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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

ブレイクスルーさせるデザイン

9 深澤直人

シンプルなデザインが圧倒的な支持を受けた携帯電話「INFOBAR」は、メーカーではなく電話会社である KDDI・auが推進した「auデザインプロジェクト」から生まれた。二つ折りタイプが完全に主流となっていた日本のケータイシーンに、あえてバータイプで新鮮なショックを与えた。日米の企業で24年のキャリアをもつ、プロダクトデザイナー深澤直人氏は、企業風土がまったく違うふたつの国で、どのように自らの仕事を創造し、展開してきたのか。

第1話 「クリエーターのマーケティングとコミュニケーション」

プロダクトデザイナーを一躍時の人にした「INFOBAR」

 誰かがモノを製品化したという情報は業界内では普通に流れてきたわけですが、「INFOBAR」の場合には携帯電話ということもあって、一般にも広く情報がゆきわたったのではないでしょうか。知らない人から声をかけられるようなことがあって驚きますが、自分としてはいまの状況には実感がわきません。
 今回の仕事は、メーカーではなく、電話会社が独自に携帯をデザインするという、日本ではまだ非常に珍しい仕事でした。ですから会社も、当初は「auデザインプロジェクト」ということで、製品づくりとして予算を組むというよりは、モーターショーでいえば未来のコンセプトカーをつくるようなイメージでした。自分としてはそれを逆に利用する形で、あまりコンセプチュアルに見えない、量産でも充分いけるものを提案しようと考えたわけです。
 しかしこれがメーカーからの依頼だったら、「INFOBAR」は受け入れられなかったと思います。また電話会社でもいきなり経営層にこれを提案したのなら、やはり実現は難しかっただろうと思います。当時は市場が、二つ折りタイプ一辺倒になっていましたから。

ユーザーの本音に訴えたかった

 日本ではひとつ主流が形成されてしまうと、それを変えようとする力が働きにくいところがあります。しかし、ケータイは二つ折りだけという流れに、自分は疑問をもっていました。  同時に携帯電話は完全に日本人の必需品になっていましたから、そういう時にこそユーザーの本音に訴えるようなものにチャンスがあるのではないかと思っていたのです。つまり既成の現象を疑ってみると、常識化している背景の裏側にこそ、人々の本音が隠されているのではないかということです。
 現在は、マーケティングによって生み出されたタイプ分けによって、様々なデザインが創り出されていますが、その結果一番の基本である「皆これが好き」という共有の喜びみたいなものから離れてしまっているのではないでしょうか。
 今回は会社からとても信頼してもらいましたから、最初からアイディアは一つしか出しませんでした。レゴや透明な石鹸で最初の形をつくってプレゼンテーションしたのですが、どの段階でも好意的に評価されました。僕は他の仕事でも、メインのアイディアを一つ用意して、当て馬のように他にいくつか出すということはしません。万が一その当て馬の方を選ばれてしまうと、こちらが提示したいと考えていたコンセプトの意味がなくなってしまうからです。デザイナーは、決してそういうことはしてはいけないと思います。

プロダクトデザインの鍵を握るエンジニアとの関係

 携帯電話のように様々なテクノロジーが複雑に組み合わされた製品の場合、単純なデザインにしようとすればするほどテクノロジーはついてくるのが難しくなります。だから「INFOBAR」の場合、エンジニアはとても大変でした。しかもシンプルにできあがってしまうと、逆にエンジニアの苦労というのは見えなくなってしまうものです。今回もかなり試行錯誤があったのですが、優秀なエンジニアと組むことができ、シンプルでかつハイテクノロジーな製品ができました。
 プロダクトデザインは、エンジニアとうまくやっていくことはきわめて重要ですし、仕事のなかでもとても楽しい部分です。厳しい関係でありながら、ともに高いゴールを目指す、というのがいい関係ではないでしょうか。エンジニアもこちらの要求に対して様々に工夫してきますから、こちらが到達したいと考えていたレベルの範囲内で、柔軟に考えていくことも大事です。
 我々の仕事は企業やエンジニアとの出会いもあり、こうやればかならずうまくいく、というものはありません。でも、だからコミュニケーションが重要なのです。今回の「auデザインプロジェクト」は、それがとてもうまくいったケースだと思います。

深澤直人
プロダクトデザイナー
1956年山梨県生まれ。80年多摩美術大学立体デザイン科卒業。 セイコーエプソンのデザイナーを経て、89年渡米しIDEO入社。96年帰国後、IDEOジャパン設立。2002年Naoto Fukasawa Design設立。 プロダクトデザインの開発、企業内デザイナー対象のワークショップなど多彩な活動を展開。2001年より「auデザインプロジェクト」に参加し「INFOBAR」「WIN」のデザインを手がける。2003年タカラとの共同開発で家電ブランド「±0」(プラスマイナスゼロ)発表。 無印良品より発売の壁掛式CDプレーヤーで2002年独IF賞金賞受賞。「環境と行為によりそうデザイン」で2002年度毎日デザイン賞受賞。

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