TOPPAN 凸版印刷株式会社

当サイトは、コミュニケーションメディアのひとつである印刷表現の幅を広げ、クリエイティブに役立つ情報を発信するウェブサイトです。凸版印刷のグラフィック・アーツ・センター(GAC)が運営しています。

PRINTER’S RESOURCE プリンターズリソースマテリアルがもつ存在感や表現者を支える技術について、共有すべきリソースを発信します

24 谷川俊太郎・著、松本大洋・絵「かないくん」

24 谷川俊太郎・著、松本大洋・絵「かないくん」

 グレーやベージュの空間の中に描かれた、どこか静寂な子供たち。飛んだり、おしゃべりしたりしていても、まるで時が止まってしまったかのような静けさを感じさせ、過ぎていく時の儚さを教えてくれる。
 鉛筆とアクリル絵具で構成されている絵は松本大洋氏によるもの。この独特の空気をそのまま楽しんでもらえる魅力的な印刷物にするにはどうしたらよいのか。

かないくん

原画の空気感を求めて

 アートディレクションを担当した祖父江氏はこう語る。
 「今回2つの大事なポイントがあります。一つは鉛筆の輝き。もう一つは絵本の中でも重要なポイントとなる、白い絵具の質感をインキでどう表現できるかです。」(祖父江氏)
 このポイントを再現するためにプリンティングディレクターの森岩氏の行った工夫を紹介しよう。

鉛筆の質感の追求

 まずは鉛筆の鉛らしい質感を再現するために、スミと銀のインキを使用して2種の方法でテストを試みた。①それぞれスミ版と骨版(銀)の2版で刷る方法、②スミと銀を混色した特色スミで刷る方法、この2つである。

@スミ版+銀版A特色スミ1版

 ①の方では鉛筆独特の光沢感が強く得られたが、少々オーバーな表現になった。一方、②では光沢感は弱めなものの、自然な鉛筆の鈍くて詰まった鉛のような色味が得られた。
 「祖父江さんと以前お仕事させていただいたイラストレーション集で、鉛筆の質感をLR輝きという銀のインキを使用して再現したことがありました。祖父江さんがそれを気に入ってらっしゃったこともあり、そこからアイデアを得ました。」(森岩氏)
 「②の方では鉛筆が微妙に輝いていると感じられる、ぎりぎりのラインを攻めてもらいました。」(祖父江氏)

絵具のたまりと厚みの追求

 次は今回のキーカラー、白絵具の再現。原画さながらの白絵具の質感、厚みを出すために3種のテストを試みた。①オペークホワイトなし(白は紙地の色)、②オペークホワイト1版(モノトーン)、③オペークホワイト2版(ダブルトーン)、で違いを比較。ダブルトーンはモノクロ写真ではよく見られ、先に述べた鉛筆の実験でも用いられていた手法であるが、白の表現では珍しい。

部分的に白絵具で彩色されているイラスト

@ホワイトなしAホワイト1色Bホワイトダブルトーン

ダブルトーンの分版

@オペークホワイト版(フルトーン)Aハイライト版(ハイライト部のみ)

 オペークホワイトは紙地の白と比較すると温かみの強い色味のため、白色度を保つにはあまり適さない。しかし、2版を刷り重ねることで生まれるリアルな筆跡は確実に作品の厚みを増している。

画面全体にオペークホワイトが重なっているイラスト

@ホワイトなし
Aホワイト1色
Bホワイトダブルトーン

 こちらはダブルトーンにすることで、幅広い白のトーンと、通常のプロセス4色では得られない実際に絵具を上からかけた様な皮膜感が得られた。

紙の白−偶然からの発見

 ほかにも白の表現には、絵具だけでなく紙の白もある。
 使用されている白い画用紙の凹凸な紙地に、鉛筆の線は少しだけ震えていた。その繊細な感じも再現したく、森岩氏はこれもオペークホワイトのダブルトーンで挑んだ、はずだったのだ。

 「ホワイトのみの構成のはずが、その下になぜかCMY版も一緒に刷ってしまって、失敗したと思いました。しかし、よく見るとまさに画用紙のエンボスのような文様が現れており、祖父江さんにお見せし説明したところ、とても喜んでもらえたんです。」(森岩氏)
 「偶然からの発見!こんなの見たことないです!」(祖父江氏)

(左)CMY+特色スミ(右)CMY+特色スミ+ホワイトダブルトーン

こだわりのバランス

 これらの実験を通して、祖父江氏の結論は「今回は鉛筆の表現よりも白の表現を主役にした印刷にしよう」というものだった。そこで鉛筆の表現は控えめな、スミと銀インキを調肉した特色スミの1色で、白絵具の表現はオペークホワイトのダブルトーンを採用し、CMYの3色をプラスした計6色で印刷することとなった。
 さらにカバーは、トランスタバック加工が途中で途切れるようにデザインされている。これは、この物語がまだ完成された状態ではなく途中である、ということを暗示する祖父江氏のアイデアだ。

仕上がりを見て−祖父江氏インタビュー

卓上の青い原稿はトランスタバックの版

 「今回は誰もがえぇっ!と驚くような、ホワイトのダブルトーンに挑んでいただいています。実際見ないとこの凄さは分からないと思うので、ぜひ手に取ってご覧いただきたいと思います!」(祖父江氏)

 「祖父江さんとのお仕事はいつもなにか新しいことができないか挑戦させていただけるので、ありがたいです。
 印刷が立体物であることの醍醐味を感じていただける絵本に仕上がったのではないかと思います。」(森岩氏)

 今回取り上げたのは、ホワイトのダブルトーンという通常ではなかなか見られないこだわりの作品だった。ぜひ、実際に手に取ってご覧いただきたい。あなたも知らず知らずのうちに印刷面を撫でてしまっているはずだ。

 ほぼ日刊イトイ新聞のウェブサイトで『かないくん』の紹介やメイキングコンテンツが公開されています!下記リンクより、ぜひご覧ください。

かないくん1月24日発売 かないくんメイキングコンテンツ
  2月3日(月)より公開予定

SPEC

「かないくん」

サイズ
A4

インキ
●シアン/マゼンタ/イエロー(東洋インキ製造株式会社)
●特スミ[スミ(東洋インキ製造株式会社)+銀(大日精化工業株式会社)]
●OP100白[オペークホワイト版/ハイライト版](DICグラフィックス株式会社)

用紙
<表紙> OKトップコート+(プラス)
四六版 135s
<本文>
ユーライト 四六版 110s
(一部クラシコトレーシング)

スクリーン線数
230線

著者
谷川俊太郎


松本大洋

アートディレクター
祖父江 慎

プリンティングディレクター
森岩麻衣子

製版
株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ

クライアント
株式会社東京糸井重里事務所

制作年
2013〜2014年

【取材協力】
森岩麻衣子
凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション本部グラフィック・アーツ・センター

PDFファイルをご覧になるには、下のボタンから最新のプラグインをダウンロードし、インストールしてご覧ください。

Get Adobe Reader

  • ご意見・ご感想・お問い合わせ 
  • 著作権について 
  • 個人情報保護方針 
  • ソーシャルメディア利用規約 
Copyright © 2021 TOPPAN INC.