TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

“デザイン”という翻訳の方法

14 寄藤文平

幅広い分野で活動を続ける寄藤氏。第2話ではブックデザイン、著作、そして将来についてお聞きした。伝わりにくい考え方、ぼんやりしているものごとをわかりやすく伝えたいという寄藤氏の主張は、今後もデザイナーが活躍する領域が拡がっていくことを予感させる。

第2話 「ぼんやりしているものをわかりやすく伝える、それもデザインの役割」

寄藤流ブックデザイン

 2年くらい前に、雑誌のイラストの仕事に見切りをつけた時期があって、そのかわりに書籍の装幀をやろうと決めました。
 最初に手がけたのが『少年法 やわらかめ』。もともとはイラストの依頼だったんだけど、デザインもできますとアピールしてやらせてもらったら、それが雑誌『ダビンチ』の装幀大賞で大賞をいただいたんです。それから『海馬』を作ったら、これがすごく売れたんです。やっぱりこの世界、売れると注目されるし、ドッと仕事が来るんですよね。
 装幀の仕事で気をつけていることは3つ。ひとつは「内容に合うようなデザインにするということ」。本ってやっぱり、本文があって装幀があってトータルでひとつの商品ですから、装幀からある程度内容を伝えるものになってないとダメだと思う。
 それから「編集者の意向をちゃんと達成すること」。なんでもいいからとにかく売れて欲しいという場合もあれば、小ロットでもいいからいい本にしたいという場合もある。その本によって編集者の人が狙っていることというのがあるんですね。それを達成するために最大限の努力はします。
 最後に「書店で目立つこと」。この3つを僕は守るようにしています。

最初の打ち合わせが肝心

 そのために具体的には、編集者との最初の打ち合わせを丁寧に、短くても2時間くらいは時間を取ってもらって、じっくり話を聞くところから始めます。
 聞くポイントは発行部数、タイトルとその理由、内容の一番のウリ、売値はいくらか、何部売りたいのかなどです。打ち合わせをしながら、その場でラフを書きながら、原価計算や加工ができるできないということも確認していきます。そうすると編集者も安心するし、後でラクなんですよね。
 こんな風に最初の段階でいろいろ決めるようにしてから、仕事のスピードが早くなったし、仕上がりも安定してきた。ちょっとコツが掴めてきたかなと思います。

“かっこいい”を疑う

 『ウンココロ』はイラストやデザインはもちろん、企画も内容も僕が考えて作ったものです。
 科学者とか文学者、評論家の人たちって、クリエイターといわれるような人よりもはるかにトンガっている人が多い。でも、そういう人の考えや言っていることって、専門的すぎたりしてなかなか伝わらない。そういうものを他の人にもわかるように、うまく伝えたいと思っていたんです。藤田紘一郎先生の研究されていることと、僕のウンコに対する興味がマッチして、それが1冊の本になったというわけです。
 もともとウンコって、自分で製造して排泄しているものなのに、なぜか虐げられているというか。そういう立ち位置にあるということが、実は僕のデザインの裏テーマになっているんです。
 つまり、今のデザインってきれいで、かっこよくて、シンプルなものがいいものなんだという考え方が主流だけど、それだけがデザインの評価軸じゃないだろうという気持ちがあるんです。削ぎ落としていくという以外に、別のデザインの尺度ってないものかなと、それを探るのが僕の裏テーマとしてあって、そこから出てきた本なんです。

デザインの力を生かせることをしていきたい

『ウンココロ』みたいな自分で企画して、内容も書いて、デザインもするというような、著作の仕事は続けていきたいですね。
 どこかに誰かが考えたおもしろい考え方があったとして、それがいくらおもしろくても、難しいままではなかなか届かない。それをみんなに伝えていくような仕事をしていきたい。デザインの力も生きるし、イラストも一番力が発揮できる場所だと思いますから。おもしろいのにあまり世に知られていなくて、そのままでは難しいことを、変換してわかりやすく世の中に伝える“翻訳家”みたいな感じでしょうか。
 もうひとつ、公共空間のデザインということも、今後手がけてみたいことの一つです。
 街を歩いていると、ちょっとずつガッカリしながら歩いているような感じがするんですが、そういうガッカリを少しずつでも減らしていきたい。でもそれは、街をもっとかっこよくしたいということではなくて、街中にベンチが増えたとか、落ち葉がきれいになって歩きやすくなったというように、今よりも少しだけ居心地が良くなるという風にしたい。みんなが街の中にいて、その空間にいてもいいんだなと思えるような気遣いを、今よりも増やすってことがしたいんです。
 たとえばゴミを捨てて欲しくない場所に、鳥居を立てたらゴミが減ったという有名なエピソードがあるけれど、そういうことに近いかな。そういうところにデザインの力を使いたいですね。

デザインはすべてだけど、すべてではない

 もしデザイナーをやめなければならなくなったら、長野の実家に戻って、わさび農園とかやりたいですね。今のところは、デザインの仕事が面白いし、あと5、6年が本当にがんばれる時期だろうと思っているので、やれるだけやろうと決めているけど、自分の価値観って変わっていくものですから。
 人生的にはサン・テグジュペリなんか、いいなと思いますね。あの人って曲技飛行をしていて事故って大怪我したり、長距離飛行中に飛行機が故障して砂漠に不時着して放浪したりと、めちゃくちゃなんですよ。『星の王子様』みたいな作品を残してくれていたからよかったけど。
 でも、そういうことってどんな人にもあると思うんです。絵や文章で残しておけばわかってもらえるのに、みんな描けないから残せない。だったら僕が、そういうものを描いてあげたいなと思ったりもします。
 絵を描くのは年老いてもできるから、年をとったら普通の人の普通のお話を絵にするみたいな仕事をするのもいいですね。

寄藤文平
アートディレクター/グラフィックデザイナー/イラストレーター
1973年長野県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科中退後、博報堂の広告制作の現場に参加。
98年ヨリフジデザイン事務所を立ち上げ、2000年有限会社文平銀座設立。
これまでの主な仕事に、サントリー「ザ・カクテルバー」、キリン「キリンラガー」、JT「大人たばこ養成講座」「マナーの気づき」などの他、朝日出版社『海馬』をはじめとする書籍のイラスト・装幀も多数。著作として、実業之日本社『ウンココロ』、大和書房『死にカタログ』がある。JT「マナーの気づき」広告にて05年東京ADC賞、日本タイポグラフィ年鑑大賞受賞。

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