ブランドの世界観を多くの人に短時間で伝えるために、動画は今やブランディングにとって欠かせない表現手段です。多くの企業がブランディングムービーを制作し、自社のブランドサイトやSNS上で効果的に活用しています。さらにコロナ禍の影響も後押しとなって、オンライン上での動画需要はますます高まり、さまざまな施策でロジカルかつエモーショナルな映像表現が求められるようになりました。今回は、企業ブランディングや商品プロモーションにおいて映像ディレクターとして活躍する、井元友香の“クリエイティブストーリー”をご紹介します。

未経験から研鑽を積み、
多様な強みを持つディレクターに

 井元は、静止画から動画まで“撮影”を軸に活動するビジュアルクリエイティブ部に在籍。製薬会社や家電メーカーなどをはじめとするさまざまな企業のプロモーションで活用される静止画・映像制作に、ディレクターとして携わってきました。

 「大学では、グラフィックデザインとエディトリアルデザインを専攻していました。ですので、入社時は撮影とほぼ無縁で……。それでも撮影ができないままでは悔しいので、最初の頃は、先輩に教えてもらった撮影セットの組み方を休日に自分で一から再現したりしていましたね。負けず嫌いなのかもしれません」

 そう振り返る井元は、今でも忙しい業務の合間に自主制作に勤しみ、アワードに応募して自身の力を試したり、ドローン操縦士の資格を取得して幅広い撮影への対応力を高めたりと、自己研鑽に余念がありません。また、デザインを学んでいた自身の強みを活かし、某家電メーカーのレシピブックの撮影では100カット分のシーンのアイデアを出し、自らラフを描き上げて撮影に臨むなど、常に全力で仕事に向き合っています。

 そんな井元が、コンセプト立案やコピー開発から関わることになったのが、グローバル医薬品企業AbbVie(アッヴィ)の新コーポレートビデオの動画制作でした。

スタジオスタッフフォトコンテストで金賞を受賞した、井元の作品「肉」/2017年

撮影の域を超えた、
“ブランディング”としての動画制作

 米国に本社を置くアッヴィは、2013年に設立された研究開発型のバイオ医薬品企業です。企業理念に「患者さんの笑顔に貢献し続ける」を掲げ、最先端の科学技術と先進的な取り組みにより、患者さん中心のイノベーションに根差したバイオ医薬品企業となることを目指しています。

 井元はもともと、販促ツールやWebやイベントで使用するビジュアルの撮影に携わっていましたが、そのなかでアッヴィの広報担当の方から「アッヴィの想いや取り組みを伝えるブランディングムービーをつくりたい」という相談を受けました。ビジョンを伝えるコピーの開発やキービジュアルの立案が必要となるブランディングムービーの制作は、いわば企業の姿勢を示すコーポレートブランディング。予め決められた条件のなかでクライアントの依頼に応えるという、それまでの業務を超えた“提案力”が求められる内容でした。

 「明確なゴールが見えない段階から、手探りで制作がスタートしました。打合せを通して担当の方から会社が大切にされていることや企業風土を知り、その想いを汲み、被写体はどうあるべきか、どういう言葉がふさわしいのか、一つひとつ提案し、丁寧なやりとりを心掛けました」

 議論を重ね、何度もコンセプトを検討し、絵コンテを描き、クライアントと一緒に内容を練り上げていった井元。コロナの影響による延期を挟みながら、1年かけて新コーポレートビデオが完成しました。

新コーポレートビデオのために井元がスタッフとつくり上げていった絵コンテ(一部)

アッヴィ新コーポレートビデオ「笑顔につながる明日を、共に。」
クリエイティブディレクター:井元友香/プロデューサー:金子由樹/プロジェクトマネージャー:花崎拓人/ディレクター:丸山宰/カメラマン:神保聡史
https://www.abbvie.co.jp/our-company/2021-corporate-video.html/

対話を重ね、考え抜くことで、
本当に伝わる動画が生まれる

 完成した新コーポレートビデオはクライアントから好評で、さまざまな場面で活用したいという声をいただいています。「撮影で大事にしたのは、見る人に自分事として受けとめてもらうこと。構図、アングルも1カット1カットこだわって制作しました」と井元。「ブランディングムービーは、想いやビジョンを代弁するものです。企画の骨子を固めるためにじっくり時間を割き、担当者の方と文字通り一緒につくり上げていくプロセスは、私にとっても大きなターニングポイントとなりました。自分に求められていることは何なのか、テーマについてさまざまな角度から検討し、考え抜くきっかけになったと思います。自分が介入できる制作領域が広いのも、この仕事の醍醐味ですね」

 ひとことでブランディングムービーといっても、メッセージを伝えるもの、共感を呼ぶもの、インナーブランディングにおいて効果を発揮するものなど、その目的はさまざまです。なぜつくるのか、見る人にどんな想いを抱いてほしいのか、常に“問い”を立てながら制作は進みます。1本の動画が秘める可能性を信じ、撮影のみならずブランディング全体にも携わるディレクターとして、井元はこれからも自身の活躍フィールドを広げていきます。

アッヴィ新コーポレートビデオ「笑顔につながる明日を、共に。」より

PRODUCT INFORMATION

AbbVie新コーポレートビデオ「笑顔につながる明日を、共に。」
アッヴィ合同会社
映像制作/2021

ディレクション:井元友香

STAFF’S COMMENTS

ディレクター 井元友香

ディレクターという肩書を超えて自分にできることは何か、毎回考えながら取り組んでいます。今回ご紹介したアッヴィさまの映像は、どんなアウトプットにするべきかというレベルから丁寧に考えながらつくり上げていきました。クライアントの皆さま、制作に携わったすべての皆さまと、想いのキャッチボールをしたからこそ生まれたシーンやメッセージがあります。ここからさらに未来につながる物語が続くよう、尽力していきたいと思います。