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第一部 特別講演① 大阪会場・東京会場 ICT利活用による新たな学校教育の可能性について

教育の情報化推進の背景

事業推進の背景にあるもの

今日、教育の情報化が推進される背景としては、①高度情報化やグローバル社会に対応した教育の実現、②学力向上に向けた取り組みの強化、③通常の学校や教室外での質の高い教育の確保といった、教育の質を向上させ、次世代を生きる子ども達の生きる力の育成という課題があります。この内、③には新型インフルエンザ発生時の対応、地震や風水害など自然災害発生時の対応、不登校や特別支援教育対象者への対応も含まれます。
佐賀県では、こうした時代背景を踏まえ、教育の情報化の推進により、教育上の諸課題の解決につなげたい、具体的には、学びの質の向上(子どもが変わる)、教師の指導の質の向上(授業が変わる)、学校運営の改善、事業負担の軽減(学校が変わる)、いつでもどこでも良質な学習機会の提供(新たな教育の実現)といった、社会の変化に対応した教育が実現できると考えました。

日本における主な教育改革の動き

ここで、簡単に日本の教育の変遷を振り返っておきたいと思います。明治以降の日本では、大きな教育改革が3回あったと言われています。1つは、学制交付があった1872(明治5)年の「近代日本の教育制度の確立」。次は、教育基本法が公布された1947(昭和22)年の「戦後日本教育への移行」。そして3つめが、改正教育基本法が公布された2006(平成18)年の「平成の教育改革」です。
この3つめの「平成の教育改革」では、これからの時代を生きる子どもたちの教育の在り方として、21世紀型教育への移行、具体的には、高度情報化、グローバル化社会への対応という課題が出されました。その後、2013(平成25)年の「第2期教育振興基本計画」や「日本再興戦略-JAPAN IS BACK-」、そして「世界最先端IT国家創造宣言」等が発表され、具体的な取り組み等が示されました。

佐賀県の取り組み

佐賀県の「先進的ICT利活用教育推進事業」の取り組みについては、2014(平成26)年4月の全校導入から7月までの期間、NHKからの取材を受け、主に導入当初の状況が放送されたことで、各方面からいろいろなご意見をいただきましたが、今は、落ち着いた状況の中で、教育実践が行われています。

ICT利活用で、「いつでも」「どこでも」「誰でも」が可能に

ICT利活用教育を推進することで得られる教育効果としては、「いつでも」「どこでも」「誰でも」が良質な学びを得られるようになると考えています。
例えば、災害発生時や新型インフルエンザ発生時などの危機的状況下での教育サポートと学習の遅れの抑止。また、健康問題や学校不適応などで登校が難しい児童生徒に対する学習支援。さらに、特別な支援を必要としている児童生徒に対しては、一人ひとりのペースに応じた個別学習や反復学習が可能になります。

通常の学校や教室外での教育機会の確保

総務省、文部科学省連携事業に佐賀県の学校も選定

国ではフューチャースクール推進事業として、2010(平成22)年から市町村立小学校10校を、2011(平成23)年からは、国公立中学校8校と特別支援学校2校を対象に、実証研究が行われました。また、2014(平成26)年には、先導的教育システム実証事業として、佐賀県と東京都荒川区、福島県新地町の3地区が対象地区に選定されました。

総務省及び文部科学省連携事業の実証校、地区一覧

佐賀県における教育の情報化の取り組み

佐賀県の主な取り組み

学校単位での取り組みは、「点」の動きです。これら「点」の取り組みを近隣校どうしや学校種をまたいで広げ、「面」の取り組みにしていくためは、全体を俯瞰してみるための組織的な対応が必要になってきます。
佐賀県の教育の情報化の取り組みは他に比べて決して早いということはありません。先生方を対象とした校務用PCの導入は2004(平成16)年度に開始しましたが、県立学校全体に広がったのは2009(平成21)年です。その後、国の動き等もあり、2008(平成20)年から新たな取り組みに着手する形で、「県独自の「e-ラーニング教材」(試作版)の開発と検証、文部科学省「スクール・ニューディール政策への参加(市町立小、中学校各1校を指定)」、さらに「Web版学習プリント配信システム」を活用した指導モデルの試行実施、ICT利活用教育の実施に向けた指導者養成研修実施、「総務省フューチャースクール推進事業参加」などの取り組みを進めてきました。
その上で、こうした取り組みを経て、2011(平成23)年度の「佐賀県総合計画2011」において教育の情報化の推進を“進”重点項目に位置づけ、「先進的ICT利活用教育推進事業」として事業化しました。

事業の全県実施に向けた対応策

事業の全県実施に向けては、総合計画において4年間の工程表を作成し、その工程をしっかりと実行していくために推進体制を整えることからはじめました。また、対象を県立学校に限るのではなく、全県実施につなげることを目的に、県と市町の連携強化にも力を注ぎました。
中でも重要視したのは教職員研修です。現場で実際に授業を行うのは先生です。先生方の研修をどうするか、どうスキルアップしてもらうかを考えました。結論としては、佐賀県では、各学校で事業推進の中核を担う情報化推進リーダーを選出し、その推進リーダーを中心とした日常的な校内研修を実施することで、スキルアップを図っています。

県の重点施策としての位置づけ

教育情報システム「SEI-Net(Saga Education Information - Network)」

佐賀県では教育情報システムの構築を目指して、SEI-Netを導入しました。SEI-Netは、「校務管理(支援)システム」、指導者用の「LMS(学習管理システム)」、学習者と指導者の相互通信のベースとなる「LCMS(教材管理システム)」からなり、あらゆる校務支援、例えば、学籍情報管理、出欠管理、学習の進捗管理、成績管理、学習状況確認、e-ラーニング、遠隔学習支援などを行うことができます。まだまだ改良・改善の余地はたくさんありますが、必ず新たな学習環境の構築と教職員の事務負担軽減に直結するものと考えています。
これは、2017(平成29)年度まで毎年改良を重ね、より先生方や児童生徒の声を反映したものに構築していく予定です。

教育情報システムの構築 (呼名、SEI-Net)
福田 孝義(ふくたたかよし)氏
佐賀県教育委員会 副教育長 福田 孝義(ふくたたかよし)氏
平成23年度から、佐賀県の最重要施策として「先進的ICT利活用教育推進事業」に着手。電子黒板やタブレット端末等のICT機器、校内LAN環境の整備並びに教職員研修をはじめとし、校務管理、学習管理、学習教材管理が一体となった教育情報システム「SEI-Net」の構築を手がけ、教育の情報化推進の先進事例として全国から注目されている。

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