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おもてなしサポートの目指すもの 旅行のこれから~スマートツーリズムの取り組みについて~

失われた遺跡や建造物を目の前に再現

近畿日本ツーリストでは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催後における、当社の未来像を立案する「未来創造室」を2014年10月に設置しました。ブランディング(企業価値創造)とマーケティングの両面からさまざまな検討を進めています。そのうちブランディングのための新規事業開発として取り組んでいるのが、「スマートツーリズム事業」です。
これは、エプソン様の眼鏡型ウェアラブル端末(スマートグラス)を、旅行に活用できないかという発想からスタートしたものです。成長分野として注目されているウェアラブル端末は、現在は時計型が主流ですが、今後は眼鏡型、しかも映像と目の前の風景が重なって見えるシースルー(透過型)が主流になっていくと言われています。
このスマートグラスを観光地などで使用すれば、バーチャルリアリティで映し出される仮想世界が、現実世界と融合された拡張現実(AR)として見ることができます。今まで想像で思い描いていた歴史上の遺跡や過去の建造物なども、目の前にリアルな映像として現れます。それも実際に周囲の光や空気を感じながら、現場ならではの臨場感とともに味わえるのです。

スマートグラスを核に展開する「スマートツーリズム」

未来創造室ではさまざまな議論を重ねた結果、スマートグラスを利用したARによる観光について、以下の側面から展開していくことになりました。

スマートツーリズム

失われた遺跡や建造物を映像で復元したり、これらにまつわる物語をビジュアルで解説したりできます。多言語対応が可能なので、海外からの観光客に対して正確に日本の歴史・文化を伝えられ、外国語が話せるガイドの人手不足もカバーできます。復元にあたり実際に箱モノを作る必要がないので環境にも優しく、仮に再検証により歴史の解釈が変わってもデータによる修正が簡単です。
また、例えばローマのコロッセオでスマートグラスを使うと、グラディエーターたちの戦いの様子が目の前で見られるようになるなど、海外での展開も可能です。
私たちはこの最先端技術を核にして、国内各地の地域創生や戦略市場開発といった「3つの矢」を連携させて、新しい観光・旅の形や地域活性化を提案する取り組みを「スマートツーリズム」と位置づけて、展開をはかっていきたいと考えています。

展開イメージ

注目を集めた江戸城天守閣・日本橋再現ツアー

具体的な実験として、江戸城と日本橋をスマートグラスによるARで体験するツアーを、今年の2~3月に実施しました。都内の1日バスツアーを、1人1万2,000円という価格で設定し、ウェブ上でリリースを発表し一般募集をしたところ、非常に反響があって約1,000名の申し込みがありました。各メディアからの注目も大きく、テレビの全キー局で朝のニュースなどで取り上げられたほか、新聞では通信社からの配信記事も含めて全国36紙に掲載、ウェブサイトにも76サイトで掲載されました。PR会社の試算によると、広告費換算で約1億1,000万円の宣伝効果があったということです。

スマートツーリズム/実施事例

さらに広がるウェアラブル端末の可能性

ウェアラブル端末(眼鏡型)の可能性実際にツアーを行った結果、眼鏡型ウェアラブル端末の可能性を、4つの観点からまとめました。
特に、ツアー参加者からの意見によって気づかされたのが「新しい用途の提示」です。例えば、優れた技術である3Dプリンタも、現状では使い方があまり提示されていないので、一般にはあまり普及していません。同様に、街でスマートグラスを掛けて歩いている人は、まだ見かけることがありません。しかし、「観光という用途を提示することをきっかけに、市場が新たに生まれるのではないか」というご意見を、多くの参加者からいただきました。
これを受けて、私たちは各地の自治体に対し、スマートグラスの観光利用推進について話をさせていただく活動を進めてきました。その成果として、福岡城跡での観光などが実現したのです。
さらにこうした観光目的だけでなく、大学の医学部からパニック障害の治療の一環として、乗り物のシミュレーション映像が使用できないかといった話があるなど、当初私たちが想定していなかったような使い方も出てきています。
このような新しい使い方の提示という部分が、今後私たちが目指すべき、一つの方向性と捉えてもいいのではと考えています。もともと旅行会社は、「人と街」、「人と人」を結ぶことが仕事です。スマートグラスを活用することで、新たな「結び」を提示できるのではないか。そして「旅行のこれから」を考えるうえで、一つの大きな素材として、スマートツーリズムが位置づけられていくのではないかと思っています。

波多野 貞之(はたの ただゆき)氏
近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室 課長 波多野 貞之(はたの ただゆき)氏
10年間の企業法人アウトバウンドセールス担当後、2000年より本社イベント担当として、ワールドカップ・オリンピックなどスポーツ関連、愛知万博・平城遷都1300年など文化関連、まつりインハワイ・新東名サイクルなど自主イベントを担当。
2014年未来創造室設置より配属となり現在に至る。

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