凸版印刷トッパンソリューション

第二部 東京会場 パネルディスカッション

授業のあり方と家庭学習についてICTが果たす役割とは

教室の中から飛び出して、外(家庭)でICTを活用する可能性はありますか。―為田氏

菊地

凸版印刷では、前提として、学習用タブレットが学校と家を行き来するイメージで制作しています。京田辺市で校務支援システムを導入して、コンピュータのログをとることで初めて、先生方が何時にログオン、ログオフしたかの正確な情報を集めることができるようになりました。これは児童についても同じで、家で児童がどれくらい勉強したのか、ということを記録できるようになる。そうすることで、先生の手をあまりわずらわせずに、学習の初期の段階でつまずいている児童を把握することができるようになります。また、家庭の状況が先生に伝わるようにと考えて開発しています。

家庭を巻き込むコツはありますか。―為田氏

佐藤氏

1年目は気を遣って問題がないか、こまめに家庭と連絡をとっていましたが、だんだん保護者の間で「子どもが楽しんでやっている」という情報が広まり、2年目3年目は苦労なく導入が進められました。
また、親が動画を見たがっているという現実があり、保護者から動画の感想が寄せられています。オンラインではないので、先の授業に進んでみたり、前の授業に戻ってみたりと、親子で一緒に楽しみながら鑑賞しているという感想が寄せられています。

増子氏

淡路市は、家庭のインフラ環境にかなりばらつきがあるので、なかなか家庭学習は進められていません。先日、参観日に保護者と一緒にタブレットの使い方を勉強し、わからないときはiTunes Uで授業と同じ解説が見られるというようにして、家で写真を撮ったり保護者に名前を入れたりしてもらうようにしました。その後の公開授業で、内容を発表しフォローする授業を見せることで家庭を巻き込む取り組みを行っていますが、今後はもっと家庭と連携を図りたいと考えています。

福田氏

佐賀県の県立学校では全校で、子どもたちが自分用のパソコンを使える状況になっており、先生たちにも、校務用パソコンと学習用パソコンを使えるように整備しています。
佐賀県では、事業開始にあわせて教員研修に着手しましたが、初期の段階では指導できる者がいませんでした。それで、まず指導者養成研修から始めました。次に校長研修です。その上で、校長には、それぞれの勤務校で核となる推進リーダーを指名してもらいました。この推進リーダーには県主催の研修を受けてもらいました。推進リーダーは研修後、各学校で職員対象の研修を行っていますが、進め方としては、第一ステップとして、「どんなICT教育を行いたいか」「どのように電子黒板を使うか」などイメージを持つことから始めました。
以前のことですが、知事が学校視察に行かれたときに、ある年配の先生が大きな模造紙を電子黒板に貼り付けたことがありました私はそれもOKだと思っています。大きく見せることが、そのときの目的であれば、紙に大きく書くのも、PowerPointに入力するのも、目指す方向は同じです。大切なのは、わかりやすい授業であり、ICTを使うことが目的ではないからです。その後、いろんな学校から電子黒板がほしいという要望が出てきました。その次は「子どもに主体的な学びをさせたい」という声です。気を付けなければならないのは、いくら研修を受けても、そのままでは自分のものではないということ。実際に、授業をやってみてたらイメージした通りに進まない、それじゃということで、もう一度学び直したいという声もありました。
次に、家庭との連携についてですが、ある生徒がプレゼンテーション大会で、学級通信の話をしました。担任の先生が学級通信に動画を貼り付けて端末に送ってくれた。それをお母さんに見せたらたいそう喜んでくれたという内容でした。これは、家庭に対して、学校の状況がとてもよくわかる素晴らしい事例だと思いました。
家庭だけでなく、授業以外の隙間時間を効率的に使うことにもつながっています。佐賀県が個人所有にこだわったのは、家庭でもどんどん使ってもらいたかったからです。備品にしてしまうと、基本的に、家に持ち帰ることができないんです。
最後に、学習履歴、ログについてですが、個人情報保護の問題等もあるため、佐賀県ではまだ導入していません。これからの課題です。

隙間時間を使うことを怖がる先生はいませんか。―為田氏

福田氏

導入初年度ということで、変な使い方をするのではないかといった危惧が先生方にも保護者にもありました。それで、学校の先生や保護者の皆さんと協議した結果として、今は機械的な制限、セキュリティをかけています。ただし、将来的には、高校生だったらスマートフォンや親のPCをすでに使っていますので、使うことを怖がるよりも、主体性を持って子どもたちが使えるようにすることが大切ではないかと考えています。
情報モラル教育というと、“はじめから怖がる人”と“無視しておかしな状態になってしまう人”とがいます。きちんと教えることは教育の使命です。みんなが持ったからこそ、みんなが持っている前提だからこそ、実際の教育の中で、さまざまな場面を想定した情報モラル教育をできるようになったと思います。

淡路市では情報モラルの取り組みは何かされていますか。―為田氏

増子氏

淡路市では、研修員に活用の方法や場面設定を任せられていますが、本校では自由に使ってもらっています。休み時間に何かを調べたり、ということもしています。情報モラルの教育は1~6年生の授業の中で実施しています。私は生活指導も担当しており「変なサイトを見ていた」といった情報も入ってきますので、個別に指導を行うようにしています。そういうのを繰り返していって、まったく何事も無く子どもたちが成長していくということはないと思いますので、その都度対応していっている、という感じです。

タブレットを壊したり、売ったりということは考えられませんか。―為田氏

佐藤氏

本校では大学からお借りした高価な教材であることを児童生徒に伝え、専用バッグに入れて持たせています。その“仕掛け”のせいか、お気に入りのキーホルダーをつけて他と見分けるようにするなど、大切に扱っています。しかし、この後、学年が上がっていったときに、何が起こるのかというのは、正直まだ見えないところがあります。「盗られた」「壊した」「売った」は考えなければならないかもしれません。今後何年か経つと新鮮味が薄れ、そのような事態も想定できます。

そういったさまざまな考えられうる場面、教育現場で考えられるリスクを解決するのは、テクノロジー側の課題なのではないかと思いますね。今は、テクノロジーの側から、「こういうのできますよ」と話が来る、ということが多いように思います。学校の先生の方から、「こういうのできないの?」とリクエストを出して対等に話をするようになったときに、テクノロジーは一段上に上がるのではないかと思いますね。
この場にいる方々は、おそらくそうしたテクノロジーを導入する側の人たちの窓口になっている方が多いので、話し合いの中で、「淡路でこういうのをやっているらしいんだけど」と訊けるようになるといいですよね。学校側も情報を持っていて、それを実現するために企業の方々ががんばる、そうした形がいいのかな、と思います。
今日来ていらっしゃる方は、イメージを持っている人たちが多いと思うのです。日々の授業で忙しく、イメージをもつことが大変だ、というのもわかります。わかりますが、いまイメージをもつ作業をしないと、もたないからこそテクノロジーがどんどん入ってきちゃうというふうになると思います。イメージは、先生方がこれまでの経験で得たノウハウや知見から出たイメージだからこそ、意味があるんだと思います。ぜひ、今日をきっかけにイメージを持ってもらえればいいと思います。教務でも、校務でもいいと思うので、そうしたイメージを持っていただければと思います。

それでは最後に、今後の展望をお願いします。―為田氏

菊地

まずは今、開発をしているサービスの確立を急ぎたいですね。また、東日本大震災で授業が受けられなかった児童の支援にも、このサービスを使えるのではないかと思っています。日本人として役に立ちたいと思っています。

佐藤氏

すごく大きなことを言ってしまえば、良い授業をしたいです。良い授業をするために使えるテクノロジーがほしいです。なので、こういうテクノロジーがあったらいいな、というのを、外向きにバーっと出す機会があればと思います。「学校ってこうなるといいよね」という多くの人の意見が反映できる環境づくりをしたいですね。

増子氏

淡路市の児童生徒は、ほとんどが将来、島を出ていきます。そのときに外の世界に対応していける能力を今から備えると同時に、広げるという視点で、先ほどの佐賀県の事例のように、実際に授業を行う教諭だけでなく、校長研修などの管理職研修も行っていけたらと思います。

加瀬氏

子どもたちも授業の中で、協働による学びを進めています。我々教員も、良い授業や実践の共有を進めていきたいと考えています。

福田氏

佐賀県は昨年4月に全校でICTを導入し、それぞれの先生方が実践の中で、イメージと現実の距離感がつかめてきたと思います。今後は、教員は自分の個性を磨いて指導をブラッシュアップしていくこと、中学校まではPCを扱う機会がなくても高校からギャップが埋められるように、研修などで仕掛けをしていきたいと考えています。

村井氏

子どもの学力を上げる学びという目的のもとには、反転授業もICT教育も共通しています。授業の作り方は共通で、子どもの学びを支えるツールとしてのタブレット端末なのだな、と思います。新しいテクノロジーが入ってきても、子どもたちの学びはどうなるのか、ということを考えていくこと、つまり、今後も子どもを中心においていくことは同じだなと感じました。

  • フューチャーインスティテュート株式会社 為田 裕行(ためだひろゆき)氏
  • つくば市総合教育研究所 指導主事 加瀬 雄一(かせゆういち)氏
  • 淡路市立大町小学校 教諭 増子 知美(ましこともみ)氏
  • 宮城県富谷町立東向陽台小学校 教諭 佐藤 靖泰(さとうやすひろ)氏
  • 佐賀県教育委員会 副教育長 福田 孝義(ふくたたかよし)氏
  • 金沢星稜大学 人間科学部 教授 村井 万寿夫(むらいますお)氏
  • 凸版印刷株式会社 教育ICT事業開発本部 本部長 菊地 尚樹(きくちなおき)

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