2015/07/07

凸版印刷、重要文化財「両界大曼荼羅」の想定色再生版を制作
~デジタル技術と伝統技能を調和融合させ、往時の色彩を再現した再生版曼荼羅を奉納~

 凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下凸版印刷)は、高野山真言宗 総本山金剛峯寺(以下、金剛峯寺)と合意し、共同の文化継承事業として、金剛峯寺所蔵の国の重要文化財「両界大曼荼羅(通称:血曼荼羅「平清盛奉納」)」の復元再生プロジェクトを立ち上げ、活動を展開しています。凸版印刷が持つ、デジタルアーカイブやカラーマネジメントなど各種の技術を活用し、赤外線撮影や資料、文献などによる補足調査分析、専門家の監修をいただきながら、曼荼羅の復元再生事業に取り組んできました。

 

 このたび、このプロジェクトで得た様々なデータと再生された図像データを基に、最終成果となる、往時の線描、色彩を復元した「想定色平成再生版曼荼羅図」2種類(2幅1対 計4枚)を制作いたしました。この曼荼羅は、凸版印刷が培ったデジタル技術と、伝統的技能を有する表具師、絵佛師などの技が調和融合させて制作されたものです。

 高野山開創1200年記念である本年、2015年7月3日に、高野山 伽藍 金堂において奉納が行われました。

 

  今後も凸版印刷は、培ったデジタル技術を有効に活用し、様々な分野で貴重な文化財や美術工芸品、文書資料などの保護、保存や復元などの文化継承事業を支援していきます。

■背景
 金剛峯寺所蔵の重要文化財「両界大曼荼羅」は、真言密教宗祖 弘法大師空海が、密教第七祖の中国長安・青龍寺 恵果阿闍梨より密教を伝法され、正式な継承阿闍梨として付与され、大同元年(806年)にわが国に伝来された根本曼荼羅の系統にあるもので、現存する最古の彩色曼荼羅図です。
保元元年(1156年)に、平清盛により制作、奉納されたこの「両界大曼荼羅」は、長年の奉祀法会にともなう痛みや、描かれている諸仏尊や紋様などの線描彩色に経年劣化が生じていました。これまで幾度かの修復がなされてきましたが、それでも経年劣化が進み、この状態を鑑みて、「両界大曼荼羅」の保護、保存、後世への継承を目的に、復元再生への機運が高まりました。
これを受け、金剛峯寺と凸版印刷の合意のもと、文化継承事業として復元再生プロジェクトが、高野山開創1200年記念となる2015年の完成を目標に、計画され組織化されました。そして、幾度かの事業計画の調整とともに体制整備を行い、2007年度後半より本格的にプロジェクト事業を開始しました。

■「両界大曼荼羅図」復元再生プロジェクトの取り組み
・同プロジェクトでは、「両界大曼荼羅図」の現在の状態を保存するため、凸版印刷の持つカラーマネジメント技術を活用した高精細画像データを制作し、デジタルアーカイブ化しました。
このデータを活用し、高品質のデジタルプリント技術と軸装技能を融合させ、現存する曼荼羅図の状態での「等寸大複製版血曼荼羅」を制作し、総本山金剛峯寺へ2008年7月に奉納しました。

・さらに、この高精細デジタルアーカイブ画像を基に「両界大曼荼羅図」の当時の状態に復元、再生をする取り組み進めました。赤外線撮影や軟X線撮影などの補足調査を実施しデータ分析を行うとともに、各種文献などによる資料調査、各種仏画や根本曼荼羅としては最古となる国宝「高雄曼荼羅」などとの比較調査を合わせて行いました。不鮮明となっていた、諸仏尊や地紋様などの線描や、彩色などを解明する作業を修正、確認を繰り返しながら推進してきました。

最終的には調査分析データなどを基に、デジタル上で一尊毎に仏画を作成し、描かれている諸仏尊、1895尊と各紋様などをすべて描き、制作されました。また、仏画表現、効果技法など仏画の表現技法についても可能な限り再現しています。


・2012年3月には「想定色平成再生版曼荼羅図」のデジタルデータが完成。このデータを活用し、「等寸大複製版血曼荼羅」の制作同様に、高品質デジタルプリント技術と、伝統的技能を有する表具師、絵佛師などの協力を得てデジタル技術と伝統技能、それぞれの担当者の感性、曼荼羅への想いを調和融合させ、2種類(2幅1対を2種、計4枚)の「想定色平成再生版曼荼羅」が2015年3月に完成しました。
■復元した想定色平成再生版曼荼羅図 詳細
1)想定色平成再生版曼荼羅図 甲本 胎蔵部(等寸大)および、金剛界(等寸大) 
・図像部: インクジェット デジタルファインアートプリント(プリマグラフィ※)を使用、図像出力100%。
顔料による11色、変則15分割での出力
・図像素材: 楮二層(和紙)
・図像寸法: 縦)約4300 mm × 横)約4010 mm
・加工: 15分割図像を1枚に接合し本格軸装仕上 (原本と同等の軸装)

2)想定色平成再生版曼荼羅図 乙本 胎蔵部(縮小版)および、金剛界(縮小版) 
・図像部: インクジェット デジタルファインアートプリント(プリマグラフィ※)を使用、図像出力50%。
顔料による11色、変則2分割での出力。図像の残り50%は、仏画師による手描と金泥仕上
・図像素材: 楮二層(和紙)
・図像寸法: 縦)約1980 mm × 横)約1860 mm
・加工: 2分割図像を1枚に接合し本格軸装仕上

※)「プリマグラフィ」:凸版印刷の登録商標で、ジクレー版画技法とトッパンカラーマネージメント技術を融合させた、高品位なデジタルアートプリントの総称です。

 

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以上

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