TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

“デザイン”という翻訳の方法

14 寄藤文平

どこかユーモラス、どこか皮肉っぽい。そんなイラストで評判になったJTのシリーズ広告「大人たばこ養成講座」。この作品でイラストを描き、デザインもしているのが寄藤文平氏だ。最近はブックデザインでもたくさんのヒットを飛ばし、『ウンココロ』という著書もある。多方面で表現活動を展開している寄藤氏。その独自のデザイン観について、話を伺った。

第1話 「伝えるために、伝わるように、エッセンスを抽出する」

スタート地点はディレクターの手の代わり

 絵を描くのは好きだったけど、意識的に描き出したのは、武蔵野美術大学に在籍しながら、広告代理店にいた先輩の仕事を手伝うようになってからです。
 その人の手の代わりとして、だれそれ風のタッチで、プレゼンテーション用にいろいろな絵を描きわけていました。そのうちに絵を見れば、どんな画材でどう描けばいいのかわかるようになってきた。もともと器用なタイプ、コツをつかむのは早いほうだと思います。その頃やっていたのは、としまえんの「とし博」キャンペーンの仕事などです。

できるだけ自分を出さないような描き方

 プレゼンテーション用とはつまり説明用ですから、自分の個性よりも、誰が見てもそれはそれに見えるということが必要です。
 たとえば新宿駅前を描けといわれたら、新宿駅前にある有名なポイントだけを押さえて、あとはなんとなく線でつないでいきます。あるものを全部描いてしまうとゴチャゴチャになってしまうから。人を描くにしても、なるべくキャラが立たないように、その人が何をしているのかわかるように描くとか、そういう描き方をずっとしてきました。
 だから、いわゆる作家性で勝負しているイラストレーターのように、自分のタッチを追求するとか、そういうことはまったくしたことがなかったです。

ADとの関係──必要に応じた絵を描きたい

 イラストの仕事で初めて注目されたのは、雑誌『WIRED 日本版』での仕事で、その頃同じ家に暮らすことになった先輩たちのひとりに、たまたま当時『WIRED 日本版』でアートディレクターをしていた木継則幸さんがいらして、僕のラクガキを見て「雑誌に描いてくれない?」って頼まれたんです。
 「グラフっぽくないバカなものにして欲しい」というオーダーだったので、オーバーなくらいわかりやすくてベタな表現にしようとは思いましたが、どうしてこういう絵になったのか、昔のことだから忘れてしまいました。
 ADの指示や媒体の特性などを考慮した上で、なるべく必要に応じた絵が描きたいと思っているけれど、自分の個性は本当に気にしません。自分の絵が本当にいいのかどうかも、今ひとつピンとこないですね。

“こだわり”の画材について

 イラストはぺんてるのハイブリッドテクニカという、コンビニで売っているようなボールペンで、細かいものはロットリングを使っています。カット的なイラストは、レイアウトするときに拡大・縮小したり線の太さを揃えたりするのが面倒なので、だいたい原寸で描きます。下書きもほとんどしません。
 紙にはけっこう凝ります。今はボンド紙という紙で原稿用紙を作って、それを愛用しています。この紙はよく透けるしほんのちょっとデコボコしているので、ほんの少しだけ線が太くなって、それがいいんですよ。もともとはアニメーション用にと思って作ったから、640×480というモニターのサイズにぴったり合うんです。

誰が見てもわかるもの

 JTの「大人たばこ養成講座」は、基本的には『WIRED 日本版』などで描いていたようなイラストと同じで、こういうことだよねというテーマを、なるべくベタに誰にでもわかるように表現しています。
 どう使われる絵で、どういうことが描いてあるべきなのかこそが重要で、デザイナーとしての目線から絵柄を発想しています。
 よくマンガで、ビックリしたときの表現に“ギャフン”ってあるけど、実際にギャフンって言ってる人はいないですよね。それと同じように、僕は世の中一般の「人間ってこうだよな」という、類型化された人間像を描いているつもりで、だからこそ誰が見てもわかるものになっているんじゃないかと思います。

目的に応じたコミュニケーション

 「マナーの気づき」シリーズは、マナーを良くしましょうという広告を作って欲しいというオーダーに対して、『広告ではマナーを良くすることはできません、だからその手前から話を始めるコミュニケーションをしませんか』と提案するところからはじめる作戦でした。
 まずコピーライターの岡本欣也さんが、「あなたが気づけばマナーは変わる」というタグラインを考え、いろいろなシーンに応じた“気づき”のワードを探しました。それをよりよく伝えるには、どんなグラフィック表現がふさわしいかという順番で考えました。言葉できちんとメッセージを伝えなければいけないから、コピーがきちんと立っていなければならない。なおかつ、JTという一企業が発信しているより、公共性の強いメッセージに見えた方がより強く届くと考えて、公共にある看板やサインをモチーフにしたアイコン的なビジュアル表現を採用したのです。
 「大人たばこ」がJTにとってはビジネスの下地作りを担っているのに対して、「マナーの気づき」はモラルアップを狙っていて、だから必要とされるコミュニケーションが異なる。必然的に表現の手法も異なるのです。
 そういう意味では、イラストを描くのもデザインを考えるのも同じことで、とにかく目的に沿ったものを作りたいと考えています。そのためには自分の個性なんていうのは、二の次以下でもまったくかまわないと思っています。

寄藤文平
アートディレクター/グラフィックデザイナー/イラストレーター
1973年長野県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科中退後、博報堂の広告制作の現場に参加。
98年ヨリフジデザイン事務所を立ち上げ、2000年有限会社文平銀座設立。
これまでの主な仕事に、サントリー「ザ・カクテルバー」、キリン「キリンラガー」、JT「大人たばこ養成講座」「マナーの気づき」などの他、朝日出版社『海馬』をはじめとする書籍のイラスト・装幀も多数。著作として、実業之日本社『ウンココロ』、大和書房『死にカタログ』がある。JT「マナーの気づき」広告にて05年東京ADC賞、日本タイポグラフィ年鑑大賞受賞。

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