備える編

第8章 避難所生活で気をつけたい健康管理

1. 感染症を防ごう

 ひとつの空間に多くの人が集まる避難所生活では、風邪やインフルエンザ、胃腸炎といった感染症が広がりやすくなります。感染症にかからないためには、衛生管理を怠らないことが大切です。
 
 水が使える場合は、こまめに手洗い・うがいを行います。断水している場合は、手指用アルコール消毒剤やウェットティッシュを使ってください。
 
 片付けなどの作業時や体調が悪い場合はマスクを着用しましょう。特に作業の後は、避難所に感染源となるものを持ち込まないために、作業靴についた泥は流し、汚れた衣服は着替えるようにします。
 
 また、脱水症状や尿路感染、エコノミークラス症候群などを防ぐため、意識的に水分補給を行ってください。くみ置きした水はできるだけ当日給水したもの、井戸水の場合は一度沸かしたものを使いましょう。

  • 手洗いは感染予防の基本となる

2. 熱中症・低体温症に注意

 気温や湿度が高い、風が弱い、急に暑くなった日は熱中症の危険性が高まるため、できるだけ涼しい場所で過ごしましょう。日焼けをすると身体を冷やしたり水分を保持したりする機能が低下してしまうため、屋外で作業をする場合は帽子をかぶる、SPF15以上の日焼け止めを塗るなどの対策をしてください。1時間あたり500〜1000mlの水分、1000mlあたり梅干し1、2個分の塩分を摂ることも忘れずに。
 
 一方、寒冷地や冬場の場合は低体温症に注意する必要があります。低体温症は熱が産生できなくなったり熱が奪われたりすることによって起こり、少しずつ状態が悪化するという特徴があります。手足が冷たくなって震えが出た場合は、床に敷物を重ね、毛布にくるまるなど保温を行いましょう。

  • 避難者は水分摂取量が少なくなりがちなので注意

3. エコノミークラス症候群とは

  • 弾性ストッキングは下肢静脈瘤の治療などにも使われている

 食事や水分を十分に摂取できていない状態で、長時間同じ姿勢でいることによって、血行が悪くなり血液が固まりやすくなります。こうしてできた血の塊(血栓)が肺などへ飛び、胸が痛くなったり呼吸困難を引き起こしたりする病気をエコノミークラス症候群といいます。

 エコノミークラス症候群は、飛行機で起こりやすいことが知られていますが、やむを得ず車で寝起きしている場合にも注意が必要です。

 1〜2時間ごとに屈伸運動や散歩などで身体を動かし、十分に水分を摂るように意識しましょう。また、できるだけゆったりとした服を着ることも有効です。血行を良くする弾性ストッキングを履くのも予防になります。

4. 心身のバランスを保つために

 大きな災害が心身にもたらす影響は計り知れません。程度の差はあったとしても、誰もが不安や悲しみなどのストレスにさらされるため、食欲不振や不眠などの症状が現れることがあります。大部分の心身症状は、身近な人の援助や自身の行動によって1ヶ月以内に回復しますが、心の傷が長引き外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われるケースも見られます。
 
 食事や睡眠など日常生活のリズムをなるべく崩さない、避難中の飲酒は避ける、人と人とのつながりを大切にする、信頼できる人に話を聞いてもらうといったストレス対策を行いましょう。イライラが強いときには「6秒かけて大きく吐き、6秒かけて軽く吸う」呼吸法を朝晩5分ずつ行うのもおすすめです。症状が続く場合は、相談窓口や巡回の人に相談しましょう。

■避難所生活中のストレス対策