世界の食料の約1/3は、ただ捨てられるために作られている。

賞味期限切れや食べ残しなどで捨てられる食料、世界で年間約13億トン。これは食料生産量全体の3分の1にあたる量だという。食料需要が増加するその裏側で、本当は食べられたはずの廃棄物が増え続けている…。この食品ロスと呼ばれる問題を食い止めるために、パッケージにできることがあります。トッパンの「GLフィルム」は、透明なフィルムで、アルミ箔に匹敵する世界最高水準のバリア性を実現。食品を酸化や乾燥から守ることで品質を長期間保持し、セーブ・フードにつなげていきます。

[透明バリアフィルム事業]

食品や医薬品パッケージなど幅広い用途に応えるGLフィルムは、薄さわずか十数ミクロン。ビンや缶よりも軽くかさばらないため、輸送時のCO2排出も削減します。これらを可能にしたのは、蒸着加工やコーティングなどの高度な印刷テクノロジー。世界で高まるバリアフィルムの需要に応え、この度トッパンは米国に生産拠点の新設を決定しました。「技術で“もったいない”を広めなければ。」担当者は語りました。

[受賞歴]

世界が注目する「食品ロスの低減」の秘策。印刷テクノロジーのかたちです。

▲図1 透明バリアフィルムの役割
▲図2 さまざまな課題を解決するGLフィルム

今、世界は省資源、環境保全、高齢化対策など、地球規模で取り組んでいかなければならないさまざまな課題に直面しています。そうした状況の中で、トッパンが開発した透明バリアフィルムは、「食品ロスの低減」を中心とした世界をとりまく課題に対する解決策としての期待が高まっています。

「捨てない」、「無駄なく使い切る」。そのひとつの方法を実現したのは、トッパン独自のコーティング技術と蒸着加工技術をもとに開発された透明バリアフィルム「GLフィルム」です。アルミ箔に匹敵する酸素・水蒸気バリア性により、製品を酸化や乾燥から守るという優れた性質を備え、内容物の変質、劣化を防ぎます。(図1)

重要な社会課題のひとつとなっている「食品ロスの低減」とは、消費期限の問題などから廃棄される食品の無駄を減らすこと。GLフィルムを使用することで、品質が長期にわたり保持され、従来よりも品質保持期間が延長されることにより廃棄される食材や商品を少なくすることができます。これによって、材料の調達コストや在庫ロスも低減することが可能に。無駄をなくしながら「おいしいものをおいしいままに」という食品メーカーの使命を損なうことがありません。また、ビンや缶と比較して圧倒的に軽量でコンパクトなパッケージとなることから、輸送エネルギーの節約となり、環境負荷低減にもつながります。特に輸送距離が長い北米においては、大きな差を生み出します。また、高齢化が進む現代では、火を使わず、安全・安心に電子レンジで調理できる食品ニーズが広がっています。GLフィルムは非金属性のため、そのまま電子レンジにかけることができ、「ユニバーサルデザイン」の観点からも課題の解決に貢献することができます。(図2)

▲図3 医療医薬包材、エレクトロニクス包材などにも広がる用途

こうした中、トッパンは透明バリアフィルムの安定供給のために海外生産拠点の拡充を始めています。ひとつは、2016年3月竣工予定の米国・ジョージア州新工場。北米や欧州のパッケージメーカーに対して、日本からの輸送コストを減らし安定的に透明バリアフィルムの供給を図っていきます。また、中国では普麗盛(プレシャス)社※に、GLフィルムを使用した紙製飲料容器「カートカン」の製造・販売権をライセンス供与するとともに、カートカン成型・充填機の生産・販売においての業務提携をすることで2013年4月に合意しました。そして、国内外の軟包材生産のマザー工場となる「群馬センター工場」が2014年4月に竣工。製造はもちろん新技術・新製品開発の拠点として稼動を始めています。

現在、すでに世界45以上の国と地域において、15,000点以上の製品に採用されるGLフィルム。1986年に開発されて以来、食品だけでなく、トイレタリー、医療医薬から産業資材、そしてエレクトロニクスの領域へと活躍の場を広げています(図3)。品質を保持したまま生活者に商品を提供したい。トッパンの透明バリアフィルムは、海を渡り社会課題や人々の思いに応えていきます。これも「印刷テクノロジー」の、ひとつのかたちです。

※中国の機械メーカーである上海普麗盛包装股份有限公司(本社:上海市金山区、董事長:姜衛東)

最先端の印刷テクノロジーを駆使して
透明バリアフィルムを活用したさまざまな製品・サービスを提供しています。

  • 透明バリアフィルムを活用した
    さまざまな容器展開
    印刷テクノロジーを活用した透明バリアフィルムパッケージの構造

    トッパンは独自に開発した透明バリアフィルムに「表面加工」や「成型加工」の印刷テクノロジーを駆使して、リサイクル可能な環境配慮型製品である紙製複合容器「カートカン」や「EP-PAK・GL」、「エコフラットカップ」、ラミネートチューブ容器など、さまざまな形状の容器を展開しています。食品をはじめ、トイレタリー、医療医薬、精密部品など、内容物の種類を問わず幅広い用途に対応しています。

  • 米国に透明バリアフィルム
    生産拠点を新設
    米国・ジョージア州 新工場の完成予定図

    トッパンは2016年3月の量産開始を目指し、米国・ジョージア州に新工場を建設することを決定しました。北米市場は、ライフスタイルの変化によって食品の電子レンジ活用による利便性の追求が進んでいることや、ビン・缶から軟包材への置き換えなど、食品包装材市場の産業構造が大きく転換しつつあり、バリアフィルムのニーズがさらに拡大すると推測されています。新工場により、北米と欧州のパッケージメーカー向けに、GLフィルムをはじめとする透明バリアフィルムの供給能力を強化するとともに、生産拠点の立地の利点を活かし、事業の海外展開の強化を図ります。

  • 「群馬センター工場」竣工
    群馬センター工場の外観

    トッパンは、ハイバリア軟包材を中心に、食品やトイレタリー、医療医薬品などさまざまな用途・製品に使用される最先端の包装材を製造する群馬センター工場を、2014年4月14日に竣工しました。全社の包装材生産のマザー工場として包装材の安定供給を実現。また、成長する海外市場に向けても新技術・新製品を提供し、包装材事業の拡大を図ります。新工場は、クリーンな生産環境と高い品質管理体制の導入により、安全・安心な製品を提供。長年培ってきた表面加工技術や成型加工技術を活かし、国内外の市場を視野に、素材開発から製品開発、生産まで一貫したパッケージビジネスを展開していきます。

※本文中の敬称は省略しています。
※本文中の商号および製品・サービス名称は、各社の商標または登録商標です。