お客さまや株主といった大切なステークホルダーへのご挨拶にも活用され、ユーザーが一年を通して目にすることとなる企業カレンダー。生活シーンに溶け込んで企業ブランディングを行うことができる、定番かつ有力なメディアです。伝えたいメッセージを言葉で示すのではなく、ビジュアルで視覚的に表現する。さらには手にしたときの質感や佇まいで、お客さまの心に深く入り込むことができる。そんな特別なコミュニケーションツールは、制作側のやりがいもひとしお。今回は、この企業カレンダーの領域でアートディレクターとして活躍する、島田真帆の「クリエイティブストーリー」をご紹介します。

カレンダー好きだからこそ、
その魅力をまっすぐ伝えたい

 島田は、企業カレンダーの企画制作を中心とする「カレンダーセンター」に在籍し、自動車メーカーや食品メーカーなどさまざまな企業のオリジナルカレンダーを担当しています。1974年に発足したカレンダーセンターは、以来48年にわたって独自の文化と制作ノウハウを積み上げてきた、当社でも伝統のあるチームです。そのなかで島田は、高いデザイン性や印刷知識が求められる案件を担当し、数々のコンペで勝利してきた実績の持ち主。毎年開催される「全国カレンダー展」でも、常に上位賞に名前を連ねています。

 「幼い頃から、カレンダーというものが好きでした。めくるたびに新しい絵が現れるのが楽しくて、両親にねだって沢山買ってもらい、特にお気に入りの3、4点を常に部屋に飾っていたほど。高校生になってからは自分でも作り始め、進学した美大の自主制作展でもカレンダーをテーマにしていましたね」と語る島田。仕事を始めてからもその想いは褪せることなく、今はクライアントのために、そしてその先のお客さまを思い浮かべながら、一つひとつのオーダーに真摯に向き合い、作品制作に邁進しています。

2022年版ア・ゼスト壁掛けカレンダーより12月のビジュアル(バラ)

ひとつの金型から広がる
12種の絵、12種の物語

 カレンダーセンターに初めて「ア・ゼスト オリジナルカレンダー」の相談が届いたのは、2019年のこと。入社間もない営業が飛び込みで得た仕事でした。「ア・ゼスト」は、総武線沿線を中心にサービスを提供する不動産会社。「永く暮らせる、幸せのカタチのご提案。」をコンセプトに、お客さまが末永い生涯を安心して暮らせる住まいづくりを提案しています。最初のオリエンテーションで島田が受けたのは「お客さまの新居に飾っていただけるカレンダーを」というオーダー。提案まで1週間というタイトなスケジュールでしたが、そのときのカレンダーがご好評をいただき、2022年版も制作の依頼がありました。今回もテーマは同じでしたが、提案までの期間は約1カ月。そこで島田は、水彩画を元にデザインを起こすことを決め、さらに予算内で最大限のクリエイティブを発揮すべく、印刷仕様にもじっくりとアイデアを練っていきました。

 2022年度版で島田が提案したのは、オリジナルの金型を作成し、それを共通の版として12枚すべてに同じエンボス加工を施すというもの。ある月ではその型を「木」に見立て、別の月では「ブーケ」に見立ててデザインを展開するというアイデアで、一つの型から季節ごとに異なる12枚の絵をつくり上げました。

 「カレンダー制作において、アートディレクターは“物語を紡ぐ人”なのだと思います」と島田。「1年を12の月単位で区切って構成したものがカレンダーですが、その根底にはひとつながりの大きな時の流れがあります。ひと月ひと月、それぞれにストーリーがありながら、グラデーションのような季節の移ろいを紡ぐ大きな物語へと展開できるのが、カレンダー企画の醍醐味です」

オリジナルの金型をつくり、それを共通の版として12カ月すべてに同じエンボス加工を施し、ある月では「木」、別の月では「ブーケ」に見立てるというアイデアで1年間のデザインを設計

ブランドの世界観を視覚化する
ノウハウを、次のメディアへ

 完成した作品の現物を見ながら行った本インタビューでは、月ごとの絵柄を見ながら「私はこの月が好き」「私の誕生月の絵はなんだろう?」と話が盛り上がりました。こんな風にコミュニケーションが広がるのも、カレンダーの持つ魅力の一つだと島田は語ります。

 カレンダーのモチーフとして、島田がよく採用するのは植物です。幼い頃に日常のなかで見つけたささやかな喜びを、自らが携わるカレンダーを通して、手にするお客さまに届けたい――そのような想いが込められたカレンダーは、インテリアに自然と馴染みながらも、じっくり眺めたくなる魅力に溢れています。

 2022年版カレンダーを納品してまもなく、今度は島田のもとに、同社Webサイトリニューアルのアートディレクションの相談が舞い込みました。島田が提案したのは、コーポレートカラーである浅黄色を基調とした温もりのあるデザイン。カレンダーで構築したブランドの世界観を、Webデザインでも鮮やかに展開しました。カレンダーというメディアを主戦場に培ってきた、企業の世界観を具現化する島田のクリエイティブ・ノウハウは、カレンダーという枠を超えても発揮されています。

ア・ゼストWebサイトのトップページ

島田がアートディレクターとして携わった、ア・ゼストWebサイトのトップページ

壁掛けカレンダー

2022年版ア・ゼスト壁掛けカレンダーは、全国カレンダー展で国立印刷局理事長賞を受賞しました

PRODUCT INFORMATION

ア・ゼスト2022オリジナルカレンダー
ア・ゼスト
カレンダー/2021年

アートディレクション・デザイン:島田真帆

STAFF’S COMMENTS

アートディレクター・デザイナー 島田真帆

カレンダーは常日頃から当たり前のように慣れ親しんでいる媒体ですが、その奥深さは尽きることがないと、日々さまざまなお客さまのカレンダーをつくらせていただきながら深く感じております。往く月を惜しみ、来る月に希望を膨らませる。そんなささやかな日常をそっと彩り、お客さまの想いをしっかりとのせて届けられる作品づくりをして参りたいと考えております。