コロナ禍により、教育分野におけるオンライン授業の導入が進んだ2020年。続く本年は「ICT※元年」といわれ、プラットフォームの整備とともに、質の高いコンテンツの需要が高まっています。教育に限らず、さまざまな分野で人手不足やライフ・ワーク・バランスなどの課題を解決する起爆剤としても期待されるICT。今回は凸版印刷の人財開発センターからの依頼を受け、社員のパフォーマンスアップに導くコンディションづくりを目的としたeラーニング用動画コンテンツの制作を担当した、松本高明の「クリエイティブストーリー」をご紹介します。

※ ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、IT技術を有効活用し、いかに人々の暮らしを豊かにしていくかに焦点を当てた考え方。医療、教育だけでなく、農業や建設業界での活用も進んでいます。

チームの“動画リーダー”になるきっかけとなった、教育コンテンツ制作

 松本は入社4年目のディレクター。これまで企業のセールスプロモーションや、Webサイト構築、従業員向け教育コンテンツの制作に携わってきました。現在は所属するチーム内の動画リーダーとして期待され、企業のeラーニング※導入支援から教材コンテンツ制作のディレクションまで、一貫して手がけています。今回の人財開発センターからの依頼は、2年ほど前、松本がディレクターとして独り立ちするタイミングで抜擢された案件でした。

 依頼元である人財開発センターは、凸版印刷内の人財開発施策強化に取り組んでおり、2017年8月から、ハーバード大学医学部、ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行氏を迎えて、全社員のコンディション管理・生産性向上に対する助言を受けるとともに、次世代型人財開発施策の構築に向けた共同研究に関する顧問契約を締結。取り組みの一環として「コンディション研究会」を設け、そこで蓄積された「ハイパフォーマンスを支えるコンディションづくり」についての知見を社員に伝えたいという意向から、今回、動画コンテンツ制作の話が持ち上がりました。

※ eラーニング(e-Learning)とは、インターネットを用いて行う教育・学習のことです。

『セルフケア向上 コンディショニング講座』より

実際に現場を“体験”することで最適なアウトプットを見つける

 動画コンテンツの制作にあたり、松本はまず、人財開発センターのメンバーに混ざって、月1回開催される「コンディション研究会」に参加することから始めました。学生時代バックパッカーの旅に挑戦するなど、経験のない領域でも果敢にチャレンジできるのが彼の強み。「実際に研究会に参加し、根来教授や人財開発センターの方々と深くコミュニケーションを取らせていただいたことで、専門的な知識や皆さんのご意見を自分のなかにインプットできた」と松本は振り返ります。

 研究会を体験したあとは、そこで得た情報をいかに動画にまとめるかの作業が始まります。シナリオづくりが重要であることはもちろん、専門知識を含む内容を、視聴者のモチベーションを維持しつつ噛み砕いて伝える仕組みが肝であると、松本は感じていました。

 そこで採用したのが、当時注目され始めていたeラーニングにおける学習形態の一種である「マイクロ・ラーニング」という手法でした。マイクロ・ラーニングとは、1動画の時間を短く設定し、細分化されたコンテンツで学ぶ形式のこと。短時間で1回のレッスンが完結するので、学習者は日常に散在するすきま時間を利用して、好きな時間に好きな場所での学習が可能です。スマートフォンなどのモバイル環境を使えば仕事の合間や移動中でも視聴できるので、まとまった時間が取りにくいビジネスパーソンに適した学習ソリューションといえます。松本はまた、動画で扱うイラストの雰囲気もバリエーションを出して検討し、カジュアル過ぎず、明快な表現のアニメーション教育動画を目指しました。

『セルフケア向上 コンディショニング講座』の案内役となるキャラクターのアイデアスケッチ

新たなテクノロジーに挑戦し、コンテンツの幅を広げたい

 完成した『セルフケア向上 コンディショニング講座』は、2020年度の新入社員向けオンライン研修に採用され、当社が提供するデジタル教材「CoreLearn®」の学習コンテンツとして同年10月より提供が開始されました。コンテンツは好評で、その後、より実践的な内容で構成された第2弾コンテンツの制作も決定。また、同じく人財開発センター主催の「SDGs研究会」からの依頼を受け、同研究会の顧問、鵜飼秀徳氏が監修する『ビジネスシーンに活かせる仏教の考え』の制作も担当することに。2021年1月より提供が開始されました。

※ CoreLearn®とは、一人ひとりの理解度や進捗度合いに寄り添い、知識の習得を目指すデジタル教材として2017年10月より提供開始。三菱UFJ銀行や大分銀行、琉球銀行などの金融機関でも採用されています。

     

『ビジネスシーンに活かせる仏教の考え』より

 「『自分が携わったもので、多くの人々に良い影響を与えたい』という気持ちが、やりがいにつながっている」と語る松本。今後について、「既存の媒体やサービスだけでなく、新たなテクノロジーの知見も増やし、お客さまや生活者のニーズに合った手法やアプローチでコンテンツ開発をしていきたい」と意欲を覗かせます。働き方や学び方の多様化が広がる昨今、新たなテクノロジーや分野にも柔軟に挑戦する松本の姿勢は、バリエーション豊かなデジタル教材や学びの場の創出、そして学びたいと希求するさまざまな人々の支援へとつながっていくでしょう。

PRODUCT INFORMATION

「セルフケア向上 コンディショニング講座」
「ビジネスシーンに活かせる仏教の考え」

凸版印刷 人財開発センター
アニメーション動画制作/2020年

ディレクション:松本高明

STAFF’S COMMENTS

ディレクター 松本高明

医師の根来氏や住職の鵜飼氏といった専門家の方々に監修していただき、ビジネスマンの生活や考え方に活かせる動画コンテンツを2シリーズ制作しました。身体の仕組みや仏教の考えなどの専門的な内容を、ピクトグラムや漫画風アニメーションを用いて、分かりやすく伝えられるよう工夫しています。また一つが3~5分程の短めの動画となっておりますので、ぜひ忙しいビジネスマンの方にも、すきま時間などでご覧いただければ、大変嬉しく思います。