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おもてなしサポートの目指すもの 博物館のこれから

博物館・ミュージアムの定義・役割とは

博物館(Museum)ひと口に博物館といってもいろいろな種類があります。日本の博物館法では、さまざまな資料を収集・保管し、教育やレクリエーションのために展示するとともに、調査研究を目的とする機関と定義しています。設置者は、自治体や一般社団・財団法人や宗教法人、独立行政法人等とされており、美術館・動物園・水族館・植物園なども含まれます。ICOM(国際博物館会議)でも同じような定義づけがされ、さらに非営利という条件が付いています。
ただし、博物館という言葉の使用自体に制約はないので、博物館やミュージアムと名乗りながら、定義に当てはまらない施設も多数存在していることも事実です。

来館者をいかに満足させられるかが問われる

陳列から展示へ従来、博物館は、収蔵物を陳列するだけで十分でした。しかし、最近では、お客さまの知的好奇心をいかに満足させるかを考えないと、来館していただけなくなりました。お客さまのニーズを把握し、展示方法やデザイン・表現等をどう工夫するかが課題となっています。単なる陳列ではなく、体験学習という形で展示物に参画するような形を取り入れたり、お客さまが満足する仕掛けを設けないと来館者は増加することはないでしょう。
来館者が多いからといって、お客さまが満足したとは限りません。人気のある特別展を企画すると、入場まで2時間、3時間待ちとなり、山ほどクレームがきます。先日の「台北 國立故宮博物院展」や「鳥獣戯画展」でも、多くのお客さまからご意見をいただきました。展示内容に満足してもらうと同時に、いかに快適な環境を提供するか考えなければならないのです。

収蔵物のデジタル化への取り組み

トーハクなびルーブル美術館や大英博物館などでは、ミロのヴィーナスやモナ・リザ、ロゼッタ・ストーンなど有名な収蔵物をいつでも見ることができます。これに対し「東京国立博物館では、教科書に載るような資料や作品は、展示されていないことが多い」という声を聞きます。日本の古美術を展示する博物館の課題です。文化庁が定めた国宝・重要文化財の取り扱い基準があり、指定品の展示は年間2回、延べ60日以内という制限があるからです。そのため、展示日数や回数をカウントしながら順次入れ替えを行っているのです。日本の美術品は、材質が紙や漆、絹など脆弱なものが多いので、文化財保存の観点からはやむを得ない面もあります。
そこで、いつでも見たいという要望を解決するため、デジタル化による代替を進めています。私どもでは「トーハクなび」という見学コースを紹介するスマートフォン用アプリを提供し、その中で作品をご覧いただけるようにしています。また、日頃見ることができない収蔵物についても、「e国宝」というアプリで、東京・京都・奈良・九州の国立博物館が所蔵する国宝・重要文化財を見られるようになっています。

平常展・常設展にもお客さまを呼ぶために

もう一つの課題は、特別展を開催していない期間のお客さまの減少です。日本の博物館は平常展・常設展には人が来ないという傾向があります。しかし、東京国立博物館に限らず、各博物館は常設展でも貴重な収蔵物を展示しています。それをどうお客さまにアピールして見ていただくか。手を替え品を替えいろいろな形で努力をしています。
その一環として、当館では常設展・平常展を「総合文化展」という形に変えて、毎週展示品を入れ替えて公開。何回来ても、そのたびに違った作品が見られるという工夫をしています。

博物館の魅力を高めるさまざまな取り組み

そのほかにも、各館では、お客さまの満足度を高め、来館者の増加につなげるため、さまざまな取り組みを考え実施しています。

●「わくわく感」を演出するエントランスやチケットの工夫
●お客さまと接する監視員や警備員への教育の徹底
●見学コースの動線を展示手法の重要な要素として再考する
●トイレの壁などにも解説をおき、学習の場にする
●託児所や授乳室を整備し、お子さま連れでも来館しやすくする
●魅力的なオリジナルのミュージアムグッズの販売
●レストランで限定メニューや、特別展等にちなんだメニューを提供
●オリジナルマスコット、ゆるキャラの展開 など

また、近年、博物館などの公共施設を、会議やレセプション会場に利用する「ユニークベニュー」(Unique Venue)という動きが出てきました。海外ではすでに国際会議後のレセプションなどで行われています。日本では未だ大型館でしか実践例がありませんが、これから当館でも進めていこうと考えています。
各種イベントへの協力も行っています。観光庁の要請で「ツーリズムエキスポ」のレセプションを当館で行いました。また「洛中洛外図」の3Dプロジェクションマッピングを東洋館で行い、多くの方にお越しいただきました。上野公園で開催された「創エネ・あかりパーク」への協力や、昨年はエルメスの顧客向け展示会を、当館の表慶館で貸し館という形で行いました。
さらに、ドラマや映画等のロケ、CDジャケットの撮影などにも積極的に協力しています。オンラインゲーム「刀剣乱舞」のブームに合わせて、ゲームに登場する刀を展示したところ、多くの若い女性が来場しました。
2019年には、日本で初めてのICOM(国際博物館会議)の大会が、京都で開催されることが決定しました。これをきっかけに、さらに日本の博物館でさまざまな展開が図られることを期待しています。

栗原 祐司(くりはら ゆうじ)氏
独立行政法人 国立文化財機構本部 事務局長 東京国立博物館 総務部長 栗原 祐司(くりはら ゆうじ)氏
1966年東京生まれ。1989年文部省(現文部科学省)入省後、ニューヨーク日本人学校国際交流ディレクター、文部科学省社会教育課企画官、文化庁美術学芸課長、京都国立博物館副館長等勤務を経て、2013年4月より現職。
ICOM日本委員会委員、ICOM-ASPAC副委員長、全日本博物館学会役員、日本展示学会理事、日本ミュージアム・マネージメント学会理事、國學院大學大学院非常勤講師、観光庁MICEアンバサダー等の役職を務めている。主な著書に『美術館政策論』(共著・晃洋書房、1998年)、『海外で育つ子どもの心理と教育―異文化適応と発達の支援』(共著・金子書房、2006年)、『ミュージアム・フリークinアメリカ』(雄山閣、2009年)など。文化庁広報誌「ぶんかる」(web版)に『博物館ななめ歩き』連載中。

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