備える編

第3章 災害時の連絡方法を決めておこう

1. 災害に備えて家族会議を開こう

 今行っておきたい災害への備えのひとつは、「家族会議」です。家族と在宅時に災害が起こった場合、驚きあわてる中で家族の役割分担を行うことは難しいでしょう。しかし、自分や家族の命を守るためには、冷静に合理的な行動を取る必要があります。家族で話し合い、出口を確保する人、防災用品を持ち出す人、近所に連絡する人など役割分担をあらかじめ決めておきましょう。

  • 家族で話し合い、災害時の行動を決めておこう

2. 家族との連絡方法を決めている人は約半数

 災害は家族がそろっている時に起こるとは限りません。家族会議の際には、家族の安否確認の方法を決めておくことも大切です。全国の15〜79歳の男女を対象に実施した調査では同居している家族と災害時の連絡方法を決めていると回答した人は約半数(54%)にとどまりました。別居している家族との連絡方法を決めている人は49%と、さらに少ないことがわかっています。速やかに家族の安否を確認できるように、あらかじめ連絡方法を決めておきましょう。

■災害時の連絡方法を決めている人の割合

3. 災害時の連絡方法を決めるポイント

 連絡方法を決める時のポイントは、必ず複数の方法を確保しておくこと。災害時は停電や音声通話の集中などによって電話がつながりにくくなったり、インターネット接続が不安定になったりすることが考えられ、この通信方法であれば必ず使えるとは言い切れないためです。詳しい方法については後述しますが、家族皆が使いやすい方法を検討してみてください。毎月1・15日、正月三が日、防災とボランティア週間(1月15〜21日)、防災週間(8月30日〜9月5日)には、災害用伝言ダイヤル(171)や災害伝言板などの体験利用ができるので、家族と使い方を確認しておくことも重要です。

4. 電話の輻輳(ふくそう)とは?

 電話による通話は、交換機を介して一対一のルートを確保するシステムで行われます。ところが、交換機の処理が追いつかなくなるほど電話が集中してしまうと、道路渋滞と同じように電話通信網にも渋滞が起こります。このように、電話通信網が混雑することによって、なかなか電話がつながらなくなることを「輻輳(ふくそう)」と呼びます。
 
 新年のあいさつやコンサートのチケット予約などの際に輻輳を経験したことのある方もいるかもしれませんが、災害時も同様です。地震などの大規模な災害が発生し、メディアで報道されると、全国から被災地に向けて家族や親戚、友人などの無事を確認する電話が殺到します。電話がつながるまでかけ直すという人も多いでしょう。こうして輻輳がどんどん増大していくというわけです。

  • 災害が起こった後は電話がつながりにくくなる

5. 災害時は音声通話の通信規制が行われる

 電話通信網の輻輳がひどくなると、交換機そのものがパンクしてしまう可能性があります。そこで行われるのが「通信規制」です。2011年3月に発生した東日本大震災では、固定電話各社で最大80〜90%、携帯電話の音声通話では最大70〜95%の規制が実施され、総務省が行ったアンケートでは岩手・宮城・福島・茨城、4県の約55%の回答者に加えて関東1都6県の約41%の回答者も「電話がまったくつながらなかった」と回答しています。ただし、公衆電話など「災害時優先電話」は通信規制の対象外として扱われるため、硬貨があれば電話をかけることができます。

■東日本大震災発生後の電話のつながり具合(地域別)