知る編

第17章 津波のメカニズム

1. 津波が発生するしくみ

 海溝型地震が発生すると、海洋プレートに巻き込まれて沈み込んでいた大陸プレートが急激に持ち上げられ、逆に持ち上がっていた部分は沈み込みます。その際に発生する巨大なエネルギーが海水全体を動かし、海面を上昇させます。このような海水の変化が周囲に波として広がっていく現象が津波です。

 台風や低気圧が通過する際に潮位が上昇する「高潮」も大きな被害をもたらす場合がありますが、津波とは波長(波の山から山、または谷から谷の長さ)や特徴が異なります。高潮の波長は短い(数m〜数百m)一方、津波の波長は長い(数km〜数百km)ため、巨大な水の壁のように陸地に襲いかかるのです。

■津波と高潮の違い

2. 津波の高さは地形によって違う

 津波の高さは、海岸付近の地形によって異なります。水深が深いほど津波の速度は速くなるため、陸地に近くなるほど津波の先頭部分の速度は遅くなりますが、後から来る波が追いつくことで高く成長していくのです。そのため、津波のエネルギーが一点に集中しやすい湾の奥では津波の波高が高くなりやすく、被害も大きくなりやすいとされています。湾の場合は、袋型、直線海岸、U字型、V字型の順に波高が高くなる傾向にあります。同様に、陸地が海に向かって突き出している岬でも、水深が浅い地域を巻き込むように波向が曲げられるため、津波の波高が高くなりやすいと言えます。

■津波の波高が高くなるケース

3. 津波の規模と被害の関係

 過去の津波被害によると、家屋被害は建築方法などによって異なるものの、木造住宅では津波の高さが1m程度から部分的に破壊され、2m以上で全壊に至ると想定されています。一方、鉄筋コンクリート建物の場合、住宅であれば津波の高さが5m程度、ビルであれば10m程度までは持ちこたえると考えられています。ただし、東日本大震災の時にも見られたように、津波は建物や車両、港湾部の船舶、看板など、あらゆるものを破壊し巻き込みながら居住地域に押し寄せるので、津波の高さが低い場合にも漂流物が凶器となります。人体や構造物を傷つけることがあるので、十分な警戒が必要です。

 海岸防災林が造成されている場合、津波のエネルギーを低下させたり、津波が到達する時間を遅らせたり、漂流物の移動を阻止したりすることで被害を軽減する効果が期待できます。

■津波の大きさと被害(「首藤,1993」を参考に作成)