知る編

第16章 地震のメカニズム

1. 地震のメカニズム

 地震とは、地下にあるプレート(厚さ数十kmに及ぶ岩盤)のズレによって起こります。地球の表面は十数枚のプレートに覆われており、それぞれ別の方向に向かって1年間に数cmずつ移動しています。そのため、プレートとプレートの境目では押し合ったり引っ張り合ったりする複雑な力が働き、その影響でプレート同士にひずみが生じます。このひずみが限界に達すると、プレートの境目や弱い岩盤が破壊され、その衝撃で揺れ(地震)が起こります。

 日本で地震が多いのは、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートの4枚のプレートがぶつかり合う位置にあるためです。

■日本周辺の主なプレート

2. 前震・本震・余震とは?

 大きな地震が発生すると、周辺での地震活動も活発になるため、しばらく地震が続くことがあります。このようなパターンを「本震—余震型」といい、最初の地震を「本震」、その後に発生する小さな地震を「余震」と呼びます。本震の直後は余震も多く発生しますが、時間経過とともに減少していきます。余震の規模は本震のマグニチュードよりも小さいことが大半ですが、場所によっては本震と同規模になることもあるので注意が必要です。

 本震の発生に先立ち、「前震」と呼ばれる小さな地震を伴う場合を「前震—本震—余震型」といいます。そのほか、前震・本震・余震の区別がつかず、だらだらと地震が続く「群発型」というパターンもあり、火山の周辺などでしばしば見られます。

3. 地震のタイプは3種類ある

地震は、①海溝型地震、②断層型地震、③火山性地震の3種類に大別できます。

①海溝型地震

 プレートには、海底火山の活動によってできる「海洋プレート」と、大陸を形作る「大陸プレート」があります。海洋プレートと大陸プレートがぶつかると、厚くて重い海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込んでいきます。これに伴って大陸プレートの先端が徐々に引き込まれていき、両プレートの間にひずみが蓄積。大陸プレートがひずみに耐えられなくなると、引きずりこまれていた部分が元に戻ろうとします。この時に放出される巨大なエネルギーによって起こる地震が「海溝型地震」です。海溝型地震の場合は、小さな縦揺れの後に大きな横揺れが起こることが多く、数分間に渡って揺れが続きます。地震の規模が大きいため、家屋の倒壊や火災のほか、大規模な津波を伴うこともあります。

 過去に起こった地震では、東日本大震災(2011)年などが相当します。

■海溝型地震

②断層型地震

 「断層型地震」は、プレート内の断層で発生する地震です。地下深くの岩盤には、たくさんの割れ目がありますが、通常はかみ合っています。しかし、プレート移動によって大きな力が加わることで、再び壊れて上下や水平方向にずれが生じることがあります。この時の衝撃が揺れとして地面に伝わったものが「断層型地震」です。断層型地震は、「直下型地震」と言います。
「内陸型地震」と呼ばれることもあります。

 断層型地震は、突き上げるような縦揺れと揺れる時間が比較的短いことが特徴です。震源が浅い場合は、激しい揺れが家屋倒壊や土砂災害といった大きな被害をもたらします。

 過去の地震では、阪神淡路大震災(1995年)、熊本地震(2016年)、大阪北部地震(2018年)、北海道胆振東部地震(2019年)などが相当します。

③火山性地震

 地下のマグマの動きや熱水の活動、火山の噴火などによって、火山体やその周辺で発生する地震を「火山性地震」と呼びます。マグニチュード5以下の小さい地震が多く、揺れも震度1以下であることがほとんどですが、まれに大きな地震が発生することがあります。

4. 地震の大きさを表すマグニチュード

 地震そのものの規模(大きさ)を示す単位を「マグニチュード」といいます。マグニチュードは直接観測することができないため、各地の揺れの大きさなどから推定されます。マグニチュードの計算方法には数種類あり、地震学では規模の大きい地震も正確に評価できる「モーメント・マグニチュード(Mw)」を最も広く用いていますが、日本では速報性に優れた「気象庁マグニチュード(Mj)」を主に使っています。

 また、マグニチュードと震源から放射された地震波の総エネルギーとの間には、マグニチュードが1増えるとエネルギーは32倍になり、2増えると約1000倍になるという関係があります。したがって、東日本大震災(Mw9.0)は阪神淡路大震災(Mj7.3)のおよそ355倍のエネルギーになると考えられるでしょう。

5. 地震の揺れの大きさを示す震度

 震度は、ある場所での地震による揺れの強さを、人体の感覚や周囲の物体・構造物、さらには自然界への影響の程度から、いくつかの段階に分けて表したものです。

 日本では、全国の計測震度計で観測された震度を自動的に収集し、気象庁が地震発生直後に速報する体制を取っています。「気象庁震度階級」は0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10階級で表し、震度6強を超えるものはすべて震度7となります。

 一方、アメリカなどではMM震度階(改正メルカリ震度階)と呼ばれる12階級の表現が使われており、地震による被害を詳しく調査してから発表されるのが一般的です。

 なお、震度はその場所での揺れの程度を表すため、地域が違えば震度も異なります。例えば、震源地からの距離が同等の近接した2点であっても、地質の違いによって異なる震度が観測される場合があるということです。

■震度と揺れ