Column

  • 2021/11/11

  • ストラテジックプランニングチーム シニアクリエイティブディレクター 亀井光則

カンヌライオンズ2021注目作品ピックアップ
BURGER KINGリブランディング
“Your Way, Way Better”(デザイン部門ゴールド)

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カンヌライオンズ2021は、フル・デジタルでの開催となった。昨年、コロナ禍で延期されたため2年分の作品がまとめて発表となり、数えきれない素晴らしい作品が出揃った。デザイン部門で8作品がゴールドを受賞しているが、その中にBURGER KINGのリブランディング事例がある。受賞作品にはマーケティングアクティビティが多く、ブランドの根幹で受賞するのは珍しい印象。きっと学ぶべきことがあるはずだ。

2021年、約20年ぶりにバーガーキングがロゴマークを刷新。

昨年までのロゴは「青い円(SWISH)」で囲まれた円形状だったが、21年からはハンバーガー形状になった。90年代以前のバーガーキングを知る人にとっては、「昔に戻った」と感じるかもしれない。かつて使われていたロゴマークをベースに刷新しているのだ。
(日本でもWEBサイトでは新ロゴが使われている。店舗はまだ移行中のようだ。)

リブランディングのケースムービーは素敵だが、内容についてほぼ触れられていないので、プレゼンボードやセミナーで語られている内容を補足していく。

自分たち「らしさ」との不整合の発見。

「一つ前のロゴ(青いSWISH)はまったく私たちらしくなかった笑」とCMOは語る。一つ前のロゴがつくられたのは、20年前。当時の時代性だったのかもしれないが、ファストフードの利便性や手軽さが表現されている。例えば、SWISH(鞭をシュッと振ったような形状。しかも青色!)や、SHINY BUNS(不自然な光沢のあるハンバーガーのバンズ)など。人工的なエレメントが多用されている。

バーガーキングは、何年もかけて保存料や着色料、人工的に作られた香料などを排除し、レストラン・エクスペリエンスを目指してきた。一つ前のロゴは人工的すぎてレストラン的な価値が感じられなくなっていいたのだ。CMO「前のロゴはバンズ部分が光っているでしょ?そんなハンバーガーある?笑」

ロゴのせいで消費者が大切なメッセージを感じられなくなっていると結論付けた。

☞この課題の把握と決断、すごい!ふつうもっとすぐできることで解決を試みる気がする・・・

自分たち「らしさ」とは何かの探求。

「らしさ」を見つけるために、まず創業1954年からヒストリーを徹底的に振り返ったという。ロゴはもちろん、TVCMのジングル、マスコットやノベルティまで全てだ。そこからどうやって前進するかを考えた。

立ち戻ったのは、普遍のタグライン「Have it your way(あなたらしくお好きにどうぞ)」と「Craveability(とにかくめっちゃ食べたい気持ち)」。

☞特に後者の「Craveability」何度も繰り返される言葉。バーキンらしさを伝える単語のようだ。

バーガーキングはFUN(楽しさ)やWITTY(軽妙な、既知に富んだ)を感じるブランドだ。カンヌの受賞事例を見てもそれは明白。だがそれはあくまでもマーケティングアクティビティであって、ブランドの根幹には、直火焼の肉をはじめとして、ユーザーを惹きつけてやまない合理的価値がある。ロゴはブランドの根幹であり、Mouth-watering(食欲をそそる)合理的価値こそがリブランドの中心となった。

☞合理的価値と情緒的価値の整理をしっかりやっているイメージ。バーガーキングらしいレストラン・エクスペリエンスの方向性がハッキリしてきた。

消費者からみてもバーガーキング「らしさ」を感じる、
ロゴの形状を採用。

リブランドの骨子が決まり、具体的なロゴの形状の検討へ。その中で、バーガーキングのロゴを思い出して手書きで描いてください、という消費者アンケートを実施。つまり消費者が感じている「バーガーキングらしさ」を聞いたのだ。すると驚いたことに、多くの消費者がかつてのハンバーガー形状のロゴを描いたとのこと。1969年から1994年まで約30年の長期間使用していたこともあるが、やはりはっきりとワッパーをイメージしていることが分かったのだ。

☞セミナーでアンケート結果の手書きイラストを数多く提示。見事にほとんど昔のロゴ!正直、これが決め手だったのではと思うほど。

形状の方向性としては過去ロゴのハンバーガー形状を再起用。当然だがそのままの形状ではなく、現代にあわせたリバイスをかけていった。

VIシステム全体にも「らしさ」を徹底的に反映。

VIシステム全体には「食欲をそそる工夫」とバーガーキングらしい「遊び」が散りばめられている。
タイプフェイスのディテールは食べ物の自然な形状を連想させ、ブランドのカラーも食欲から発想している。
・BBQブラウン(焼けた肉のシズル)
・FLAMINGオレンジ(直火の炎)
・FIERYレッド(ヒリヒリする味覚)
・CRUNCHグリーン(シャキシャキのレタス)
・MELTYイエロー(とろけるチーズ)
といった具合に。

前出のケースフィルムはVIシステム全体を映像化している。一度見た方も、ここまでの補足解説を元に、ぜひ再度見直してほしい。

THIS IS US. THAT’S THE BEST WAY.

まとめに、CBOの話から。 リブランドはよく行われているが、急に思い立ったリブランドは危険。ブランドのエッセンスをゴミ箱に捨ててしまう可能性も。
今回のリブランドは、変わっているのに、変わっている感じがしない。思い切っていろいろ変えているのに、バーガーキングであることは変わっていない。これはブランドのエッセンスをとらえているということだと思う。
THIS IS US.これぞ私たちという感覚があった。これが、最も良い方法だ。
もうVIを変える必要がないと思っている。それくらいうまくいった。

☞「VIを中心としたリブランド」で、カンヌのゴールド受賞?と最初は思った。実際、やっていることも基礎的なことが多く、見たこともない手法は見受けられない。しかも結論としては昔のロゴに戻っている。
ポイントは最後のCBOの話にある「変わっているのに、変わっている感じがしない」
ということではないか。この着地の見事さ。個人的にもはじめて新ロゴを見たときに、あれどこが変わったの?と思ってしまった。そして改めて青いSWISHロゴを見ると、ものすごい違和感・・・笑。この感覚にたどり着けたのが素晴らしいと思う。

カンヌライオンズ2021のマーケティングセミナーでは、4人の女性担当者が次々と登場してVI刷新プロジェクトを紹介していった。前出のCMOもCBOも女性。これまでのバーガーキングって男っぽいイメージのあったのだが(KINGだし!)、バーガーキングの生まれ変わりを感じた。
もうVI変えないって言ってるけど、次はBURGER KING & QUEENに名称改訂したりして笑

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