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第二部 東京会場 パネルディスカッション

今回のパネルディスカッションでは教育の現場でICT、タブレットを活用している方をお招きしています。また、実践されている方々だけでなく、一歩ひいた視点から意味付けを教えてくれる方もお呼びしています。さまざまなご意見を伺いながら、ICTを活用しようと思える、そんなディスカッションの場にしたいと思います。
まずは、パネラーの皆さんの自己紹介を兼ねた今の取り組みのご紹介から始めます。

まずは、パネラーの皆さんの自己紹介を兼ねた今の取り組みの案内をお願いします。―為田氏

加瀬氏

私が勤める総合教育研究所は、おもに小中一貫教育の推進、調査・研究、学校ICT教育等の推進等を担当し、教職員や児童生徒、保護者への研修を行っています。私は、昨年度まで茨城県つくば市内の小学校で4年間、中学校で8年間勤務していました。
つくば市では小中一貫教育を平成19年度から進めており、平成24年度からは教育課程特例制度にもとづき、すべての学校で小中一貫教育が行われるようになりました。その中心が新しい教科としてつくられた「つくばスタイル科」であり、ICT教育もこの中に位置づけられています。
ICT教育で大切にしているのは、「4つのC」。「協働力(Community)」「言語力(Communication)」「思考・判断力(Cognition)」「知識・理解力(Comprehension)」です。この4つの力は、児童生徒の主体的な学習活動と協働の学びという、今まさに求められている教育に合致すると考えています。学校を訪問する際には、授業でICT端末を使うときに、何のために使うのかを意識するよう呼びかけています。それは、授業をよりよくするという目標があり、一人ひとりの子どもたちに確かな学力を身に付けてもらうことにつながるからです。そのために、ICT機器の有効性について伝えています。
ここで「スタディネット」(シャープビジネスソリューションズ)を活用した授業モデルをご紹介します。国語の授業で『大造じいさんとがん』(東京書籍)を扱いました。児童が物語の内容を読み取る際に、デジタル教科書の挿絵も活用しました。挿絵の中では、大造じいさんがどちらの方向にいるかをタブレットPC上で選択すると、電子黒板に児童の回答がその場で集計され、円グラフになって画面に表示されるようにしました。ただ読むだけでは挿絵と内容の関連を意識しないことが多いですが、このような学びを通じて、読み取ったことの根拠を本文に求めて、しっかり読み込むようになりました。
また、この授業では「本の帯を作る」ことを、単元を貫く言語活動として設定し、どの部分がこの物語の山場(クライマックス)かを考えました。児童が読み取った“伝えたい”部分にタブレットPC上で線を引く。すると、一人ひとりがどこに線を引いたのか、一覧にして見ることができます。このことによって、他の児童の意見も即座に知ることができ、新たな考えをつくり出す思考が生まれます。
つくば市の小中一貫校は、中学校区をまとまりとして、1つの学園を構成し、全部で15の学園があります。その中で30代の若手の先生を中心に推進員を選出し、ICT研修や模範授業を公開しています。現場では、電子掲示板やテレビ会議を通して、学校間の壁を超えた意見交換を行い、考えを深め合う取り組みや、電子黒板を使って中学生が小学生に対しプレゼンテーションを行う授業、タブレットPCを活用したパネルディスカッションなどを実施しています。

増子氏

兵庫県淡路市は、おもな施策として教育・企業誘致・観光を柱としており、教育に非常に力を入れています。学校数は小学校、中学校あわせて22校、ほとんどの学校が100名前後の小規模校で、統廃合も進んでいます。
淡路市の2大特徴として「研修員制度」と「iTunes Uの活用」があります。
「研修員制度」は、淡路市は財政的に厳しい状況ではあるものの、教師を育てることの重要性から制度を実施することになりました。ICT支援員を一切入れず、支援システムも入れず、教員だけで展開していこうということになりました。教員が研修員になります。研修員になると、1人につき、iPad(32GB)が1台と生徒用のiPad(16GB)が10台、Apple TV、プロジェクター、Mac Book Air、WiFi-APと保管庫が与えられ、まずは自分のクラスで実践を行います。
初年度となる平成24年度は5名が任命されました。平成25年度は15名、平成26年度には50名。全部の学校から必ず研修員を出しなさいということになっていて、現在は合計70名の研修員が端末を活用しながら授業を行っています。転勤をすると、研修員は先ほどの機器をすべて持って次の学校へ異動していきます。今後は年間50名ずつ増員し、4年後には全教師が推進員になるという目標を持っています。
「iTunes U」は、教育用デジタルコンテンツ管理システムで、ムービーやトークの機能を活用しています。例えば、小学校のリコーダーの授業で教員からの指示を動画で見ながら個人で練習する、成果を友人に撮影してもらって提出したりしています。また、中学校の保健体育の授業で、班同士の意見交流がなかなかできないので、iTunesのトーク機能を使って班同士の意見交流をしています。
まだまだ発展途上ではありますが、授業が活発化した、周りに発信していく機会が増えた、という効果が出ており、協働的な学びが今後より深まっていくと考えています。

佐藤氏

宮城県富谷町は人口が増えており、単独市制を目指しています。私が勤務する東向陽台小学校は1,000人規模の学校です。
小学校では、45分の授業を、導入10分・展開25分・まとめ10分という配分で行っています。導入は短ければ短いほうがいいという考えがありますが、児童が何をするのか理解しないまま、授業の展開に入っていくことがあるのではないか、という振り返りがありました。また、グループで発表するときも、問題解決して発表までたどり着いただろうか、まとめは10分間とっていたか、その前段階が遅れてしまい最後まで行かずに終わっているんじゃないか、といったことが課題意識としてありました。
もう一つの課題意識は宿題です。計算の練習や音読、意味調べなどを出していますが、授業と連動して児童がやってきたことが活きる宿題に、いう思いがありました。45分の授業では短すぎるという思いと、宿題と授業を連動させるにはどうしたらいいのか。そんなことを考えているときに「反転授業」に出会いました。
今年度、私は5年生を担当しています。その中で、「百分率とグラフ」を対象にしました。自宅学習に鑑み、指導計画を練り直すことをしました。その結果、本来13~14時間必要としていた授業を圧縮できることがわかりました。圧縮したおかげで習熟の時間、繰り返しの時間を指導計画の中に確保することができます。
反転授業では、自宅でどの程度勉強してきたかを把握するため、ノートの工夫をしています。左ページに家庭での「調べる」「表す」「まとめる」「読み取る」「考える」を行い、右ページには授業での「確認する」「考える」「活用する」部分をまとめる。見開き2ページで1つの授業が視認できるようになっています。また、自宅でビデオを視聴してノートを作り、わかったこと、わからなかったことを書くことで、知る・調べる・考える・まとめる・表す・読み取るなどを行う。そして、授業では、知識の確認、課題解決と協働学習、適用問題と学習感想までを行うことで、確認する・理解する・考える・活用する・表す・読み取る・発表する・検討するステップを踏む。ちょうど、次の学習へと入るメビウスの輪のようなスパイラルを形成していくのです。
反転授業はどこまでやれば良いかということで、仲間と所見を出し合ってみると課題がたくさん出てきます。これを一つ一つクリアにしていくことも一つの方向性ですが、いろいろな学校の先生方が自分でやってみてクリアする方向性を見つけていくための土台として疑問提起をする意味でまとめています。反転授業は、教育方法の一つです。こういうバリエーションが世の中にあるのだということを知っているのか、知らないのかによって変わってくるのだというふうに思っています。

菊地

凸版印刷では、アナログな印刷物を作る一方で、約20年前からデジタル化を進めており、文字情報や画像情報の専門処理を行う、日本でも有数の実績を持った会社という側面を持っています。そういうポテンシャルをご評価いただき、京都府京田辺市の校務支援システムの制作を行っています。この実績をベースに、昨年、教育を専門に扱うセクションを設立しました。
我々の志は、これからの日本を支える人財育成に貢献することを目指しています。このテーマを実現するサービスとして、慶応義塾大学の中室准教授(教育経済学)とともに開発を進めています。
将来の所得水準は、社会での活躍度とイコールになることが海外の社会調査で実証されています。良い大学に行って、良い企業に就職すれば所得が上がるというのもありますが、それは統計で見ると相関関係であり、因果関係はもっと学年の小さい頃にあります。では、若年時の学力に最も影響を与えるのは何かというと、若年時のセルフコントロール力、つまり、自分を律する力です。そこで、この時期のセルフコントロール力に、直接学習を通じて影響を与えられるサービスを創ろうというのが我々の出発点です。内発的な刺激として成長実感(習熟度管理とレコメンド機能)と達成感(計画設定機能と目標到達度管理機能)、そして外発的な刺激として教師や親が子どもにほめ言葉をかけるということが大切です。習熟度管理や目標達成の結果を、教師にフィードバックする機能を持たせることで、若年時のセルフコントロール力アップに貢献できるのではと考えています。
これができることで、これからの日本を支える人財育成に貢献できると考えています。それともうひとつ、がんばっている子を増やすことで負のスパイラルに陥ろうとしている子どもを1人でも多く救い、多くの自治体で増えている社会保障費を抑制することが、教育にはできると思っています。教育を原点として自治体の財政にも貢献することも目指しています。

今回のテーマには絶対の正解がありません。ICTの導入を考えるとき、100点満点を求めがちですが、70点のものが80点になれば良し、と考えヒントが見つけられればと思います。
テーマは「ICTによって児童生徒の学び方、先生の教え方がどのように変わったか」と「授業のあり方と家庭学習についてICTが果たす役割とは」の2つです。
―為田氏

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