太陽光発電の敵は、太陽光でした。

次の再生可能エネルギーとして大きな期待が集まる、太陽光発電。しかし、太陽電池パネルは、太陽光の高熱や紫外線、さらには風雨にさらされることで劣化し、発電効率を落としてしまうケースがあります。

トッパンがつくる太陽電池バックシートは、そうしたダメージから太陽電池セルを守るためのもの。耐候性、耐光性、難燃性、バリア性に優れた品質で、今、世界中から指名されています。その需要に対応するために、この度、深谷工場を増床。生産能力を約2.5倍に拡大しました。

[太陽電池バックシートBS-TX]

「裏方だけど、なくてはならないもの。」と担当者が語る、このバックシートの開発を可能にしたのは、トッパンの印刷テクノロジー。トッパンは、食品パッケージ分野をはじめ長年機能性材料を基材に均一にコーティングする技術を磨いてきました。その職人技ともいえるノウハウに、エレクトロニクス部品の製造で培った品質管理の技術が融合して、高品質なバックシートの供給が実現したのです。

太陽光発電を支える、「印刷テクノロジー」のかたち。

太陽電池の市場予測
▲図1 太陽電池の市場予測
太陽電池パネルの構造図
▲図2 太陽電池パネルの構造図

地球の表面が1時間に受ける太陽光エネルギーは、人類の年間エネルギー消費量に相当すると言われています。豊富な太陽光エネルギーをいかに活用するかが、世界のエネルギー問題解決に向けた重要課題の一つです。(図1)

太陽光発電とは、太陽電池を利用して光エネルギーを直接電力に変換する発電方式のことです。太陽電池はシリコンなどの半導体で作られており、この半導体に光が当たると日射強度に比例して発電します。太陽電池セル(以下「セル」と略)を直並列接続して必要な電圧と電流を得られるようにモジュール化したものを、「太陽電池パネル」と呼びます。(図2)

太陽電池バックシート
▲写真1 太陽電池バックシート
深谷工場
▲写真2 深谷工場
機能性フィルムの生産拠点、深谷工場(写真はパース)。約80m×400mの巨大な平屋となる。増床により、太陽電池バックシートの生産能力が約2.5倍になるほか、封止材フィルムの生産設備も導入する。

トッパンは太陽光発電の将来性にいち早く注目し、1990年代より独自のフィルム加工技術を活かした太陽電池パネル部材事業を展開しています。太陽電池バックシート(以下「バックシート」と略)は、太陽電池パネルの背面を保護するフィルムで、心臓部であるセルを守る重要な部材です(写真1)。長期間にわたり、屋外の厳しい環境で使用されるため、高い信頼性が要求されます。トッパンは、材料技術、コーティング技術とバリア技術を融合させ、高度な耐候性・耐光性・難燃性・バリア性を持つバックシートを開発・生産しています。

2008年には米国・デュポン社と、バックシート用ポリフッ化ビニル樹脂「テドラー®」の加工に関する技術移転契約を締結しました。この契約にもとづき、バックシートの新製品「BS-TX」を開発。2011年7月には、生産拠点である深谷工場(写真2)の生産能力を約2.5倍に拡大し、成長する市場に向け高品質な製品を提供していきます。

また、バックシートで培ったノウハウや材料技術をもとに、セルを固定し保護するための封止材フィルムを開発し、製造・販売を行っています。

「トッパンの技術は、裏方だけどなくてはならないもの。目立たないけど大事なところを担っている存在」(2011年7月6日現在 : 高機能事業本部・課長 渡部智行)。裏方から支え、守る技術で、世界を変えていく。「印刷テクノロジー」の、ひとつのかたちです。

※「テドラー®」は米国 ・デュポン社および関係会社の登録商標です。