本の表紙にふわりと美しく浮かび上がる「30」の文字。今回はこの美しい文字表現を開発し、美の本に華やかさを加えたディレクター森岩麻衣子の話をご紹介します。

 ポーラ文化研究所さんから今期発売された『平成美容開花-平成から令和へ、美容の軌跡30年』は、平成30年間の美容のトレンドをまとめた書籍。現代の美容の変遷を見ることができ、同時にトレンドも学ぶことができる大変興味深い本です。今回、企画制作を担当したトッパンのディレクター森岩は、「仕様やレイアウト、色だけでなく、印刷技術でさらに美しさを加えることはできないだろうか?」と考え、『アート彩紋』を表紙に使うことを提案しました。

『アート彩紋』テストデザインの数々

 『アート彩紋』は、紙幣や証券などに使われる幾何学模様「細紋」の技術を現代のデザインにも調和するようにアップデートしたもので、形状や波の数、滑らかさなどを自由に表現できます。 この美しい独自の技術をポーラ文化研究所さんへ提案したところ、「ぜひ使いましょう」と採用に至りました。
※『アート彩紋』についての詳細はこちら

 しかし『アート彩紋』は、元々は偽造防止を目的として使われた技術で、大変デリケートな表現。さらに今回のようなCMYK4色で表現した虹色のグラデーションの上に、極細の白い線で表現するというデザインは、製版技術だけでなく印刷工程で熟練の技術も必要になります。森岩はプリンティングディレクターを務めていた経験を活かし、印刷の線数を通常より細かく設定、最後の仕上がりまで自ら立ち合い、完成させました。

 この他にも、丁寧に研究され続けてきた美容のトレンドを、楽しく、わかりやすく伝えるために、大きな1枚絵の美容パーティイラストを作成。雁垂れ表紙の内側に絵巻風に入れ込み、本文の扉ページと呼応させた謎かけ風に仕立てました。細部にまでこだわった一冊となっています。

PRODUCT INFORMATION

平成美容開花-平成から令和へ、美容の軌跡30年
ポーラ文化研究所
書籍/2020年

クリエイティブディレクター:森岩麻衣子
アートディレクター:藏野捺子
制作ディレクター:太田裕子
イラストレーター:pai

STAFF’S COMMENTS

ディレクター 森岩麻衣子

平成30年間の美容の軌跡をまとめる本ということで、<ひも解く><紡ぐ><編む>というキーワードが頭に浮かびました。ちょうど私たちのチームで、トッパンのセキュア技術である【細紋】を、【アート彩紋】として新たにデザイン・クリエイティブ目線で再開発できないかとトライを始めていたところでした。私には歴史が糸に見え、美しいレースのように編まれるイメージがぴったりとはまりました。そこでご提案させていただき、ポーラ文化研究所の皆様に思いが通じ、ご採用頂けたことを大変嬉しく思います。