2023.2.8

地方創生はDXがカギ!デジタル田園都市国家構想の総合戦略や交付金を解説

政府が掲げる「新しい資本主義」。その重要な柱として位置づけられているのが「デジタル田園都市国家構想」です。2022年12月時点ですでに11回もの会議を重ね、実証段階からすでに実装段階に移⾏しつつあります。デジタル田園都市国家構想総合戦略では、2023〜2027年度における施策や評価軸を明示しています。デジタル田園都市国家構想を実現するために、自治体に今なにが求められているのか。基本情報と一緒に解説します。

デジタル田園都市国家構想とは

デジタル田園都市国家構想とは

デジタル田園都市国家構想とは、日本政府が目指す持続可能な社会づくりのための基本指針です。「デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題の解決、魅力向上のブレイクスルーを実現し、地方活性化を加速する」(※1)ために政府が主導して地方に働きかけを行っています。

地方は現在、下記のような社会課題を抱えています。デジタル技術によって、これらの社会課題を解決するのがデジタル田園都市国家構想の目的の一つです。さらに地域の魅力向上を実現させ地域活性化を加速させる取り組みもデジタル田園都市国家構想として進められています。

<地方が抱える社会課題および課題解決の方向性(※2)

●人口減少・少子高齢化
●過疎化・東京圏への一極集中
●地域産業の空洞化 など
〇地方に仕事をつくる
〇人の流れをつくる
〇結婚・出産・子育ての希望をかなえる
〇魅力的な地域を作る

デジタル田園都市国家構想総合戦略とは

デジタル田園都市国家構想総合戦略とは

デジタル田園都市国家構想の具体的な方針は、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(※3)として打ち出されています。「まち・ひと・しごと創⽣総合戦略」を抜本的に改訂したもので、2022年12月に行われた「第11回デジタル田園都市国家構想実現会議」の資料(※4)では、2023年度から2027年度までの5か年における総合戦略およびKPI(重要業績評価指標)とロードマップ(工程表)が明記されました。「デジタル実装に取り組む地方公共団体を、20224年までに1,000団体、2027年までに1,500団体」のほか、下記のようなKPIが掲げられています(※4・※5)

デジタル田園都市国家構想総合戦略とは

「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すのが、デジタル田園都市国家構想総合戦略の基本的な考え方です。地方の社会課題解決を成長の原動力として活用し、ボトムアップの成長が各地方から全国規模で波及するのを国は狙っています。

また2022年12月時点で、デジタル技術の活⽤は実証段階から実装段階に移⾏しつつあります。各地域で蓄積された地方創生の成果や知見に基づいた取り組みを続けながら、すでに成功した地域の優良事例を横展開してデジタル田園都市国家構想を加速させようと国が働きかけている段階です。

デジタル田園都市国家構想交付金の紹介

デジタル田園都市国家構想交付金の紹介

デジタル田園都市国家構想を進めるに当たって、地方自治体を支援するために「デジタル田園都市国家構想交付金」が創設されました。2023(令和5)年度概算要求額は1,200億円を計上しましたが、2022(令和4)年度の当初予算は1,000億円。補正予算では、2022(令和4)年度は800億円、2021(令和3)年度は660億円と、金額が近年増えています(※6・※7)

なおデジタル田園都市国家構想交付金は、取り組みの内容ごとにタイプ分けがなされています。下記のようなタイプ分けによって、事業の立ちあげを適切に支援していく考えです。デジタル実装を地方から進めるとともに、安定した雇用創出など地方創生の推進に寄与する取り組みが行われる効果が期待されています。

デジタル実装タイプ※8

デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上事業を行う地方公共団体に対し、その事業の立ち上げに必要な経費を支援するのが「デジタル実装タイプ」の交付金です。優良モデルの導入および開拓、さらにマイナンバーの新たな使い方を模索する取り組みなどの支援を対象に交付されます。

<デジタル実装タイプの概要(※7)

デジタル実装タイプの概要

さらに「転職なき移住」を実現し、新たな人を地方へ呼び込むための取り組みに対する交付金として用意されているのが「地方創生テレワーク型」です。地方と都市部との差を縮め、活性化につながる地方創生テレワークの導入や定着のための取り組みを進めている地方自治体に交付されます。

地方創生推進タイプ・地方創生拠点整備タイプ(※9)

デジタル田園都市国家構想交付金には、中長期的な計画の基で先導的な取り組みや施設整備を行うのを支援するタイプも設けられています。「地方創生推進タイプ」と「地方創生拠点整備タイプ」です。

■地方創生推進タイプ
未来技術を活用した新しい社会システムを実現させるために、全国的なモデル事例を進める場合に受けられる交付金です。「Society5.0型」とも呼ばれています。計画策定・開発・実証・実装に至るまでを最長5か年度に渡り支援する仕組みです。

■地方創生拠点整備タイプ
デジタル活用によって、農林水産業や観光の振興などの地方創生を図る際の拠点施設整備にかかる費用を支援するために交付されます。

デジタル田園都市国家構想実現に向けて地方自治体に求められること

デジタル田園都市国家構想実現に向けて地方自治体に求められること

デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、地方自治体に求められているのは戦略の立案とそれに基づいた取り組みです。地方自治体はまず、それぞれが抱える社会課題を踏まえ「地方版総合戦略」の策定を行います。国が示した下記のようなモデル地域ビジョンも参考に、どのような戦略を策定するのか検討や取り組みを進めます。

<国が示すモデル地域ビジョンの例(※10)>

●スマートシティ・スーパーシティ:先進技術活用や規制改革によって都市機能やサービスの効率化および高度化を実現し、新たな価値を創出する都市や地域。
●SDGs未来都市:SDGsの理念に沿う、経済・社会・環境を統合した取り組みによって地方創生を進める都市や地域。
●「デジ活」中山間地域:農林水産業を軸に、デジタル技術や地域資源を活用しながら社会課題の解決と地域活性化に向けた取り組みを進める中山間地域。
●産学官協創都市:大学を拠点とした産学官連携を行い、大学発のイノベーション創出および社会実装を促す取り組みで地域活性化を目指す都市や地域。
●脱炭素先行地域:デジタル技術や再生可能エネルギーの活用により、さまざまな分野で脱炭素化に取り組む都市や地域。

デジタル田園都市国家構想の実現に向けた施策の方向性として、国が定める「デジタルの力を活用した地方の社会課題」(※11)がヒントになります。とくに社会課題の解決や魅力向上の重点取り組みとして挙げられている4つの項目の一部を、デジタル田園都市国家構想の実現を支援するトッパンのソリューションと合わせて解説します。

1.地方に仕事をつくる

自身の力で稼げる地域を作り出す取り組みです。イノベーションを生む人材・ノウハウ・産業が集積してくるように促す工夫が求められます。キャッシュレス決済やアプリ活用などのDXによって、地域の連携を生む地域発のイノベーション創出に取り組み、地域を支える産業の振興や起業を促進することが大切です。とくに観光資源が豊富な地域では、決済データに基づくマーケティングや観光アプリの活用など観光分野のDXを推進し、広域での収益の最⼤化を図る取り組みなども求められます。

■観光DXを支援するソリューション
ストリートミュージアム®:文化財を高精細・正確にVR復元し感動体験を提供できるアプリ
NARiKiRÜ(ナリキル):3Dアバターになりきり、有人の遠隔コミュニケーションを実現するサービス
CONBO:タッチ操作による情報アクセスが可能な4Kタッチディスプレイ

2.人の流れをつくる

都会からやってくる人の流れを作り、都会に人を流出させない取り組みも重要です。テレワーク推進やサテライトオフィス整備などを行い「転職なき移住」をしやすくする必要があります。また特定の地域に継続的に多様な形で関わる「関係人口の創出・拡大」や多様なライフスタイルの実現が可能な「二拠点居住」が、地⽅の経済活動や魅⼒向上の取り組みの活性化、都市部の⼈材のキャリアアップ、さらには地域の付加価値創出につながります。

■地方への移住・定住の推進を支援するソリューション
ピタマチ:地域の魅力と移住・定住希望者の理想の暮らしをマッチングさせるWEBサービス

■関係人口の創出・拡大を支援するソリューション
地域関係人口ポータルサイト構築:特産品の販売やふるさと納税の受付などの機能をまとめた地域ポータルサイトを構築するサービス
地域ファンサービスプラットフォーム構築・運営支援:地域のファンを開拓・育成するシステムの構築・運用サポートサービス

3.結婚・出産・⼦育ての希望をかなえる

結婚・出産・子育てがしやすい環境づくりは重要です。出産・育児をしながら女性が働き続けられる職場環境の整備を図り、男性の子育てへの参画を促す取り組みや、デジタル技術の活用によって仕事と子育てが両立しやすくなるような取り組みが求められます。

■子ども政策におけるDXなどのデジタル技術を活用した地域のさまざまな取り組みの推進を支援するソリューション
クラシラセル®:子育て家庭などの住民と自治体との情報伝達を円滑にするASP型サービス

4.魅力的な地域をつくる

地域の魅力づくりにはさまざまなアプローチがあります。「質の高い教育や医療サービスの提供」や「防災や減災などによる安心・安全な地域づくり」は基本といえるでしょう。デジタル技術を活用した、従来よりも効率的かつ効果的な住民サービスの実現も求められています。また多様な暮らし方を支える人間中心の「まちづくり」や、安心して暮らせる社会をデジタルの活用によって作る「地域コミュニティ機能の維持・強化」も重要な施策です。

■教育DXを支援するソリューション
navima:自ら学ぶ習慣を養う、小中学校向けICT学習サービス
E-Traノート:定型文で作る、多言語対応WEB連絡帳システム

■医療・介護分野を支援するソリューション
自治体向けBIツール:データヘルス計画策定や特定健診勧奨施策などをワンストップで支援するサービス

■地域資源を⽣かした個性あふれる地域づくりを支援するソリューション
ジモノミッケ!™:農産物の地産地消を支援する需給マッチングプラットフォーム

■防災・減災を支援するソリューション
リアルハザードビューア®: 住民目線で浸水情報をリアルに可視化するサービス
災害教育VR:自分ごととして災害体験ができるVRサービス

まとめ

国が進めるデジタル田園都市国家構想の実現に向けて、各自治体の取り組みが求められています。今回ご紹介した国の方針などを基に、交付金を活用しながらそれぞれの地域の課題に適した取り組みをスタートさせましょう。

また「地方に仕事をつくる」「人の流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「魅力的な地域をつくる」の4つの視点で社会課題の解決策を進めるのも一つの方法です。

トッパンでも、社会課題の解決と魅力の向上に役立つ自治体用デジタルツールをまとめた「デジタル田園都市国家構想関連ソリューションカタログ」の作成・配布を行っています。下記からダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。

デジタル田園都市国家構想関連ソリューションカタログ

PDFを見る

・自治体向けオンライン展示会「LET'S デジタル田園都市」TOPPAN特設サイト
・TOPPANの社会課題解決取り組み事例ページ

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