守る編

第14章 帰宅・避難する際のポイント

1. 歩き出す前に

 外出先から帰宅できるかどうかの状況判断は慎重に行う必要があります。テレビやラジオ、行政や消防署などのサイトから正しい情報を把握し、火災をはじめとする二次災害の有無も踏まえて、帰宅経路が安全かどうかを判断します。

 公共交通機関が停止している場合、徒歩か自転車で帰宅するしかありません。内閣府の中央防災会議は、自宅までの距離が10kmまでであれば全員が歩いて帰れると想定していますが、ビジネスシューズやヒールのある靴では歩ける距離は短くなります。履き慣れたスニーカーをオフィスのロッカーなどに常備しておくと良いでしょう。

■徒歩帰宅の際に便利なグッズ

2. 帰宅ルートの考え方

 帰宅ルートを選ぶ際は、なるべく安全な道を選ぶことが大切です。無理に近道をしようとすると迷う可能性もあるので、幅の広い幹線道路を選択しましょう。
 
 幹線道路は広くて歩きやすいだけでなく、火災の延焼を防いだり熱を遮ったりする効果もあるので安全性が高いと言えます。もし、地震によって道路が被害を受けた場合、優先的に復旧作業が実施されるというメリットもあります。
 
 そのほか、災害時に帰宅支援拠点となる公共施設やコンビニ、ガソリンスタンドなどが多く、飲料水の提供やトイレの使用、道路情報の提供などのサービスが受けられます。

3. 避難時のポイント

 避難する際に注意したいのは、出火の原因を作らないこと。もう一度火元を確認してからガスの元栓を閉め、電気のブレーカーも落とします。これは、ガス管やガス器具が破損していた場合、ガスが復旧したときにガス漏れを起こす可能性があるからです。電気も同様に、壊れたり倒れたりした電化製品に通電すると火災の危険性があります。

 家を出るときには、探しに来た人に無事を伝えるため家族の安否や避難先を書いたメモを目立つ場所に残し、しっかり鍵をかけてから移動しましょう。電話がつながりにくくなることを踏まえ、災害用伝言板やSNSでも伝言を残しておくと安心です。

  • 避難する前には電気のブレーカーを落とし、ガスの元栓を閉める

4. 危機的状況の心理状態

 災害のような異常事態が起こった場合、「こんなことあるはずない」「自分だけは大丈夫」と錯覚した心理状態になりやすく、避難行動を遅らせる一因になります。これは、異常があっても正常の範囲内と捉えて無視し、心を平静に保とうとする「正常性バイアス」と呼ばれる機能によるものです。

 また、大勢の人と一緒にいる状況下では、「周りに合わせていれば大丈夫だ」という心理が働いて他の人の行動に左右されやすくなります。そのため、他の人の避難行動を見て避難を始めたことで助かった例もありますが、逆に避難が遅れてしまうこともあります。

 適切な行動を取るためにも、災害時にはこのような心理状態になりやすいことを理解しておきましょう。