木を切らない、という森林破壊があります。

日本の人工林が危ない。木材価格の低迷で林業経営が厳しくなり、間伐などの手入れがされない荒廃林が問題となっている。密集して陽が差さない森は、地面に下草が生えず、大雨による土壌流出や山崩れの危険も…。国産の間伐材を使うことは、このような不健康な森を減らし、育てることなのです。トッパンが開発したのは、間伐材を使用した飲料容器「カートカン」。この缶のカタチをした紙製容器は、飲み終わったらリサイクルが可能で、売上の一部は森林整備の基金としても役立てられます。

[環境配慮型容器 カートカン]

紙の飲料容器に求められる機能は、おいしさと長持ち。カートカンはトッパンのGLフィルムで劣化を防ぎ、常温流通と長期保存を実現しました。他にも、企業が手がけた森の間伐材で紙製容器をつくる仕組みづくりなど。紙と共に育まれた印刷テクノロジーは今、資源活用と森林育成を両立する新たな循環を根付かせています。「作りたいのは容器ではなく、それを使い続けられるシステムなのです。」担当者は語りました。

[受賞歴]

環境配慮型製品で循環型社会づくりに貢献する。印刷テクノロジーのかたちです。

▲図2 緑のサイクル
▲図3 カートカン以外の紙製容器の広がり

―――循環型社会形成につながる環境配慮型容器、カートカン―――
地球温暖化の防止、限りある資源の有効利用は、社会全体で取り組まなくてはならない大きな課題です。これらの課題を解決していく手段のひとつが、循環型社会の形成。環境に配慮しながら、同時に資源を有効利用するサイクルをつくることにあります。トッパンは、環境に配慮した製品の開発と資源循環の仕組み作りを通して、この循環型社会形成への取り組みを行っています。その代表的な製品が「カートカン」です(図1)。環境配慮型容器として1996年から流通を開始し、現在、さまざまな飲料のパッケージとして広く普及しています。

―――素材に間伐材を使用し、健全な森林育成に貢献―――
今、日本の森林は国産材の利用が進まないため、間伐が行われず荒廃が目立っています。間伐材を有効利用できる仕組みがあれば、適切な間引きができ、結果として健全な森林を育成することができる。カートカンは、その媒介となる役割を担っています。「間伐」とは混み合った植林を間引くこと。間伐により残った木々の成長が促進され、森林育成につながります。カートカンは材料となる紙に間伐材を含む国産材を30%以上使用。間伐材を有効利用する仕組みにより、「植える→育てる→収穫する」という緑のサイクルが循環(図2)、健全な森林の育成に寄与するとともに、売上の一部は「緑の募金」に寄付され、国内の森林整備の活動基金として役立っています。さらに、紙パック同様にリサイクルが可能で、最後まで資源を有効利用することができます。また、カートカンは環境配慮型であることはもちろん、パッケージとしての高い機能性も特長です。味と香り、栄養分を損なうことなく、賞味期限も延長できる。トッパン独自のバリアフィルム「GLフィルム」と「無菌充填包装」によってそれを実現しています。

―――環境活動を推進する企業と資源循環を構築―――
こうしたカートカンの利点が広く認められ、積極的な環境活動を推進する企業で採用が拡大しています。株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは2013年からプライベートブランド商品にカートカンを採用。この商品のカートカンには日本の森林を育て国産木質材の利用を促進する「セブン&アイ森林プロジェクト」で得られた間伐材を含む用紙を使用しています。また、トッパンはカートカン以外にも「セブンの森」から伐り出される間伐材を一部に用いた紙製容器を新たに開発(図3)。カートカンに限らず、さまざまな内容物への対応で、サステナブルな環境配慮型製品開発の可能性を広げています。

―――新たな資源循環のとりくみ PETボトルのリサイクル―――
そして、トッパンでは紙以外の素材でも新たな取り組みを始めています。そのひとつがPETボトルのリサイクル。PETボトルを原料としたメカニカルリサイクルPETフィルムを使用した環境配慮型ラミネート包材を世界で初めて開発し、さまざまな分野に活躍の場を広げています。環境配慮型の製品開発で、循環型社会構築の一端を担う。
「印刷テクノロジー」の、ひとつのかたちです。

最先端の印刷テクノロジーを駆使して
環境へ配慮した取り組みやさまざまな製品・サービスを提供しています。

  • トッパンの環境配慮型製品
    環境配慮型製品の一例

    トッパンは、製品のライフサイクルの5つのステージ(原材料調達、生産、流通、使用、廃棄・リサイクル)からなる「トッパン環境配慮型製品基準」を2013年に制定しています。2014年3月末時点で、この基準を満たした94件が環境配慮型製品に認定・登録されています。さらに、LCA※でライフサイクル全体の環境負荷を見える化した製品や第三者機関に環境配慮型として認められた製品は「トップ環境配慮型製品」に認定・登録しています。今後も環境配慮型製品の開発から販売までを推進するエコクリエイティブ活動をさらに活性化させていきます。

  • カーボンフットプリントを活用した
    カーボン・オフセット制度への取り組み
    オフセット認証マーク 印刷テクノロジーレポート

    トッパンは、平成25年度より、経済産業省の「カーボンフットプリント(CFP)※1 を活用したカーボン・オフセット※2 制度」に参加し、カレンダー製品で初のカーボン・オフセット認証を取得しています。国が認証するこの制度を利用すると、CFPを算定・登録した事業者が同量のクレジットでカーボン・オフセットしたことをマーク等で示すことができます。本レポートを含め、これまでに4種の社用印刷物の「CFPを活用したカーボン・オフセット」を実施している他、お客さまの印刷物への認証サービスを開始します。

    ※1 製品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2に換算し、その排出量を「見える化」する仕組み
    ※2 経済活動で排出されるCO2量を把握し、他の場所で実現したCO2削減・吸収量をクレジットとして購入し償却することで、排出したCO2量を埋め合わせる仕組み

  • 群馬センター工場の緑化計画が
    「都市開発版SEGES」の認定を取得
    雑木の森の湿生円

    群馬センター工場は、公益財団法人都市緑化機構から、緑の保全・創出により社会・環境へ貢献する事業を認定する「都市開発版SEGES」に、工場敷地内における緑化計画として初めて認定されました。緑地率を30%以上確保し、雨水を有効利用した湿地エリアの「レインガーデン」を取り入れ、雨水が地面に浸透する透水面積率を50%以上にしました。緑地は、防風林と水塚の景観をデザインに取り込む「風の森」、生態系ネットワークを意識した地域植生による郷土の森「雑木の森」、桜並木を中心に地域景観に貢献する「花の森」の3ゾーンで構成。トッパンは、今後も事業所が立地する土地と周辺の環境に配慮した生物多様性保全への取り組みを行っていきます。

※本文中の敬称は省略しています。
※本文中の商号および製品・サービス名称は、各社の商標または登録商標です。