2013/03/21

凸版印刷、電子出版コンテンツを読みやすくする
日本語オリジナル新書体の開発に着手
 凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下凸版印刷)は、凸版印刷のオリジナル書体である『凸版明朝体』および『凸版ゴシック体』をもとに、電子出版コンテンツを読みやすくする新書体の開発に着手、試作を行いました。まずは本文用明朝体について、2013年夏ごろのサンプル出荷を目指します。
07.画像1
新書体の試作フォント
© Toppan Printing Co., Ltd.

■ 凸版印刷のオリジナル書体について
 凸版印刷のオリジナル書体は、1956年に活版印刷用として設計され、文芸作品をはじめとする数多くの書籍で用いられ、エンターテインメントの一部として、それぞれの作品を支えてきました。
 書体デザインは、現代のデジタルフォントにも多大な影響を及ぼした「築地体(※1)」を源流としています。平明単純で誰にでも書けそうな書体を理想とし、それ以前の書体に見られた筆の運びとは一線を画す、ペンで書いたようなモダンなデザインが特長でした。この特長により、読者を現実から作品の世界へと自然に誘う書体として、出版社や読者から高い評価を得てきました。
 そして、1969年には日本におけるコンピュータ組版への転換に合わせ、他社に先駆けてCTS(※2)用のデジタルフォント(ビットマップフォント(※3))へ移行しました。また1990年には、コンピュータの高性能化を背景とした品質向上のためにアウトラインフォント(※4)化し、さらに2005年にはDTP(※5)の普及に伴う汎用フォント化(OpenType(※6))を行うなど、時代の変遷による市場のニーズにも最適な形で応えてきました。


新書体について
 近年、高精細なディスプレイを持つスマートフォンやタブレット端末の普及、およびネットワーク環境の高速化などを背景としたデジタルネットワーク社会の進展に伴って、電子端末で文字を読む機会が増えています。
 凸版印刷は、急速に進む電子化の中で、あらためて読みやすさについて考え、これからの情報コミュニケーションを支える情報流通基盤の進展を目的として、新書体の開発に着手し、読みやすく、作品のイメージが読者の記憶に残りやすい文字の開発に取り組んでいきます。

(1) 本文用の新しい明朝体
 ペンで書いたようなキレのある仮名など、『凸版明朝体』の特長を最大限に引き出し、電子出版コンテンツの読みやすさを考えて設計された書体です。
 従来の印刷用書体は、印刷工程による文字の太り(つぶれ)などを想定して、細身に設計されていました。電子端末での表示では、このような文字の太りがないことを考慮して文字の線の太さをデザインし直します。また、日本語の長文を縦組で表現した場合に最大の読み心地が得られるよう、デザインを改良します。

(2) 本文用の新しいゴシック体
 『凸版ゴシック体』の特長を最大限に引き出し、電子出版コンテンツの読みやすさを考えて設計された書体です。
 近年、インターネットの普及や製品・サービスにおけるグローバル化によって、日本語文章での横文字の増加や、あるいは文章を横組で組む機会が増えています。このような点を考慮し、長文を横組で表現した場合に最大の読み心地が得られるようにデザインを改良します。
 これまでのゴシック体のデザインで多く見られた文字の上下のラインをそろえるデザインではなく、文字が持つ固有の大きさや形を尊重し、文章に自然な抑揚を持たせることによりリズム感があり心地よく読み進められるデザインを実現します。

(3) 見出し用の文字
 見出し用の明朝体およびゴシック体は、活字の伝統を引き継ぎ、力強い筆勢を感じさせる見出し文字を復刻させるべく、見出し用として使われていた「36ポイント活字」をもとにして新たにデザインします。

(4) 欧文の文字
 欧文は、これまでの凸版書体として使われていたものをもとにせず、電子媒体上で和文と欧文の違いが見えるような、さらに文章中で存在感があるような欧文として新たにデザインします。
 特に、ゴシック用の欧文は既成概念にとらわれず、サンセリフ(※7)ではなくスラブセリフ(※8)系の書体を設計し、力強い線画でリズム感のある和文のイメージにマッチさせます。

 

■ 今後の目標
 凸版印刷は、オリジナル書体の開発を推進し、2016年春までに本文用の新しい明朝体やゴシック体、見出し用の文字など、計5書体の提供開始を目指します。
 さらに、電子出版コンテンツにとどまらず、デジタルコンテンツ全般において、より多くの読者に読みやすく、作品のイメージを受け取りやすい環境を提供するため、さまざまなサービスに凸版印刷オリジナル書体を投入していきます。

■ 新書体の試作フォントに対する識者のコメント
ブックデザイナー 祖父江慎氏
 試作フォントにおける明朝はタテ、ゴシックはヨコという考えは特徴が明快で素晴らしい。明朝は感じが良いところに落ち着いた。少し綺麗になりすぎた感じはあるが読みやすい。ゴシックはとかく整理されやすく、現代の書体はどれも似たようなものであるのに対して試作ゴシックは書道的な風合いのある少し崩れたゴシックで良い。このまま突き詰めてほしい。
 また、画面の小さいデジタルデバイスでは、和文と欧文の差が見えた方が読みやすいと思う。今回の欧文はあえて和文にそろえすぎておらず未来的で大賛成である。

書体デザイナー・書体史研究家 小宮山博史氏
 試作フォントは、随分トッパンらしい特徴が出ており全体的に落ち着いた感じになっていて良いと思う。人が文字を読むというのは機械的ではなく息づかいのある書体でないといけない。読む側はかなり保守的であり、いままでをベストだと思うところがあるが、試作フォントはそこまで変わっていないので移行はスムースにいくだろう。
書体という文化性を考えると、書体は時代にあった手直しをその都度行うべきだと思う。是非、書体の文化性的な面も考慮してほしい。

 


※1 築地体
 明治時代の東京築地活版製造所(印刷・活字製造業)の明朝体活字で、日本の明朝体活字の源流のひとつ。
※2 CTS
 Computerized Typesetting Systemの略。電算写植(電算植字)システムで、コンピュータを使用した組版システムのこと。
※3 ビットマップフォント
 文字の形をコンピュータ上で表現するためのデータ形式の一つ。文字を小さな正方形の点(ドット)の集合として表し、ある決まった数の格子(例えば縦32個×横32個)ですべての文字の形状を表現する。高速に処理することができるため、初期のコンピュータやプリンタはほとんどがビットマップフォントを使っていた。
※4 アウトラインフォント
 文字の形をコンピュータ上で表現するためのデータ形式の一つ。文字の形状を、基準となる点の座標と輪郭線の集まりとして表現する形式。表示・印刷時に曲線の方程式を計算して、描画する点の配置を決定するため、拡大や縮小、変形をいくらおこなっても決して文字の形が崩れないのが特長。
※5 DTP
 Desktop publishingの略。出版物の原稿作成や編集、デザイン、レイアウトなどの作業をコンピュータで行い、データを印刷所に持ち込んで出版すること。文章や写真、図版などを組み合わせ、出版物のページ原稿を作成するソフトウェアを〈DTPソフト〉と言う。
※6 OpenType
 Adobe Systems社とMicrosoft社が共同開発したフォントファイル形式の一つ。OpenTypeは異なるプラットフォーム間でのフォントの互換性(マルチプラットフォーム環境)を備えており、OSや機種の違いを問わず同様の出力が得られる。
※7 サンセリフ
 セリフのない書体の総称。セリフとは、文字の線の端につけられる線・飾りで、「うろこ」、「ひげ飾り」、「ひげ」とも呼ばれる。
※8 スラブセリフ
 縦線と横線の太さは同じかほぼ同じであり、セリフが直線でありなおかつストロークと同じ太さである書体。

 

 

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以上

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