~「熊本城等被災文化財の復旧・復興支援に関する連携協定」を締結、VR・デジタルアーカイブを活用した被災文化財や地域へ寄与する研究・開発を推進~

  熊本大学大学院先端科学研究部(所在地:熊本市中央区、研究部長:宇佐川 毅、以下 熊本大学)と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、2016年4月に発生した熊本地震により被災した熊本城をはじめとした被災文化財の復旧支援に関する取り組みにおいて、2017年5月1日に連携協定を締結しました。熊本大学と凸版印刷は、本協定の締結により、崩落した石垣の復旧支援のほか、熊本城内の被災状況・復旧過程をデジタルアーカイブし、VR技術を用いて効果的に公開するための手法開発を共同で実施します。
 まず第一弾として、熊本城石垣の復旧に向け、熊本大学がコンピュータビジョン技術を用いて開発した「石垣照合システム」と、凸版印刷が所有する被災前の熊本城の櫓や石垣など約4万点のデジタルアーカイブデータを融合。崩落した石材の元の位置を推定し、復旧現場における作業の効率化を目指します。

デジタルアーカイブデータと石垣照合システムによるワークフロー概念図
デジタルアーカイブデータと石垣照合システムによるワークフロー概念図
© Kumamoto University, Toppan Printing Co., Ltd.

連携協定締結の背景

 2016年に発生した熊本地震により、熊本城は重要文化財建造物の倒壊や石垣崩落など、甚大な被害に見舞われました。2016年末に熊本市が発表した熊本城復旧基本方針によると、熊本城が地震前の姿を取り戻すまでには約20年を要するとされています。
 国の特別史跡に指定される熊本城の復旧に際しては、文化財的価値を損なわないよう丁寧な調査や計画が必要です。また、被災経験を語り継ぐとともに、重要なシンボルであり観光拠点でもある熊本城の復旧過程を段階的に公開し、熊本市民の復興への実感や、学習・研究および観光資源として早期に活用するなど、さまざまな取り組みが求められています。
 熊本大学は、早期の熊本復興に貢献することを目的に、これまで集積してきた教育研究資源を活用し、2016年6月に「熊本復興支援プロジェクト」を発足。震災復興デザインプロジェクトや、熊本城を含む被災文化財の復旧・活用支援プロジェクトなど7つのプロジェクトチームを結成し地域や自治体のニーズに対応するとともに、国や県外自治体など産官学の総力を結集し、熊本復興の早期実現に向けた活動を行っています。
 凸版印刷は、2011年に当社が専門性の高い地元企業群と共にPFI事業として開設した熊本城の歴史文化体験施設「城彩苑 湧々座」の運営に携わるとともに、同施設で公開するVR作品『熊本城』を制作。制作の際には、櫓や石垣など4万点以上におよぶ記録撮影を行いました。また2016年6月には、凸版印刷が東京国立博物館と共同運営する「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」において、VR作品『熊本城』のチャリティ上演を実施しました。
 今回、熊本城など被災文化財の復旧・活用支援に取り組む熊本大学と、デジタルアーカイブやVR技術を通じ文化財の保存や公開手法の開発を推進する凸版印刷は、熊本地震からの復旧を支援する仕組みの研究・開発を通じて地域の復興に寄与することを目的とし、連携協定を締結しました。 

「熊本城等被災文化財の復旧・復興支援に関する連携協定」について

 熊本大学と凸版印刷は本協定を通じ、崩落した石材がどの位置にあったかを推定する仕組みの実用化による石垣復旧支援や、長期間におよび立ち入りが規制される熊本城内の様子や復旧過程をデジタルアーカイブし、VR技術を用いて効果的に公開するため手法開発を行います。 

(1) 崩落した石材がどの位置にあったかを推定する仕組みの開発と実用化

 熊本城の石垣は全体の約3割に崩落や膨らみ・緩みなど、修復を要する被害を受けました。その石垣を元の姿に復旧するためには、崩落した数万個におよぶ石材が、元々どの位置に積まれていたかを推定する必要があります。
 熊本大学が画像解析技術を応用して開発した「石垣照合システム」と、凸版印刷が保有する被災前の熊本城アーカイブデータおよび画像加工技術を活用し、石材の元の位置を推定。石垣復旧現場における作業を効率化するためのワークフローの実用化を目指します。 

(2) 立ち入れない熊本城の変遷を記録し、VR技術で伝える手法の開発

 熊本大学が中心となり、被災直後の熊本城および復旧過程を記録した写真や映像、測量成果などのデジタルデータの集積・公開を推進します。また、凸版印刷が持つ広域空間のアーカイブ手法やVR技術などのノウハウを活用し、立ち入れない熊本城内の様子を可視化し、復旧過程を観光資源として活用するための効果的な公開手法を開発します。 

今後の目標

 熊本大学と凸版印刷は今後、本協定における成果を積極的に発信していくとともに、研究・開発を踏まえ有事に備えた文化財のデジタルアーカイブのあり方を提案。アーカイブデータを用いた文化財復旧や、地域復興支援に貢献していきます。
 

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