TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

ブレイクスルーさせるデザイン

9 深澤直人

シンプルなデザインが圧倒的な支持を受けた携帯電話「INFOBAR」は、メーカーではなく電話会社である KDDI・auが推進した「auデザインプロジェクト」から生まれた。二つ折りタイプが完全に主流となっていた日本のケータイシーンに、あえてバータイプで新鮮なショックを与えた。日米の企業で24年のキャリアをもつ、プロダクトデザイナー深澤直人氏は、企業風土がまったく違うふたつの国で、どのように自らの仕事を創造し、展開してきたのか。

第2話 「クリエーターのコンサルタント的側面」

日本で学んだこと、アメリカで学んだこと

 日本企業で8年ほど仕事をしているなかで海外の情報にも接する機会があり、その仕事の内容や環境に憧れを懐くようになりました。海外という環境で一度やってみたい、という気持ちが次第に高まっていった感じです。
 アメリカで入社したIDEOは製品開発のコンサルタントで、プロダクトデザインとエンジニアリングのエリアで総合的な開発やアイディアの立案とデザインをやっている企業です。エンジニア、デザイナー、それに人間工学の専門家などが集まっています。
 デザイナーの仕事については、プロダクトデザイナーに求められている職能が日米では違いますから、一概にアメリカが良くて日本がダメということはいえません。
 もちろん複雑な問題を整理して、ロジカルに考えて問題を解決していくようなことはアメリカで身につけたものです。でもデザインに対するしっかりした伝統的な考え方や美意識は、日本の方がずっと優れています。むしろ僕はそれを日本から学んで、向こうに提供してきた面があります。

日本企業とのビジネス

 アメリカの企業は、終身雇用ではありません。働いている人たちも常に自分のキャリアアップを目指して、移動しています。僕も96年に帰りたいということを会社に申し出たところ、それでは東京にオフィスをつくるからそこをやらないかということになりました。
 ヨーロッパの場合には才能のある著名なデザイナーに投資して、開発を任せるネットワークのようなものができあがっています。アメリカには、IDEOのようなコンサルタントに開発デザインまで完全に任せるシステムがあります。欧米では、ビジネスは内外を問わず優秀な専門家に任せるという考えがあるのです。
 これに対し日本は、そういう欧米のやり方とは違い、できるだけ企業のシステムの中でやっていこうという考えがあります。
 日本のエンジニアやデザイナーは優秀ですから、僕はこの企業内にいる優れたプロフェッショナルを活かす形で、外部ディレクター的にプロジェクトを推進することを提案してきました。その方が効率的ですし、費用も安くあがります。
 ただ、企業内のデザイナーは企業の仕事に関しては精通していますが、かえってそのために考えに広がりがないということもあります。だから、僕のような外部の人間が絡む有効性があるわけです。

すべての問題をビジュアライズする

 問題が摘出できれば答えはその裏側にあるのですが、企業には海外法人や社内のセクションごとの利害や事情が絡まりあっています。誰かが、そういう複雑な事情を解きほぐしていかなければなりません。そのためには企業内の様々な立場の人とコミュニケーションをとり、目的を達成するための共通理解を得ていくことが必要になります。デザイナーとして関わりながら、結果的には、まるでコンサルタントのような仕事をすることになるのです。
 僕はその手段として、すべてをビジュアライズすることを常に心がけています。僕はデザイナーですから、同じレポートでもパワーポイントでも文字や表を並べた書類はつくりません。問題を提起するときにも、必ずさまざまな事象をビジュアル化するのです。
 事実を顕在化させて、本音で開発に取り組む姿勢をつくり込んでいくのです。多くの開発に携わる関係者の思考をビジュアライズするということです。企業の中でたいがいの問題は認識されているのですが、それを視覚化すれば解決のアイディアもその反対側に見えてくるのです。

見る側が豊かになれるデザインを

 よくポスターでは、「一瞬で何を告知したものか分からなくてはいけない」などと言われますが、ぼくはすべてがそうでなければいけないとは思わない。立ち止まって、考えさせるようなポスターがあってもいいと思います。インパクトだけを狙ったデザインが多い。そうではなくて、じっくり見てもらえるような、そんなポスターがあってもいいと思います。ターゲットや掲出する場所によっては、ポスターの役割を考え直してもいいはずです。見る側が少しでも豊かになれるような、そういうものが付加されたデザインをやりたいですね。

デザインは創造ではなく発見

 日本において外部デザイナーとして仕事をしていくなら、企業内のプロに対して社外から何か価値を提供する人間にならなければなりません。そこで日本のデザイナーたちと新しいデザインを研究し、学んでいくようなワークショップなどを展開することを始めました。そのワークショップが「without thought」です。MUJIから商品化されたCDプレイヤーは、ここから誕生しました。
 近代の工業デザインというのは、デザイナーが何かを表現してやろうという意思が強すぎるように思います。必要なもの、便利なものはすでに自然な形で存在しているのだからデザイナーは創造するというより、そのすでに存在しているものを発見し、具体化していくものではないでしょうか。
 木を四角く切っただけのまな板が最も多様性を含んでいるように、すでに日本人はそういうものを知っているのです。ところがまな板にハンドルをつけて、便利になったというのが現在の工業デザインです。
 ノートでも罫線が一本も引かれていない真っ白なノートを提案すると、あなたはデザイナーとして仕事をしていないではないかといわれる。そのときデザイナーは、罫線を引くべきかどうか考えなくてはなりません。

深澤直人
プロダクトデザイナー
1956年山梨県生まれ。80年多摩美術大学立体デザイン科卒業。 セイコーエプソンのデザイナーを経て、89年渡米しIDEO入社。96年帰国後、IDEOジャパン設立。2002年Naoto Fukasawa Design設立。 プロダクトデザインの開発、企業内デザイナー対象のワークショップなど多彩な活動を展開。2001年より「auデザインプロジェクト」に参加し「INFOBAR」「WIN」のデザインを手がける。2003年タカラとの共同開発で家電ブランド「±0」(プラスマイナスゼロ)発表。 無印良品より発売の壁掛式CDプレーヤーで2002年独IF賞金賞受賞。「環境と行為によりそうデザイン」で2002年度毎日デザイン賞受賞。

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