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第一部 特別講演② 大阪会場 インストラクショナルデザイン~授業方法と学習形態の工夫~

現在の授業方法からICTを使った授業をデザインする

今回は授業を考えていくにあたって、インストラクショナルデザイン、つまり「授業のデザイン」について確認していきたいと思います。
まず、日頃の自分の授業から考えてみます。そのための検討手法として、授業方法をカードに記入するなどして一覧にします。今回は下図にあるような15枚のカードを用意しました。そのカードを確認しながら、日頃よく用いている授業方法はどれか、ICTがあると効果的と思われる授業方法はどれか、逆にICTを活用しないほうがいいと思う授業方法はどれか。それぞれにマークを付けていってもらい、その後皆で話し合います。
当然、意見が分かれることもあると思います。ICTへの理解も違うでしょう。それを話し合いながら、自分たちがやっていること、考えていることを手掛かりに、授業をデザインしていくのがこの方法です。

授業方法カード

導入・展開・まとめの各段階で考える

国が取り組みの成果を報告書に取りまとめたものがあります。下の図のようにA1からC4まで10の取り組みがあり、導入・展開・まとめ、と分類しています。導入にA1の「教員による教材の提示:電子黒板等を用いたわかりやすい課題の提示」、展開にC1の「発表や話し合い:考えや作品を提示・交換しての発表や話し合い」、そしてまとめにC2の「協働での意見整理:複数の意見や考えを議論して整理」となっています。
このマトリックスは授業をデザインするうえで有効な手段です。導入・展開・まとめと段階を追うようになっているので、工夫されていてわかりやすいと思います。

国の取組の成果では

ICT導入が効果的な場面とは

では、ICTを授業のどのような場面で活用すると効果的なのでしょうか。まず、子どもたちが課題をつかんでいくときが考えられます。次に、子どもたちがICTを道具として用いて課題解決していくとき。この際は、個別学習のツールとして1人1台を使う方法もあれば、実験・観察・調査などをグループ単位で使う方法もあります。また、学習の成果を発表する、表現活動に用いることもあるでしょう。さらには、協働学習。相互に振り返る際のツールとして、また調べものを分業することによる時間短縮も効果が上がります。もう1つ、自分たちでタスクを決めて課題解決する際にも有効です。
これらの中のどの場面で活用するのがよいのか。学校でしっくりといくもの、手ごたえを感じとることができるものから入っていくといいでしょう。それも「授業デザイン」です。

デジタル教科書・デジタルコンテンツの効果的な利用方法

昨今、デジタル教科書・デジタルコンテンツは、その数も増え、レベルも向上しています。これらをどのように活用すれば効果が上がるのか、習得と探究で考えてみます。習得はある事柄に関して理解すること、ゴールが決まっています。探求はというと、学び続けていくもの、ゴールが決まっていません。
習得で考えたときは、即時活用が可能で、既習事項や課題を想起しながら考えたりするので、デジタル教科書が効果的です。一方、探究で考えると、社会的実践、本物と出会っていく必要があるので、デジタルコンテンツのほうが効果的です。

ICTを活用して思考力・判断力・表現力を育成

思考力・判断力・表現力を育成する場合のICT活用はどうでしょう。思考力・判断力・表現力はワンセットで考えることも多いですが、3つの動作を一連のつながりではなく、2つの関連でみるとわかりやすくなります。
例えば、思考から表現の場合。既習・学習事項の想起・関連づけから、自分の考えを表現する際にICTを用います。判断から表現の場合は、話し合った結果を説明・表現する際にICTを用います。そのほか、表現したことを判断する場合、思考したことを判断する場合、表現したことを思考する場合などなど、どこでどのようにICTを使ったら有効的なのかを考えてみるといいでしょう。もしかしたら、使わないという選択肢があるかもしれません。

教育の情報化とICT

教育は情報化の大きな動きの中にありますが、ICTは学力向上、学力保障のために使うことは基本原則です。同時に、現代社会では21世紀に求められる能力として、「21世紀型能力」「21世紀スキルのためのパートナーシップ」といったものがまとめられています。「21世紀型能力」は、基礎力・思考力・実践力で構成されています。また、「21世紀スキルのためのパートナーシップ」の1つとして、情報・メディア・技術に関するスキルが求められています。いずれもICTの有効性を指し示しています。
少し補足しますが、過去に何もしていなかったわけではありません。「総合的な学習の時間」の中で、○○力という表現は直接していませんが、その狙いを読み解くと、①自律的活動力・適応的学習力、②問題解決力・発見力・創造力、生活とキャリアに関するスキル、③論理力・批判的思考力、メタ認知の重要性を説いています。つまり、情報活用力の重要性は脈々と続いているのです。

教育の向上にICTは貢献する

それでは、あらためてなぜICTの活用に目を向けようとしているのでしょうか。ICTは、先生が使うことが一番自然で、導入する意味、メリットはあると思います。多様な授業展開も可能になります。ただ、一方で「私は使わなくていいや」といった先生が出てきてしまう現実もあります。子どもたちの視線でみると、使う場を設ける必要があります。実際に使わないと身につくこともありません。ICTを使うことによって、より理解が深まったり、勉強が楽しくなることもあるでしょう。道具が変わることによって、世界が変わることがあります。保護者の立場からは、学校での活動報告がより理解できる、情報の共有が可能になるなどのメリットがあります。
全体でみると、ICTの活用は確実に学校の財産になっていきます。教育の向上にICTは有用なのです。

あらためて、なぜICTタブレットPCの活用に目を向けようとしているのか
小柳 和喜雄(おやなぎわきお)氏
奈良教育大学大学院 教授 小柳 和喜雄(おやなぎわきお)氏
「教育方法・教育工学」授業研究を通じた学校での実践研究を中心に活動。「教師のICT指導力向上」「授業改善のための授業評価・学校評価」など講演多数。現在あるさまざまな学校教育の課題や成果を学会や社会的活動を通じて、発言している。

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