて、誤差0.08mmという、高精度なモデル生成を実現しました。
 これにより、従来は高価な専用機器でしか実施できなかった、製造デザイン工程における三次元形状計測が、本技術を用いることによって、民生品のデジタルカメラでも手軽に実施可能であることが確認され、業務の大幅な改善が期待されます。

計測した自動車ドアのクレイモデル(左)と、今回生成した三次元形状モデル(右)
計測した自動車ドアのクレイモデル(左)と、今回生成した三次元形状モデル(右)
© Honda R&D Co., Ltd. / Toppan Printing Co., Ltd.

開発の背景

 コンピュータグラフィックスやCAD技術の普及に伴い、実世界を再現したデジタルコンテンツの開発が本格化しています。特に、正確な三次元形状を簡便に取得したいニーズが拡がりを見せています。
 従来、表面形状をデジタル化する手段としては、レーザーレンジスキャナや光学式三次元計測定器などの専用装置が多く活用されています。しかし、これらの専用装置は計測精度が高い反面、装置が高価で利用時の準備負荷もかかるため、手軽に測定しにくいといった課題がありました。
 この課題を解決するため、凸版印刷は民生品のデジタルカメラで撮影した画像のみを用いて、対象物の立体的な形状モデルを全自動で生成できる技術を開発しました。 

本画像処理技術について

 本技術は、国立大学法人東北大学大学院情報科学研究科 青木孝文研究室(所在地:宮城県仙台市、以下、東北大学)が開発した位相限定相関法(※1)に基づき、凸版印刷と東北大学で2014年に共同開発した多視点ステレオ技術(※2)であり、高精度な三次元形状モデル生成が可能です。
 凸版印刷は、今回、さらなる高精度化を実現するため、ワークフローの中で、対象物に合わせて対応点を最適化する対応点推定技術と、複数視点から推定された対応点を統合する技術の改良を行いました。また、本技術を用い、材質や大きさ、形状の異なるさまざまな対象物を撮影し、三次元形状モデルの生成実験を繰り返すことにより、生成アルゴリズムを改良。より高精度な形状モデルの生成を実現しました。

※1 東北大学大学院情報科学研究科青木研究室で開発された画像の位相情報に基づく高精度な画像照合手法。位置合わせ精度とロバスト性に優れ、1画素以下の精度で対応点推定が可能です。
※2 異なる視点から撮影された複数枚の画像を用いて物体の三次元形状モデルを生成する技術であり、従来の二枚の画像から形状モデル生成を実施するステレオ技術と比較して、高精度な形状モデル生成が可能です。
参考:http://www.toppan.co.jp/news/2014/06/newsrelease140618_2.html

今回実現した三次元形状モデルの精度について

 今回の結果を工業用三次元計測機の測定結果と比較したところ、誤差マップにおいて、誤差が概ね±0.03mm以下である緑色の領域が多く、高精度であることが確認できました。また、モデリング分野で滑らかさを確認するために一般的に使用されているゼブラパターンを投影した結果では、滑らかさを示す明確な縞模様が表示されたことから、簡易的モデリングに十分な形状であることが明らかになりました。

平滑化処理後の誤差マップ
平滑化処理後の誤差マップ
ゼブラパターンの投影図
ゼブラパターンの投影図

© Honda R&D Co., Ltd. / Toppan Printing Co., Ltd.

今回の三次元モデル生成の詳細

撮影対象   :A4サイズ範囲
使用カメラ  :民生品のコンパクトデジタルカメラ
        2020万画素、焦点距離35mm(35mm換算)
撮影距離   :約60㎝
画像枚数   :9枚
スピーカー部分:誤差 0.08㎜(RMSE※)
        処理時間 約30分

※RMSE:二乗平均平方根誤差。真値と計測値の差を二乗した値の平均値。

今後の目標

 凸版印刷は今後、本技術のさらなる精度向上を目指すとともに、形状モデル化可能な対象の拡大を図り、自動車を中心とする製品デザインを行う業界向けの三次元計測システムとして、2017年度中のサービス開始を目指し、開発を進めていきます。 

* 本ニュースリリースに記載された会社名および商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
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