伝統的な紋様にも見える印象的なデザインが目をひくカレンダー、まるで民族衣装のデザインの様にも見えます。実はタイヤが地面に接している部分をイメージしたものです。
 トッパンは「ブリヂストンカレンダー」に2018年版より3年連続で制作に携わっており、ブリヂストンさんのメイン商材であるタイヤにフォーカスした絵柄・デザインに拘った表現の提案をしています。
 今回は最新作「ブリヂストンカレンダー2020」でトッパンのディレクター青柳雅博がどのような企画を作り上げたか、に焦点をあててご紹介します。

 青柳はトッパンのカレンダーチームで十数年カレンダーを作り続けているアートディレクターです。様々な企業のコーポレートカレンダーを制作し、国内外の数多くのアワードを受賞しています。
 今回の「ストレートにタイヤの魅力を伝える」というオーダーに対して、青柳はタイヤのトレッドパターンで日本の伝統工芸である木版画を作成し、その作品が貼り込まれたカレンダーをつくる、というアイデアを企画しました。タイヤの製造プロセスには、材料設計、構造設計、パターンデザイン、製造があり、優れた職人の技術がバトンをつないで完成にいたります。その職人たちの連携に注目し、タイヤの製造プロセスを浮世絵版画の絵師・彫師・摺師のそれ(または連携)になぞらえて生み出されたアイデアでした。

 タイヤの模様のトレッドパターンは6種類で、サイズは一般的なタイヤと地面との接地面積を基にしています。伝統工芸士の彫師、摺師に依頼して版木を造って刷ってもらい、その木版画をカレンダーに貼り込みました。手摺りのため、1点ずつ表情が違うという特別感が生まれています。背景には重厚感のある黒と上品な金を印刷し、木版画がより一層引き立つような作品となりました。

 工業製品も工芸品も、優れた製品を支える背景にはものづくりに携わった職人達の優れた技術があります。現代と伝統、職人の技術に着目して、象徴となるモチーフを重ね合わせることで、抽象的なコンセプトをカレンダーという具体的な形として結実させました。
 タイヤの製造に関わる職人たちの優れた技術力を、他にはない表現技法で独自性の高いカレンダーに落とし込んだ青柳。この想像力と創造力が評価され、このカレンダーはグレゴール・カレンダーアワード金賞(ドイツ)、全国カレンダー展 銀賞(日本)、日本BtoB広告賞 銅賞(日本)、グラフィスデザイン年鑑 シルバー(アメリカ)を受賞しています。

PRODUCT INFORMATION

ブリヂストンカレンダー2020
ブリヂストン
カレンダー/2019年

アートディレクター:青柳雅博
プリンティングディレクター:高本晃宏
木版画制作:株式会社 芸艸堂

STAFF’S COMMENTS

アートディレクター 青柳雅博

「タイヤをモチーフに、他で見たことがないカレンダーを。」とブリヂストンさんの担当者とさまざまなアイデアを検討しているシリーズです。木版画の技法を用いることは比較的早目に決まったのですが、実際に版木をおこすところから始めるため、工芸士の調整や制作スケジュールが不安でした。版画制作を仕切っていただいた芸艸堂の方をはじめ、関わってくださった方々が企画内容を快諾してくれたこともあり、実現にいたることができました。一点一点、それぞれがオリジナルといえるカレンダーになったのではないかと思います。